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7月19日 サイボーグ009の日 【SS】ダイバーシティの街

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- サイボーグ009の日

株式会社石森プロが制定。

1964年(昭和39年)のこの日、石ノ森章太郎の漫画『サイボーグ009』が週刊少年キングで連載を開始した。これを記念したもの。記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。

『サイボーグ009』は、特殊能力を持ち、また国籍の異なる9人のサイボーグが悪に立ち向かうSF漫画である。2012年(平成24年)10月時点で、漫画の累計発行部数は1000万部に達する。


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【SS】ダイバーシティの街

 西暦三〇〇九年、ついに人類は大きな決断を下した。世界が認めるダイバーシティと名付けた特区街を全世界の同意の下、建設したのだった。過去からシンガポールと呼ばれていた小さな国があり、世界に先駆けてITを駆使して成長した複数民族の国家だ。その小さな国の中にダイバーシティという特区街を作ったのだ。場所は、今では宇宙船も使うようになったチャンギ空港とマレーシア寄りの海との間の森林地域で、十年かけて切り開き、企業誘致や住宅地建設を実施していったのだった。

 さて、ダイバーシティとは一体どんな街なのだろうか。「ダイバーシティ」という言葉が死語になってから久しいが、この時代になってから新しい多様性が求められるようになってきた。しかし、どこの国も二の足を踏んでいて先陣を切ろうとはしない。そんな時に名乗りをあげたのがシンガポールだったのだ。世界の国々はこれ幸いと賛成したため、満場一致で特区街をシンガポールに建設することになったのだった。もちろん、世界的なモデル地区となるため建設資金は世界中からの支援が集まった。日本もまた例外では無かった。シンガポールでの効果を見極めてから、日本の中に同様の特区街を建設するかどうかを判断しようと政府は注目していたようだ。

 この特区街に集まって居住権を得るのは、純粋な人間だけではなかった。アンドロイド、高度AIを搭載した人型の自律型ロボット、そして最も人間に近いサイボーグたちも含まれる人類を超えた多様性を容認する街だったのだ。そして街の名前そのものをダイバーシティと名付けてしまったのだった。

 ダイバーシティでは、街の全機能の制御はAIコンピュータによって統制される。いかなるハッキングでも阻止できるように、サターンと呼ばれる複数のAIコンピュータが外の世界と接続されていない、閉じられたネットワークを介して監視しあっている。そして、この街に住むことができるアンドロイドやロボットそしてサイボーグは、サターンと特殊帯域を使って通信するためのチップを埋め込まれることが前提で居住権を得られる仕組みになっていた。このことはダイバーシティに住む人間に安心感を与えるための施策でもあった。

 ロボットとアンドロイドは元々が人工のものであるため、完全に制御することが可能だったが、サイボーグは人間がベースになっている。そのためサターンのコントロールにも限界があった。取り付けられている人工的なもの、例えば腕だったり足などはサターンによって強制的な制御は可能になるのだが、脳そのものを制御することはできないのだ。そのため、ダイバーシティで生活を始めたサイボーグのうち、何人かは問題を起こし始めたのだった。サターンによって制御されても行動にそれほど支障がないような改造を施されたサイボーグは、富を得るために悪事を働くようになってしまったのだった。

 ディープシーと名乗るサイボーグは、左手の指先と腹部の皮膚、左耳、そして両足が人工のもので取り替えられていた。ディープシーの両足は直接脳からだけの信号で動くように改造されていたため、サターンの制御を受けることができないような体になっていた。このことを認識していたディープシーは、宝石店強盗を繰り返し、隣町で盗品を換金し富を得、さらに自分の体の改造をしていたのだった。ディープシーは狙った店に入る時には左手の指先で防犯カメラと不法侵入を防ぐためのレーザーの壁を無効化し、ディープシーが入ったという痕跡を残さずに強盗を実施していたのだった。当然サターンも気づかず、ディープシーはやりたい放題だった。

 しかし、一人だけディープシーの行動に気づいたものがいた。ディープシーと共にこの街に移り住むことになった友達のスカイというサイボーグだ。スカイは街の治安を守るためのサターン直轄の治安維持部隊の一員だったが、ディープシーの体がどんどん人工のものに置き換わっていることを知り、その費用に不信感を抱いていたのだった。

「おい、ディープシー。最近何となく資金が裕福になっているようだが、どうやって儲けているんだ」

「ん、何だスカイ。俺を疑っているのか。ギャンブルと投資で稼いでんだよ。最近調子良くてな。俺の運の強さはお前も知っているだろう」

 スカイはサターンと交信して、ディープシーがギャンブルも投資も実施した痕跡がないだけでなく、定職にもついていないのに銀行口座には大金が入っているという情報を得た。しかし、スカイは幼馴染であるディープシーを何とかして助けたいとも思っていた。幸い、人を殺害しているわけではない。

「なぁ、ディープシー。俺たちは幼馴染だよな。俺はこれからもお前と友達でいたいと思ってるんだぞ。情報は全て掴んでいるからウソをつく必要なんかないんだよ。悪事を働いたのなら手遅れになる前に償えばいい。俺も手伝うから。そうじゃ無かったら俺たちの友達関係も終わりだし、力ずくでお前を逮捕しなきゃいけなくなるじゃないか」

「・・・ゴメン。スカイ、俺は、お前が羨ましくて追いつきたかっただけなんだ。だから体を改造するための金が欲しくて。やってしまった。ゴメン」

 ディープシーは、スカイのようになるにはもっと体を改造しないと能力的に追いつけないと考えていたようだった。しかし、動機はどうであれ、罪は罪だ。ディープシーは素直に従って裁判を受け、五年間の実刑判決を言い渡された。その後、頻繁にスカイが面接に通ったのはいうまでもない。サイボーグになったとしても友情という絆は強かったようだ。


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