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【SS】 心を清める #シロクマ文芸部

 ガラスの手水舎てみずやで参拝客を迎えてくれる神社がある。通常は石で作られているのだが、この神社では二ヶ所の手水舎があり、そのうち一つが美しいガラスで作られている。しかも、ひっそりと人目につかないガラスの手水舎は、神社に裏から入るための目立たない小さな参道にあった。ガラスの手水舎には、ちょっと変わった力が秘められており口コミだけで知られていた。

 人は多かれ少なかれ悪いことをしたという意識を持っているものである。そんな心が気になった時にこの神社のガラスの手水舎で手を洗うと、心の汚れ具合が洗った水に色となって映し出され、洗い流すことができるのである。

 両親に対し憎悪のような感情を持っている人が、ガラスの手水舎で手を清めると、洗った水は緑色になって流れていく。そして次第に透明になる。

 別れた恋を引きずっている人が、ガラスの手水舎で手を清めると、洗った水は赤色になって流れていく。そして次第に透明になる。

 自分自身を嫌っている人が、ガラスの手水舎で手を清めると、洗った水は青色になって流れていく。そして次第に透明になる。

 過去悪事を働き後悔している人が、ガラスの手水舎で手を清めると、洗った水は灰色になって流れていく。そして次第に透明になる。

 清らかな手水をかけると、その人の状態に応じた心の中の不純物が色となって流れ出て清められる。かけて流れる水が透明になってから、本殿に行って両手を合わせ清々しい気持ちでお願いをすることができる。もちろん、帰っていく時は大きな参道のほうからみんな帰っていく。ガラスの手水舎がある参道は入口専用としてその役割を担っている。

 多くの人の心を清めたガラスの手水舎は「不純な心を色で洗い流してくれるガラスの手水舎」として、いつしか都市伝説のように語られている。


※補足
「手水舎」の読み方はさまざまです。神社本庁は「てみずや」、大國魂神社は「てみずしゃ」と呼びますし、「ちょうずや」「ちょうずしゃ」と呼ぶところもあります。


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#シロクマ文芸部 #創作 #小説 #ショートショート #掌編 #企画

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