6月28日 水事無しの日 【SS】水無月の殺人
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 水事無しの日
兵庫県加古川市に本社を置き、「コスモウォーター」ブランドで天然水の製造・宅配業務、独自開発のウォーターサーバー事業を手がける株式会社コスモライフが制定。
日付は「水」にちなみ、陰暦の異称「水無月」から6月で、その毎週「水曜日」に。ペットボトル飲料を買って運ぶ手間、お湯を沸かしてお茶を入れる手間など、飲み水に関わる水まわりの家事を「水事(すいじ)」と命名した。
「水事(すいじ)無しの日」は、水事の負担軽減にウォーターサーバーが役立つことを知ってもらうことを目的としている。記念日は2018年(平成30年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。
2023年(令和5年)の日付は以下の通り。
6月7日(水)
6月14日(水)
6月21日(水)
6月28日(水)
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【SS】水無月の殺人
人里離れた日当たりのいい一軒家で事件は起こった。一人暮らしの老人が鈍器のようなもので複数回後ろから殴られて殺害されたのである。第一発見者は清美という介護ヘルパーだ。清美は毎日通って食事の世話を請け負っていたので、この日も朝食の準備をするために麓から軽自動車に乗ってやってきた。すでに日は高く上り、緑のきれいなきゅうりが生る裏の畑にも燦々と太陽の光が注いでいる朝八時ころだ。呼び鈴を押しても返事が無いので、おかしいと思い玄関を開け入って見つけたそうだ。普段から訪ねてくる客もいないので玄関には施錠しないのが習慣だったようだ。この事件は、県警の大森晃太郎刑事と内海次郎刑事が担当することになった。
死亡推定時刻は、前日夕方の六時過ぎ。ヘルパーの清美が夕食の準備をして片付けて帰った後ということになる。清美のアリバイも確認された。夕方六時には片道三十分はかかる自宅に到着しており、家族も隣の人も見たという証言が取れた。
現場には殴った凶器の痕跡はない。犯人が持ち去ったのかもしれない。リビングには被害者だった老人が、いつでも水が飲めるようにと設置されたウォーターサーバーが、部屋の隅に置いてあるくらいで争った形跡も荒らされた跡もない。鑑識が入りくまなく捜査されたが特に怪しいものは見当たらなかった。検出された指紋は、ヘルパーの清美、たまに様子を観にくる息子である洋一、定期的に確認に来る民生委員の俊也などであり、少なくとも被害者に関係のない人の指紋は検出されなかった。もっとも、手袋をつけた犯行だったら当たり前かもしれない。
息子の洋一が連絡を受け駆けつけてきて、大森刑事に対し、父親の預金口座からたびたびまとまった金額のお金が下ろされていると訴えた。内海刑事は、やはりヘルパーの清美が怪しいと思ったがアリバイと凶器が問題である。銀行の監視カメラを急ぎ確認依頼したところ、そこに写っていたのは清美ではなく民生委員の俊也だった。早速俊也の自宅に警官に向かってもらい事情聴取すると被害者からたびたび頼まれていたという。どうやらヘルパーの清美にお金を貸していたようで、さすがに引き出すのを清美には頼めず、俊也に依頼していたということが分かった。
洋一は急いで駆けつけてきたので喉を潤そうと飲み物を探しに冷蔵庫のところに行った。中には麦茶があったのでコップについで一気に飲んだ。何気なく冷凍庫を引き出してみると違和感を感じ、内海刑事に話をした。
「いつもは、少ない冷凍庫を効率よく冷やすとともに緊急時に利用できるからということで、清美さんの発案でウォーターサーバーの水を入れた二リットルのペットボトルが凍らせてあるんですが今日は入ってません。特に緊急事態のようなことはなかったはずですが」
それを聞いた内海刑事は慌てて裏庭に走った。確か逆さまにしたペットボトルが畑に刺してあったのを見た記憶があったからだ。内海刑事は鑑識にそのペットボトルを調べるように依頼した。かろうじてペットボトルの中には水滴が残っている。内海刑事は現状の状況を頭の中で整理し、今回の事件の内容を考えている。大森刑事は相変わらず凶器はなんだろうと呟きながら家の中を探し回っている。
内海刑事は仮説を立ててみた。被害者は後ろから殴打された時、まだ息があったとしたら、死亡するまでに時間が経過したのかもしれない。そうだとすれば清美のアリバイは崩れるはずだ。そんな思いでもう一度現場を確認してみると、わずかではあるがうつ伏せに倒れたところに畳を少し引っ掻いたような跡が見られた。内海刑事は確信した。中の水が凍ったペットボトルで後ろから数回殴打して殺害に至ったに違いないと。そして部屋の隅でオドオドしているヘルパーの清美を呼んだ。
「清美さん、あなたは凍ったペットボトルを使って被害者を殺害しましたね。おそらく借金の返済のことで口論になったのでしょう。あなたは逃げることができないと悟って、咄嗟に冷蔵庫から凍ったペットボトルを取ってきて後ろから何度か殴打したのではありませんか」
「し、知りません。私は自宅に帰ってましたから」
「裏庭の畑に刺してあったペットボトルを現在調査中です。どんなに洗ったとしても血液が付着していればルミナール反応というものがでます。そしてペットボトルの周りから指紋も出るでしょう。さらに数滴残っているペットボトルの中身の水がウォーターサーバーの水の成分と一致すれば疑うことのできない証拠となります。鑑識の報告を待ちますか、それとも今、全てを正直に話して楽になりますか」
清美は大きく深呼吸して天井の方を向き、覚悟を決めたような顔で話し始めた。
「申し訳ありません。私が殺しました。あまりにもしつこく、早く金を返せと迫られたので思わず冷蔵庫からペットボトルを取り出し、後ろから何回か殴りました。毎日の食事や身の回りの世話をしてあげているのに、あの爺さんは口で私をこき使っていたんです。でも、お金を借りている弱みがあるので我慢していましたが、日に日にエスカレートして、咄嗟にペットボトルのことを思いつき殴りました。何回か殴ったら頭の後ろが血だらけになって倒れたのです、ハッと我に返りました。そのあとは、なんとかしなければと思い、怖くなってペットボトルをキッチンで洗って裏庭の畑に刺しました。夏なので朝日が昇る頃には氷は溶けてしまうだろうと思ったのです」
見事に内海刑事の推理は的中した。それを聞いていた大森刑事は目を丸くしながら驚いていた。
「内海刑事、いつもながらすごい推理だったな」
その後鑑識から連絡が入り、畑にあったペットボトルからは、被害者と同一の血液反応が確認され、清美の指紋のみが検出されたことが分かった。水の成分の検査結果も予想通り、ウォーターサーバー内の水の成分と一致した。一件落着である。
了
※ 2000文字程度のミステリーに挑戦してみました。
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