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7月6日 ワクチンの日 【SS】感染

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- ワクチンの日

医療機器・体外診断用医薬品・試薬などを取り扱う医療技術の世界的企業であるアメリカのBectonDickinson社の日本法人である日本ベクトン・ディッキンソン株式会社が制定。

1885年のこの日、フランスの細菌学者のルイ・パスツール(1822~1895年)が開発した狂犬病ワクチンが少年に接種された。記念日は、ワクチンの大切さを多くの人に知ってもらうことが目的。記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。


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【SS】感染

 ウィルスが全世界で猛威を振るっている。このウィルスは次々と感染し人々の平和な生活を脅かしている。その影には、ウィルスを操っている者が見え隠れしているようだ。警察では対策本部が設置され、見えないウィルスを操っている黒幕をなんとかして暴こうとしていた。

 今回発見されたウィルスは極めて特殊なウィルスだった。パソコンのネットワークインターフェース部分がまず侵される。通常、ネットワークとの接点は完全なるソフトウェアだけではなくハードウェアと一緒になって動作するファームウェアである。よって、これまで世の中に多く出回ったウィルスとは少し違っていた。

 このウィルスの恐怖はそれだけではなかった。感染したパソコンは内部に熱を持ち、基盤全体に対して攻撃をするという、今まででは考えられない動きをした。その結果、パソコン内部のファンによって大量に拡散され、空気中に微小の金属塵が舞うことになり、その金属塵と空中を浮遊している風邪のウィルスが反応してしまった。その結果、風邪ウィルスは突然変異を起こし、人体に致命的な危険を与える存在に変わってしまうのだ。初期のコロナ以上の脅威が人類を襲い始めた。

 コンピュータ・ウィルスを開発したハッカーも予期していなかった結果が現れたことにより、身の危険を感じ国外に逃亡してしまった。もはやサイバー攻撃から企業を守るホワイトハッカーたちに頼るしかないのだが、人体に入ってしまった風邪の変異ウィルスはそれでは解決しない。政府関係者は焦った。このままでは次の選挙が大荒れになってしまう、なんとかしなければと。

 突然変異した風邪ウィルスに罹患したものは次々と命を落としていった。高熱を出すわけでもない。ただ、喉の奥に僅かな痛みを感じるだけだったため、ほとんどの人が気づくことなく数日で突然に命を落とす結果になっていた。このウィルスに感染したものは、何もしないと四十八時間以内に確実に命を落としていた。

 ホワイトハッカーは、企業の垣根を超えて世界中にいる仲間と協力し合いたかったが、ネットワークインターフェース部分に感染するタイプなのでなかなか情報共有ができずにいた。ネットワークに接続してしまうと感染してしまう可能性があるのだ。そんなとき、ある一人の若者が対策を思いついた。サーバー側にワクチンプログラムを適用し、そのサーバーに接続してきたパソコンには、感染していようがいまいが関係なく、強制的にワクチンプログラムを適用するようにしたのだ。そんなサーバーを世界中に作った。世界中のパソコンはこれらのサーバーに意図的に接続することで感染したパソコンは復旧し、未感染のパソコンは感染することがない状態になっていった。

 一方、突然変異した風邪ウィルスに関してはなかなか抗体を作り出すことができずに、ワクチンの目処が立っていない。罹患した患者が早い段階で死亡してしまうのでほぼお手上げ状態かと思われた。しかし、それでも諦めない若い研究者はもともとがパソコンなのだから感染したパソコンから、なんとかたどり着けるのではないかと考え、感染したパソコン内の基盤を調査し始めた。しかし、やはりたどり着くことはできなかった。それでも諦めきれない若い研究者は、風邪ウィルスが反応した金属塵を取り除けば、通常の風邪のウィルスに戻せるかもしれないと考えを変えた。そして、風邪のウィルスから金属塵を引き離す実験を始めた。

 若い研究者が最初に考えたのは、磁場の発生だった。磁場によって金属塵だけを誘導してしまうことができないかと仮説を立ててみたのだった。だが、そう簡単ではなかった。実験はことごとく失敗に終わった。若い研究者は最後の賭けに出た。微小電流を一定時間流すというものだった。すると、電流の流れに応じて金属塵がウィルスから引き剥がされ、電流の流れに吸い込まれていったのだ。若い研究者は水を得た魚のように、装置を持って感染者が入院している病院に行き、患者と家族の合意を取って電流を流して効果があるか検証した。強引な臨床試験であるが、緊急事態ということもあり、政府関係者は見て見ぬふりをしていた。感染して丸一日が経過した患者に適用してみると、なんと数分で効果が現れてきたのだ。

 電流を流した患者は瞬く間に回復した。それを確認した病院では、他の患者にも順番に適用した。結果は百パーセントの治癒率を達成したのだった。この結果は政府に報告され、電流を流す治療が例外的に承認され、全国の病院へと伝わり、罹患している患者に次々と適用されていった。なんとか対策の目処が立ち関係者は胸をなでおろしていた。政府では「事態の重要性を考慮し、政府により例外的に新しい治療方法を許可したことが功を奏した」とメッセージを出していたが、ネット上ですでに事実は拡散されていたので、国民は政府の発表は気にしてもいなかった。

 国外逃亡をしていた、コンピュータウィルスを作った犯人が見つかった。タイに逃げ込んでいたのだが、潜伏先のホテルで変異ウィルスに罹患して死亡しているのが確認された。どうやら、自らネットワークに接続して作成したプログラムを削除することを試みていたようだった。その結果、自らが感染してしまったのだった。政府ほどの狡賢さを備えていれば、命を落とさずに済んだのかもしれない。


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