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1月18日 振袖火事の日 【SS】火事になった心

【今日は何の日】- 振袖火事の日

「明暦の大火」と呼ばれる江戸時代最大の火事が1657年1月18日に発生した。
死者は10万人を超え、江戸城天守閣が焼け落ちたほか、多数の大名屋敷、市街地の大半が焼失するなど、江戸中を焼き尽くすほどの大火事であった。明暦の大火(1657年)・明和の大火(1772年)・文化の大火(1806年)は江戸三大大火と呼ばれる。
 商家の娘が恋をしたが叶わず、1月16日、16歳で亡くなった。その娘が着ていた振袖がその後、2人の娘に渡るが、みんな何故か1月16日に亡くなった。その振袖を供養すべく因縁の1月16日を避けて18日に供養したところ、火の中に入れられた振袖が風に煽られ町中に燃え移り大火となったということから「振袖火事」と言われるようになった。それ以外にも説はあるようだ。


【SS】火事になった心

 昔、三人の仲のいい16歳になる着物がよく似合う若い娘がいた。名前は、それぞれ花、菊、愛。何かにつけて一緒に遊んでいた。
 ある日三人は旅芸人の一座の公演を見に行こうと話し合っていた。

「ねぇ、菊、愛。今来ている旅芸人一座の清次郎さんってとっても男前なんだって。私、心を奪われたらどうしよう」
「もう、花はいつもそうなんだから。お父っつぁんに叱られるよ。ねぇ、愛」
「ほんと、ほんと、花はほれっぽいんだから〜」
「え〜、二人だって変わらないと思うけどなぁ」

 公演当日、三人は普段よりおめかしして公演を見に行った。見やすい場所の桟敷席で三人並んで楽しめた。見ている間、三人とも目を輝かせ、清次郎の演技に釘付けになっていた。公園が終わり芝居小屋を出てきた三人は放心状態。花が一言。

「私、惚れたわ。清次郎さんに」すかさず菊も「私も」といい、愛も「私だって」と返した。観劇が終わった後三人は楽屋で清次郎を訪ねひとときの楽しい時間を過ごした。そして三人はお互いに厳しい目で見つめ合い「今日から私たちは恋敵ね」と言って別れた。

 花はすぐさま清次郎から船遊びにさそわれた。言われた通りに花は船を借り、晩酌を準備し船の中で清次郎をもてなした。清次郎はここぞとばかりに甘い言葉で花を上手に誘った。花は身も心も清次郎に捧げてしまったのだった。

 菊もまた清次郎から連絡を受け料亭を予約した。静かな部屋ということで料亭の一番奥の部屋で清次郎を待った。清次郎は可愛いかんざしを手土産に持ってきて、甘い言葉で菊を誘った。菊は言われるがままに身も心も清次郎に捧げた。

 そして愛もまた清次郎から連絡を受け茶屋の座敷を予約した。茶屋といっても酒もある。もてなしには十分である。清次郎は甘いお菓子を手土産に持ってきた。そして、お菓子よりも甘い言葉で愛を誘った。愛は全身の力を奪われ身も心も清次郎に捧げた。

 三人の娘たちは自分たちが侵した罪を深く意識し、育ててくれた両親に申し訳ない思いになり、それぞれの部屋で首を吊って逝ってしまった。それぞれの家はひっそりと葬儀をあげ、ひたすら秘密にしたため誰も知ることはなかった。

 しばらく経った後清次郎は、喜びを隠せず旅芸人の仲間とともに近くの蕎麦屋で酒を呑みながら自慢話をしていた。

「いやー、最近はついてたねー。若い娘三人から言い寄られてみんな頂いちまったよ。どうせ三日後にはこの街ともおさらばするし、頂くものは頂いとかないとなぁ。失礼というもんだよなぁ」
「さすがは、清さんだ。いい男は違うね〜。羨ましいったらありゃしねぇ」

 追加の熱燗を運んできた蕎麦屋の女は楽しそうに話している清次郎たちに割り込んで話しかけてきた。

「まぁ、こちらのいい男はどちらの娘を手籠にされたんです。あたしも手籠にしてもらいたいもんですよ〜」
「おいおい、姐さん。盗み聞きは良くねぇなぁ。それに手籠とは人聞き悪いね〜。おいらは、娘っ子たちの心と体を満足させてやっただけだぜ。おいらに罪はねえやな。まぁ、今回は花、菊、愛とかいう娘っ子だったかな。まぁ、言い寄られて仕方なくさ。へへ、じぁあ、姐さん、今日、店がはねたらおいらとしっぽり行くかい」
「あら、うれしい。じゃあ、店の向かいの旅籠で風呂にでも入って待っといとくれよ。あたしも店が終わったらすぐに支度していくからさ。」

 こうして蕎麦屋の中居の女、しゅくと、清次郎は旅籠の一室で待ち合わせすることになった。清次郎は先に旅籠に入りひとっ風呂浴びてさっぱりした後、追加の酒を一人で呑みながら粛がくるのを待っていた。

 蕎麦屋も営業が終わり、提灯の火も消えた。粛は裏口から出て清次郎が待っている旅籠に裏口から入って行った。粛は旅籠の番頭に目配せしながら部屋の場所がいつものところと同じだと確認すると、やわら着物の裾を捲り上げ、腰紐を一本解いて襷に利用し着物の袖が邪魔にならないようにしながら階段を上がって行った。

 蕎麦屋でも酒を呑み、旅籠でもあったまった体で酒を飲んでいた清次郎はいい加減心地よく酔っ払っていた。

「あの蕎麦屋の女はおせえな。清次郎様を待たせるとは生意気な奴だな。ちょっと懲らしめてやらねばなるまい。へへ」
「お待たせしました〜」粛が軽やかな足取りで部屋に入り障子を閉め、部屋の行灯あんどんの灯りを素早く消して部屋を暗くした。

「おいおい、そんなに急かせなくてもおいらは逃げやしないよ」
「ええ、逃げられては困りますよ」

 粛はもう一本腰紐を解くと暗闇になった部屋で背後から清次郎の首に腰紐をかけ、背中を合わせるようにして腰で清次郎を跳ね上げ、清次郎の首に自分の全体重をかけさせた。何が起きたかわからない清次郎は抵抗する間もなく息を止められ白目を向いて息絶えた。粛は静かに清次郎を背中から下ろし、腰紐を元に戻して行灯をつけた。ほんのりとした灯りが変わり果てた清次郎の姿を照らした。

「お前のような男は生かして置いちゃ、ろくでもないからね。娘たちに代わって成敗させてもらったよ。安心して地獄にお行き」

 まさに、粛清の瞬間だった。


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