見出し画像

【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#16

 ✅ケンとメリーの不思議な絆の目次へのリンク


第三章 奈落の底から


新しい家

 案内役の手を取った瞬間、二人は空高く舞い上がり、落ちた場所を越え、はるかに高いところまで昇っていった。上を見上げて微かに見えていた空まで一瞬で舞い上がり、自分が落ちた亀裂も確認できたし、遠くにはメリーのワイン工場も見えた。ケンは何が起こっているのか理解できないまま、二人で空間を縫うように移動した後、静かに地面に降り立った。そこは、静かな街だった。そう、ほんのりと見えていた灯りはこの街のものだったのだ。案内役はケンに一言だけ告げて、静かに消えていった。

「ここが、今日からのあなたの家です。自由にお使いください。ただし、生きている人間と出会っても決して話をしてはいけません」

 ケンは不思議な感覚のまま、その家に入りしばらく休憩していた。なんとなく薄暗い感じはあるが、とても清潔に保たれている家だった。どことなく懐かしさを感じるような家だった。ケンは「そうか、おじいちゃんの家に似ているんだ」と思いを巡らせ、余計に親しみを覚えた。部屋の中で一人くつろいでいると、隣人のおばさんが挨拶にやって来た。

「おや、いつの間にか隣の家に主がきたようね。これで空き家ではなくなるわね。お兄さんはどこから来たの」

「初めまして、ケンといいます。僕は日本からきました」

「ニホン、えっとアジアのほうの国だったかしら」

「ええ、そうです。失礼ですけどどなたさまでしょうか」

「私はフランス出身でワイン作りをしていたのよ。ここに来てもう三年目よ。ここの生活にもだいぶ慣れてきたところよ」

「そうなんですね。よろしくお願いします。あのー、僕は死んでしまったんでしょうか。なんだか実感がないんですよね」

「ふふ、そうよね。訳が分からないままここに来たのよね。あなたは」

「は、はい。自分に起こっていることがつかめていないんです」

「そうよね。最初はみんなそうよ。そう、あなたは亡くなったの。それで天国に召されるまでここで生活していいのよ」

 ケンの頭の中は混乱していた。隣人がワイン作りをしていたと聞いて、メリーのワイン工場で飲んだアルコール度数の低いワインのことが思いだしていた。


つづく


🌿【照葉の小説】短編以上の小説集
🌿【照葉の小説】ショートショート集


☆ ☆ ☆
いつも読んでいただきありがとうございます。
「てりは」のnoteへ初めての方は、以下もどうぞ。

🌿松浦照葉の販売中の電子書籍一覧
🌿松浦照葉のプロフィール
🌿松浦照葉の毎日更新掲示板

#短編 #中編 #小説 #ファンタジー #創作 #ワイン #ケンとメリー

いいなと思ったら応援しよう!

松浦 照葉 (てりは) よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。