見出し画像

6月12日 恋人の日 【SS】心は繋がってる

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】-恋人の日

1988年(昭和63年)に全国額縁組合連合会が制定。
ブラジル・サンパウロ地方では、女性の守護神で縁結びの神でもある聖人アントニウス(251~356)の命日の前日の6月12日を「恋人の日」として、恋人同士が写真立て(フォトフレーム)に写真を入れ交換しあう風習がある。日本におけるこの風習の普及と、額縁をPRすることが目的。


🌿過去投稿分の一覧はこちら👉 【今日は何の日SS】一覧目次

【SS】心は繋がってる

 最近はスマホの機能が充実し過ぎて、メモなど必要なくなってきた。住所録も全て入っているし、パスワードは生体認証で入力する必要もない。電子マネー機能もスマホに入っている。スマホさえ持っていれば、日常の生活は困らない。それだけ便利になったということだ。

 京子と真也は付き合い始めてそろそろ一年が経とうとしている。連絡はラインのみ。お互いの写真は壁紙に設定してあるのでスマホを手に取るたびに確認できる。当然二人で撮ったショットも第二の壁紙になっている。会えない日でもスマホさえあれば壁紙だけじゃなく、過去の写真や動画も見れるし、ライン履歴も見ることができる。二人とも片時もスマホを離さない生活だからこそ充実していられると思っている。もちろん、二人ともパソコンは持っているので、スマホのバックアップもとってある。万が一無くしてしまったりしたら、パソコンからリモートでスマホの初期化までできるので万全だと思っている。

 こうしたスマホ依存の生活が続いている中、真也に海外出張の指示がでた。海外には何度か行ってはいるが今回はヨーロッパのイタリアだ。心もウキウキとなっているようだ。忘れ物がないかのチェックリストがスマホに入っているので、出発前には念入りに確認した。京子は仕事をしている最中なので空港についてからラインを入れることにしてマンションを出る。意外と成田空港は遠いが電車に乗ればいいだけなのでそれほど苦にはならない。

 成田について搭乗手続きを済ませ、空港ラウンジでほっとしながら京子との他愛もないラインを楽しむ。そろそろ出発の時間が迫ってきたのでラインの音声通話に切り替える。

「そろそろ出発だ。京子と一緒に行けたらもっといいんだろうけど、今回は一人で出張だ。二週間会えないけど毎日ラインはするよ」

「うん。わかった。気をつけていってきてね。イタリアはスリが多いらしいから注意してよ。うっかり屋さんなところがあるから」

「了解。まぁ、パスポートとスマホさえあればなんとかなるから大丈夫だよ。じゃあ、行ってくる」

 こうして真也はイタリアへと旅立った。パスポートとチケット、スマホ、財布だけを入れたサコッシュを斜め掛けして肌身離さずにいた。飛行機は無事イタリアのフィウミチーノ空港についた。トランジットがあるとはいえ実質18時間程度のフライトは流石に体が固まってしまった。まず最初に空港から「無事着いた」と京子にライン。その後、予約しておいたローマ市内のテベレ川ほとりのホテルに直行した。現地時間では15:00前、日本は22:00ごろだろうか。仕事は明日からなので、チェックインして少し観光でもするつもりだ。その前に、京子にラインを入れた。

『やっと、ホテルに入った。仕事は明日からだから少し市内観光して食事でも済ませてこようと思う』

『私の方は、残業が終わってこれから帰るところ。めっちゃ、疲れた。できない先輩の尻拭いの仕事をさせられたの。帰ってきたら慰めてね』

『了解。仕事に入ると夜も付き合いがあるから、ラインできないかもしれないけど心配しないで待っててくれ。お土産持って帰るから』

『楽しみに待ってまーす。じゃあね〜』

 真也は楽な服装に着替えて、早速ローマ観光へと乗り出した。ローマといえばまずはスペイン広場に行ってトレビの泉かな。ホテルからも歩いて行ける距離だし、ちょうどいい運動になりそうだと考え、帰りのチケットを抜いたサコッシュをかけて出かけた。ホテルとはいえパスポートなどの放置は危険だと思いサコッシュの中に入れて持ち歩くことにした。初めてのローマ観光が一人ということで若干緊張はしたが、他の場所でも同様の行動をしていたので心配はしていなかった。スペイン広場の階段では飲食が禁止になったようで、階段の景色が堪能できた。その足でトレビの泉に行き、すぐそばのジェラート屋さんに入り、バニラとチョコを注文。パンナもトッピングしてもらい頬張りながら数人の子供の間を縫うようにして店を出た。遠目で人だかりのトレビの泉を見ながら、ジェラートに夢中になっているとなんとなく腰のあたりに違和感を感じた。

 サコッシュのベルトは細い革のヒモだったのだが、肩からかかっているのは一本の革のヒモだけになっていて、肝心のバッグ部分が消えてしまっていたのだ。真也は青ざめた。どうやらジェラート店を出る瞬間を狙われたようだった。数人の客と思った子供を押し除けるようにして出た時にヒモが切られたようだ。だが、当たり前だが、その子供たちはもういない。

 真也は急いで連絡しなければと思ったのだが、パスポートもなければスマホもない。そう、連絡先は全てスマホの中なので電話番号など、全く覚えていないことを自覚したのだ。もちろん、警察には連絡したが身分が証明できない。なんとかホテルに連絡して、荷物の中の帰りのチケットを確認して信じてもらえたのだった。この時から帰るまで、京子への連絡が途絶えることになった。京子にしてみれば気が気ではない。ラインを入れても既読にならない。不安のまま二週間を過ごした。

 その間に真也は大使館に行ってパスポートを発行してもらいなんとか仕事を続けていた。仕事先でお金を貸してもらいなんとか凌いでいたのだ。なにしろクレジットカードも取られてしまったのだから。クレジットカードだけは停止の連絡ができたが、京子への連絡がどうにもならなかった。

 二週間が経過し無事日本に戻ってきた真也は自宅にもどり、パソコンを立ち上げた。スマホがないので電話もラインもできない。メールを打った。なんとか連絡が取れ、翌日は直接会うことができ、2時間くらいかけて釈明。京子はずっと泣きじゃくっていたらしい。どんな時でも緊急時に連絡ができるようにしておく必要があるということを強く感じた真也だった。


🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集  ← 記念日からの創作SSマガジン

↓↓↓ 文書で一覧になっている目次はこちらです ↓↓↓



いつも読んでいただきありがとうございます。
コメントも気軽に入れていただけるとうれしいです。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉


#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日 #掌編小説 #超短編小説

いいなと思ったら応援しよう!

松浦 照葉 (てりは) よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。

この記事が参加している募集