【SS】 星空のケーキ (774字) #シロクマ文芸部
夜に降る星屑は、両手を広げても受け止められない。それでも、小さな女の子は一生懸命に両手を広げていた。
「ねぇ、ママ。お星様が欲しいなぁ。たくさん降ってるのにモモの手の中には一個も入ってくれないの」
「そうだね〜。いろんなところに落ちてるから、モモちゃんの小さな手は見えないのかもしれないね」
「ええ、じゃあさ、ママがやって〜」
「うーん。ママでも無理じゃないかな〜。遠いところで降ってるから」
女の子はいきなりしゃがみ込んで泣きじゃくってしまった。
「モモちゃん、仕方ないよ。また明日やってみようよ」
「イヤだ。モモは今日がいいの。今日じゃなきゃダメなの」
しゃがみ込んだまま、一歩も動かないぞとでも言いたげな小さな女の子の瞳は涙で溢れかえっていた。困り果てたママは静かに聞いた。
「ねぇ、モモちゃん。どうして今日じゃなきゃダメなのかな」
「だって、今日はパパの誕生日なんだもん。モモはパパに会いたいんだもん。ママは会いたくないの、パパに」
ママは一年前に事故で亡くなった夫の誕生日をすっかり忘れていた。育児に追われ必死で働く毎日だったので、それどころではなかったのだ。モモの言葉にハッとさせられたママは静かにモモを抱きしめた。
「そうだったね。パパが話していたよね。夜に降る星屑を集めるとなんでも願い事が叶うって。ママ、忘れちゃってたよ。ママも会いたいな、パパに」
「モモも、パパに会いたいもん。会わないとお顔を忘れそうだもん」
「そっかー。わかった、じゃあ、ママが星空のケーキを作ってあげる。それだったら、モモちゃんの手の中に入るでしょ。そして一緒にお祈りしよう。パパに会いたいですって」
「うん、わかった」
モモちゃんはママの手を力強くギュッと握り締め、歩き始めた。
その日の夜、モモちゃんの手のひらではママが作った星空のケーキが照明の光を浴びて美しく輝いていた。
了
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