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7月1日 海開き 【SS】告ると決めた日

このシリーズもおかげさまで半年が過ぎました。少しは気分転換という意味も込め、タイトル画像を変えてみました。いかがでしょうか? 今年の後半はこの画像で走り抜けたいと思います。今日の選ばれし記念日はこちら。定番でしたね。


【今日は何の日】- 海開き

夏の海水浴シーズンを前にして、シーズン中の繁盛と安全を祈願し、神主などによる神事を執り行うことが多い。

「山開き」のように特定の日付が限定されているわけではなく、地域によってばらづきがある。温暖な沖縄県などではこれよりも早く3月下旬~4月にかけて行われる。日本一早い海開きは小笠原諸島の父島と母島で元旦に海開きとなる。


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【SS】告ると決めた日

 僕はさとる、高校三年生。来年の進学に向けて余計なことは考えない方がいい時期に差し掛かった。そう今は、高校三年の二学期だ。でも、そうもいかない事情が僕にはある。実は、高校三年生になり新しいクラスで、こころという女の子と出会ってしまったのだ。高校三年の一学期に転校してきた子だった。長くて黒く輝く髪、キュートな笑顔、小さな唇、白い肌、思いやりを感じられる優しい言葉、全てに僕はハートを撃ち抜かれた。そんな可愛い子が転校してきて同じクラスになったのだ。周りを見ると、男子生徒の大半の目が心に注がれている。僕は、そんな周りを見て焦った。みんな心を狙っていると感じたから。絶対に誰にも渡したくない。僕は勝手にそう思い込んでしまった。

 僕は先手必勝とばかりに、心に猛アタックをかけ続けた。教室で話しかけることはもちろん、たまたま帰る方向も一緒だということがわかり、強引に一緒に帰ったりもして、できるだけ長い時間を心の近くにいるように心がけたのだ。そして、六月最後の金曜日の授業が終わったとき、僕は心に告った。

「心、あのさ、大事な話があるんだ」

「なに、どうしたの。急に真面目な顔をして。悟」

 クラスメイトたちは次々と教室から出ていき、心の友達だけがじっとこっちを見て待っている。僕は、構わずに話を続けた。

「僕は、心のことが好きだ。正式に僕と付き合ってくれ」

「ふふ、ばかね。私も好きだったよ、最初から。あのね、明日、私の誕生日なのよ」

「えっ、明日が誕生日。うそ、僕も」

「えー、悟も七月一日が誕生日なの、すっごい偶然。じゃあ、二人で誕生日のお祝いしようか」

「本当に。じゃあ、海に行こう。明日は海開きだし。江ノ島、そうだ江ノ島に行こう。江ノ電に乗って」

「いいわ。じゃあ、お昼に藤沢駅で待ち合わせましょう。それまでにお互いのプレゼントを準備するのよ」

 こうして、僕にとっては夢のような結果となり、誕生日デートの約束までしてしまった。しかし問題はプレゼントである。残念ながら、手元にはお金がほとんどない。必死で思案した結果、一通の手紙に心に対する思いと約束をしたためることにした。これからお互いに大学生となり、社会人として歩み出した後の七月一日に、正式にプロポーズすることを約束すると書いた手紙を渡したのだ。初めてのデートの日になんて重い手紙なんだとも思ったが、そうしなければいけないんだという気持ちに支配されていた。初めてのデートでそんな変な手紙を受け取った心は、その場で封を開け読んでくれた。そして、読み終えると同時に返事が返ってきた。

「わかった。私も悟のプロポーズを待ってる。じゃあ、五年後の七月一日はまた江ノ島デートだね。私からのプレゼントはこれ。私とお揃いの腕時計よ」

 そういってアップルウォッチを僕に渡しながら微笑んでくれた。まるで夢を見ているみたいに思い通りになっていることが信じられないくらいに僕は幸せを感じていた。二人で歩いた江ノ島はまるで天国を散歩しているかのように感じ、繋いだ手の温かさは決して忘れられないものとなった。海開きだからといったけど二人とも水着は持ってきていないので、近くの浜辺でオープンしている海の家を橋の上から眺めながら「今度は水着を持ってこよう」と言いながら幸せな時間を過ごした。

 僕たちは二人とも無事大学に進学することができた。残念ながら同じ大学に通うことはできなかったけど、週一回のデートは続いた。そして、四年後に二人とも卒業して別々の仕事に就いた。社会人になると学生の時のようには時間を合わせることが難しくなり、頻繁に会うことができなかったが、不思議なことに二人の思いは変わらずにいたのである。そして、七月一日がやってきた。

 僕は藤沢の江ノ電乗り場の前で、心を待っていた。なぜか、心は旅行用のキャリーケースを持って現れた。僕は手を振って走っていった。

「やっと、この日が来たね。待ち遠しかったよ。僕の会社での仕事もだいぶ慣れてきたんだ。今日は約束通り、心にプロポーズするよ。僕と結婚してください」

 僕はポケットから指輪を出して、ひざまづいて心に突き出した。周りでは何事が起きているのかと言わんばかりに野次馬が集まり僕たち二人を取り囲んでいたけど、全く気にしなかった。

「ありがとう、悟。こんな私だけどよろしくお願いします」

 周りから大きな拍手が沸き起こった。同時に「おめでとう」という声も沸き起こった。ここでハッと我に帰り、恥ずかしくなったけれど、一応、観客に頭を下げた。

「ねぇ、今日はどうしてそんな旅行用のキャリーケースを持ってきたんだ。まさかこの後どっかに旅行にいくとか?」

「そうよ。今日から私は終わりのない旅行に旅立つのよ。高校三年の時の今日から決めていたのよ。ふふ」

「えっ、どういうこと。だって、さっき、OKしてくれたよね。プロポーズ」

「もう、鈍感ね。だから、今日から悟のマンションに行くって決めてたのよ。当面の着替えだけを持ってきただけだけどね。あっ、今日は水着も持ってきたわよ」

「わーお、そうだったんだね。やったー。じゃあ、海開きの今日は江ノ島で二人で泳いで僕のマンションに一緒に帰ろう」

 こうして、僕と心の生活が始まった。程なくして僕はスーツを身にまとい、心を連れて実家に行き、その後心の実家に挨拶に行った。大学生の時から付き合っていることはお互いの親も知っていたので、手放しで喜んでくれた。なんて幸せなんだろう。まるで夢のような時間だったなとしみじみと感じていたら、それをかき消すような声が聞こえてきた。

「サトル、いつまで寝てるの。学校、また遅刻するわよ。さっさと起きて朝ごはん食べて学校に行きなさい。今日から高校三年生になるんだから、もう少ししっかりしなさい。そんなことじゃ、大学にも受からないわよ」

「はーい。なんかいい夢を見てたのなぁ。あっそうか、今日から高校最後の学年の始まりだったなぁ」

 悟は全て夢だったんだとわかり、がっかりしながらも朝食をとり、学校へ行った。最初のホームルームの時間に先生が転校生を連れてきた。なんと先生の隣には、夢の中で見ていた心が立っていた。


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