5月10日 コンクリート住宅の日 【SS】新築
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】-コンクリート住宅の日
東京都板橋区高島平に事務局を置き、特殊FRP型枠を使用して精度の高い鉄筋コンクリート住宅を建築するRC-Zシステムを手がける「RC-Z家の会共同組合」が制定。
日付は「コ(5)ンクリート(10)」と読む語呂合わせから。地震や火災に強く、長期間使えるコンクリート住宅の性能やデザインの良さをアピールすることが目的。記念日は2010年(平成22年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。
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【SS】新築
家の話といえば、ブーフーウーの三匹の子豚の家を思い浮かべる。ワラの家、木の家、レンガの家をそれぞれ建てるのだが、ワラの家と木の家を作った子豚は狼に家を吹き飛ばされて食べられてしまうが、レンガの家は狼が壊すことができない。しかし煙突を見つけて入ろうとする。煙突から入った狼はそのまま釜茹でにされて子豚に食べられてしまうという何とも残酷なお話だが、頑丈な家を建てておけば安全も守られるという教訓でもある。
現代の家をみると、さすがにワラだけの家はないが、古くからの茅葺の屋根の風情ある建築は残っている。一番の敵は狼ではなく火だ。街を上げての消防設備を作ったりして防火活動に力を入れ維持している。また、一戸建ての多くは従来工法の木造建築が多い。しかし、外壁を板ではなく耐火構造の材料にすることで丈夫で長持ちをするような住宅にしている家も多く見かける。木造住宅の場合は、火もさることながら水にも注意が必要だ。水を含み続けると木が腐ってしまうからだ。防腐処理した木材であっても年数が経過すると心配である。そのため湿気対策が重要視される。日本の場合は地震対策も重要で揺れを柔軟に吸収する構造も忘れてはならない。日本の家づくりはかなり進化し、少々の地震ではびくともしないし、火災が発生しても貰い火をしないような構造を目指し、今も進化している最中である。
一組の若い夫婦がいよいよ家を建てる検討を始めたようだ。家族構成は、幼稚園に通う子どもが二人と夫婦二人の四人家族だ。そんなに広い家はまだいらないだろう。彼らには運がいいことに両親から譲り受けた土地がある。ほとんどの人は土地探しから始まるので建売などを探すことになるのだが、この夫婦は家を建てることに集中できるのでラッキーだった。
今はマンション住まいの一家だったが、五階部分に住んでいるため、下の階の部屋への騒音が気になり始めていた。子どもたちはどんなに注意しても部屋の中で跳んだり走ったりするものだ。それで、譲り受けた土地に家を建てようと考え始めたのだった。どうせなら頑丈な家がいいと考え、木造、軽量鉄骨、コンクリートといろいろと検討を開始した。
子どもたちは、砂場とブランコが欲しいといい、母親は家事コーナーが欲しいという、父親は書斎が欲しいと思ってはいるが、書斎でやることがあるわけではない。ただ、こうしてどんな家にしたいかということを家族で話し合うことは、みんなの顔が生き生きとしていた。夢を語る時間は楽しいものだ。そして現実は襲いかかる。
しばらくして、設計士さんとの打ち合わせが始まった。間取りなどの検討も始まったのだが、外回りの工事や、水回りに結構コストが掛かることが次第に判明していった。断熱のための設備は削るわけにはいかない。そして建築コストを抑えるための検討が開始された。キッチン、バスルーム、トイレのグレード検討。当然、リーズナブルな価格帯への変更。建築士からの提案で床下空調に興味が引かれ決定した。床下空調は一台のエアコンで家全体をコントロールしようというもの。これはいいと父親は決断し、平家で建てることを決めた。幸い土地は結構広いので平家でも建坪は三十五坪程度を考えても全く問題はなさそうである。
子供達の要望の砂場とブランコは家ができた後、父親が作ることを約束し、自分の書斎は諦めた。それでも家族で話し合って夢を現実にするプロセスを楽しんでいた。そして改めて、家を建てることの大変さを感じていた。最後まで譲歩しなかったのは、コンクリートの家にするということだったようだ。木造に比べると倍くらいのコストが掛かるが、水回りや間仕切りの省略などを工夫していった。最終的には家全体の光熱費とか長い間価値のある資産として残すことを優先しコンクリートの家にこだわったのだ。
いろいろと検討を始めてから半年が過ぎた。そこには最初描いていたものと同じコンクリートの家が実物となって建っていた。よく晴れた青空の下に建っている家をみんなで見て、家族は全員揃って玄関を開けた。明るい日差しが家の中まで届いている。子どもたちは早速玄関に靴を脱ぎ捨て、廊下からリビングへと遠慮することなく走り回って大声で笑ってはしゃいでいた。母親はすぐにキッチンに行き家事動線を確認し、キッチンの高さも自分の高さに合っていることを確認するとにっこり微笑んでいた。父親は、ちょっと手持ち無沙汰みたいな感じではあったが、家族の喜んでいる顔が何よりの達成感だったようだ。
これからマンションを売却して、新しい家のローンを返していく生活が始まる。しかし、それ以上に解放された生活空間を実現できて、これまで以上に笑顔が溢れる家族となっていくだろう。この家で子どもたちはスクスクと育って大人になっていくのだ。のびのびと生活する場所を確保することは家族にとっても重要なことである。この家族は、その環境を手に入れることができたようだ。
家を建てるということは人生に於いて大変な事業である。そう易々と実現できるものでもない。今回のケースのように、土地があるのとないのとでは、大きな違いがあるものだ。決して家を建てることが、人生の目的であるわけではないだろうが、自分の家を持つということにも家族を思う気持ちが表れるものだ。コンクリートの家のように、大切な家族を守ってやれるような環境づくりのために、人生の一部の時間を費やすのは決して無駄なことではない。
了
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