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3月1日 未来郵便の日 【SS】天国からの手紙

【今日は何の日】- 未来郵便の日

長野県下水内郡栄村の栄村国際絵手紙タイムカプセル館と、その運営を手がける絵手紙株式会社が制定した記念日で、「み(3)らい(1)」(未来)と読む語呂合わせからこの日に決定。2007年(平成19年)7月にオープンした絵手紙タイムカプセル館は、未来に向けて発信し、5年後、10年後の指定した日に届く未来郵便制度「未来ゆうびん」を発足させた。

現在は、未来への郵便を預かってくれるサービスがいくつか存在している


【SS】天国からの手紙

『愛する妻と子供たちそして孫たちへ
この手紙が届く頃には、私は天国に行ったあとのことだろう。みんなは見送ってくれたかな。病院のベッドでガンだと告知され余命宣告で三ヶ月と言われた時は、何も考えられなかったが、未来に届く手紙があったということを思い出し、慌ててこの手紙を書いて出したよ。五年後に届けてくれる手紙だということで。五年くらいならまだみんな覚えていてくれるかな。私はそこにはもういないだろうけど。可愛い孫たちの成人式や結婚式を見たかったけど、叶わなくなってしまった。そのことだけが心残りだ。でも仕方ない。運命は受け入れようと思って割り切った。
〜中略(特に子供達の結婚や、孫誕生時の思い出と妻への感謝)〜
生きている時はいろんなことがあったけど、全てをいい思い出として一緒に持っていこうと思う。母さん、ありがとう、子供たち、ありがとう、孫たちもありがとう。みんな喧嘩しないで仲良く助け合って人生を楽しんでくれ。天国のおじいちゃんより』

 こんな手紙が届く五年前、嫌がる父を娘と妻は半ば強引に病院に連れていき、検査を受けさせていた。急に体重が落ち、食欲もめっきりなくなり、大好きだったお酒も飲めなくなったからだ。そして病院でガンだと告知された。家族はせいぜいポリープか何かだろうと思っていたので、そのショックたるや大きかった。まだ六十六歳だったので死んでしまうには若過ぎる。孫たちもまだ小学生でありこれからの成長を楽しみにしていた矢先だった。

 家族全員がいる前でガンのステージ4告知をされたとき、父はさも平気そうな顔をして「これも運命だな」といって笑っていたけれど恐怖が襲っていたに違いないと娘は思ったが、フォローする余裕はなかった。その後入院し、抗がん剤治療による闘病生活が始まったが一ヶ月ほどで寝たきりになってしまったので、家族は日々見舞いに来て声をかけるくらいしかできなかった。その度に、父は痩せ細っていく体で無理をして笑顔を作ろうとしていたようだ。

 この天国からの手紙は母宛に届いた。しかし、その時には母もすでに亡くなっていた。父が死んだ後の三年後に心筋梗塞で亡くなった。手紙を代わりに受け取った娘は、久しぶりに見る父の筆跡に涙しながら、仏壇の前でぼそっと呟いていた。

「お父さん、こんな手紙を出してたんだ。知らなかったわ。もうお母さんとそっちで会っていると思うから知ってるわよね。お母さんもお父さんが亡くなってから張り合いが無くなったようで出かけることもなくなり運動もしなくなったの。それでお父さんが亡くなってから三年後には一人でいる時に心筋梗塞になり、私が尋ねた時にはもう遅かったのよ。お父さんが亡くなる時にはみんないたけど、お母さんは一人で死んだの。だから、そっちに行ったら優しくしてあげてね」

 その時、つけていた仏壇の蝋燭の火が、風も無いのに、ゆらっと揺れた気がした。まるで「ここにいるよ」と言わんばかりに。そして、娘は続けた。

「お父さんの孫たちも力を合わせて同じように五年後に届く手紙を書いてたのよ。偶然ね。その手紙も今日届いたわ。まだ開けていないから仏壇に置いておくわね。お父さん宛だから」

 今度は蝋燭が激しく揺れはじめた。慌てて娘は周りを見渡して「もしかしてここにいるのお父さん」と叫んだ。同時に蝋燭の火の揺れは収まってしまった。娘は気を取り直したように『まさかね。蝋燭の問題よね。お父さんがいるはずないもの』と心の中で思っていた。娘は蝋燭の火を消しちゃんと消えたことを確認して、リビングにいる孫たちのところに行き話をした。

「ねぇ、みんな。今日ね。おじいちゃんから手紙がきたよ」

「え、おじいちゃんから。だっておじいちゃん死んじゃったよ」

「そうよね。でもね。おじいちゃんは死ぬ前にお手紙を書いて出していたのよ。みんなも書いてくれたでしょ。五年経ったら届く手紙」

「あーあ、あれ。おじいちゃんも書いてたんだ。見たい見たい」

「そうか、じゃみんなでお仏壇のところにいっておじいちゃんのお手紙見てみようか。そして、代表でお姉ちゃんがみんなで書いたお手紙をおじいちゃんに読んで聞かせようか」

「うん」

 そう言って娘と二人の孫は和室に置いてある小さな仏壇の前にやってきた。

「あれー、蝋燭の火ついてるよー。ママいつも言ってるのに。誰もいない時はちゃんと消しなさいって。ママが忘れちゃダメだよー」

 娘は『やっぱりお父さん、来てるんだ。もしかするとお母さんも一緒かも』と思い、子供達に言った。

「ねぇ、みんな。今日ね。おじいちゃんとおばあちゃんは、ここに遊びに来ているかもしれないから、みんなでおじいちゃんからのお手紙を見たら、お姉ちゃんは大きな声でみんなのお手紙読んであげようね」

「はーい」

 蝋燭の火はまるで喜んでいるかのように踊り始めた。


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