4月9日 フォークソングの日 【SS】告白
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- フォークソングの日
日本のフォークソング、ニューミュージック界を代表する数々の名曲を送り出してきた日本クラウン株式会社のポップス系のレコードレーベル・PANAM(パナム)レーベルが制定。日付は「フォー(four=4)ク(9)」と読む語呂合わせ。全国各地にある「フォーク酒場」の盛況ぶりなど、新たなブームとなっているフォークソングをさらに広め、フォークソング文化の発展に寄与することが目的。
フォークソングについて
「フォークソング(Folk Song)」は、音楽のジャンルの一つ。「Folk」は「民謡、民俗」を意味し、元来は民謡や民俗音楽を指すが、民謡から派生したポピュラー音楽をも含める。本来のフォークソングの演奏は、古典的なアコースティックギターやアフリカ系アメリカ人の楽器・バンジョーなどを使用し、フォークロック(Folk Rock)やロック(Rock)のように電気楽器は使わないのが伝統的な音楽表現である。
日本において1960年~1970年代に活躍した主なアーティストとして、岡林信康、高田渡、加川良、遠藤賢司、ザ・フォーク・クルセダーズ、中川五郎、マイク眞木、森山良子、ビリーバンバン、加藤登紀子、赤い鳥、ガロ、吉田拓郎、井上陽水、かぐや姫、海援隊、イルカ、さだまさし、松山千春などが挙げられる。
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【SS】告白
僕には好きな人がいる。でもその人は友達の彼女。しかも年上の大学生だ。流石に声をかけることができない。そんなことを考えながら悶々とした日々を過ごしていた高校三年生になったばかりの頃だ。僕は父親の影響か、昔流行ったフォークソングが大好きで、時々聞いたり弾いたりしている。机の横に立てかけてあるウェスタンギターを手に取り、吉田拓郎の曲を弾いてみる。「となりの街のお嬢さん」だ。妙にしっくりきてしまい、何度も繰り返し弾いていると、隣の部屋にいた母から怒られる。
「若い男がいい天気の休みの日に家の中に閉じこもってないで外に行ったら」
「ああ、そうだね。本当だ。めっちゃいい天気」
「さぁ、さぁ、もう掃除するんだから、じゃまじゃま」
そう言いながら掃除機を抱えた母は、ズカズカと僕の部屋に入ってきた。仕方なく僕はギターを抱えたまま河原の方に向かって歩き出した。ここは結構田舎の方なので、ほとんどすれ違う人もいない。春の暖かい日差しは、すっかり花が散ってしまった桜の木に燦々と降り注ぎ、濃い緑色の葉を眩しいくらいに輝かせている。
穏やかに流れるそれほど大きくない川のほとりに座って、ギターを弾き鳴らした。部屋の中とは確実に違う音の響きを感じながら、背中に当たる春の日を心地よく感じて、歌ってみた。
となりの町のお嬢さんが 僕の故郷へやって来た〜♫
〜〜〜 好きになっちまったんだョ〜♫
どうしても彼女のことが気になるから、この歌になってしまう「となりの町のお嬢さん」だ。心地よく弾いていると後ろの土手沿いの道から自転車のブレーキ音が聞こえた。
「おーい、海じゃないか〜」僕は海と書いてカイという名前だ。振り返ると友達の富夫がいた。
「海、こんなところで何やってんだ。一人で」
「ああ、天気いいからさ、ここでギターの練習してた」
「天気のいい日くらい、どっかに行こうぜ。ゲーセンとかさ。俺も一人だから誰かを誘いたかったんだよ。海、一緒に行こうぜ、ゲーセン」
天気がいいのになんで室内とも思ったし、僕はゲームセンターが苦手だった。コインが貯まることもないし、ストレス発散にもならないし、持っているお金だけがなくなる場所みたいに思っていた。
「いや、僕は」と言いかけた時、富夫が遮って話してきた。
「そうそう、道夫と彼女の涼子も行ったみたいだぞ、ゲーセンに」
涼子というのはまさしく今僕が好きになっている人だ。そして彼氏は友達の道夫。それを聞いてしまい、咄嗟に返事をかえた。
「よし、行こう。一旦帰るのも面倒だからこのままギター持っていこう」
僕は、ギターを担いで富夫の自転車の後ろにまたがり、少しだけテンションを上げた。富夫が必死に漕ぐ自転車は土手沿いの遮るものが何もない道で春風を浴びながら、快適に進み街のゲームセンターについた。川沿いから二キロも離れていないのであっという間に着いてしまった。ゲームセンターの入り口に近づくと、道夫が我々に気づいた。
「あれ、なんだよ。富夫と海も来たのか〜。今日は誰もいないから、デートできると思ったのにな〜、なぁ涼子」道夫に隠れている涼子は困ったように微笑んでいた。僕はやっぱり来るんじゃなかったと内心思ったが、もう引き下がることもできない。道夫と富夫が話し始めてしまったので仕方なくギターを抱えたまま手持ち無沙汰にしていると涼子が声をかけてきた。
「あれ、海くんってギター弾くんだ。意外。あのね、私もギター弾くのよ、ピアノも少々。曲作ったりもするのよ」
「えっ、そうなんだ。凄いなぁ、じゃあ、僕も曲作りに挑戦してみようかな」
「いいね。海くんが曲作ったら私が編曲してあげる」
「おいおい、何そっちで盛り上がってんだよ、涼子と海」
いい感じのところで、道夫が気づいて話が終わってしまった。そのあとはゲームセンターで四人で遊んで時間を潰した。ゲットしたぬいぐるみは全部涼子の元に集められて、それぞれ帰路についた。すでに日は傾き夕日が川面を赤く照らし始めていた。帰りはみんなと別れて一人だったのでギターを担いでテクテクと土手を歩いていた。後ろから声をかけられているような気がして振り向いたら、遠くから走ってくる涼子の姿が見え、思わず胸が高鳴った。
「あれ、どうしたの。道夫は」
「うん、道夫くんはもう自分の家に帰ったよ。海くんに連絡先聞くの忘れたと思って急いで追いかけてきたのよ。だって、曲作っても連絡できなきゃ意味ないでしょ。ねっ、私のラインはこれだよ。読み取って」
「わかった。よし、これでOKだ」
「じゃあ、私も登録するね。スマホちょっと貸して」
ライン登録が終わると涼子は手を振って、来た道を振り向き様に軽快に走りだし帰って行った。僕も懸命に手を振り返し、沈む夕日とは裏腹に高まる気持ちを抑えるのが精一杯で今にも歌い出してしまいそうな気分になっていた。家に帰ったら、早速今の気持ちを詩に起こし、アルペジオで弾けるようなゆっくりとした曲を作ろうと思い取り掛かった。思い出すだけでも嬉しくなる時間になったのは富夫が誘ってくれたからに他ならない。心の中で富夫にサンキューと言っていた。そんなことを考えていると隣でスマホが着信している。涼子からのラインだった。ドキドキしながらメッセージに目を通す。
『今日は海くんの思いがけない趣味を知ってとっても嬉しかった。絶対曲ができたら連絡してね。私、編曲するから。じゃあ、おやすみなさーい』
またしても嬉しくなってしまった。涼子の方から連絡をくれたことが嬉しかった。慌てて返事を打ち込んだ。
『僕も、今日はとても嬉しかったです。頑張って曲を作って連絡します。今日はありがとうございました。おやすみなさい』
送信し終わって、なんて幼い文章なんだと思ったが後の祭り。このリカバリーは曲で返そうと決心し、曲のタイトルを決めた。
今の気持ちを大切にしたいし、後悔はしたくないから、タイトルは「告白」に決めた。
了
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