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【SS 12月25日】未来を担う水素電池の日

【今日は何の日ショートショート】- 未来を担う水素電池の日

 2020年、一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された比較的新しい記念日である。化石燃料エネルギーから再生可能エネルギーへのトランジションを多くの人に知ってもらうこととそれを実現させたいと願う企業の熱い思いを伝えるための記念日である。「水素電池」の技術や製品、システム開発などの関連企業によって組織される先進エクセルギー・パワー研究会が制定した記念日です。。


【SS】水素爆発

 水素は大きな可能性を秘めている。平和利用と戦争利用の二極化もあるかもしれない。戦争で使うために発展すれば、原爆よりも恐ろしい現実を作り上げてしまうかもしれない。しかし、平和利用であれば、再生可能エネルギーとしての電池利用があり、化石燃料からの脱却を目指せるのかもしれない。そのためには、安価で提供できる仕組みづくりが欠かせない。

 もともと考えられていたのは、空気中の水素を収集しながら発電に利用できないかというものだった。もし実現できれば車などは走っていても止まっていてもエネルギーをチャージできる仕組みを実装することができる。とてつもなく素晴らしいと思われた。しかし、水面下ではガソリンスタンドのオーナーから猛反発をもらうことになった。考えてみれば仕方ないことである。必要なエネルギーの転換点では争いは起こるものだ。それまで得られていた利益がなくなるのだから。

 しかし、そんなことで立ち止まっていたら技術は進歩しない。科学者たちは挙って安全な水素電池を目指して切磋琢磨していた。そしてついに高効率の水素電池を完成させ、世の中に送り出したのだ。しかし、そのことをよく思わない人もいた。そんな人は、水素が一定の温度以上になると危険だということを知りながら、炎による攻撃を幾度となく繰り返していたのである。確かに扱い方を誤ると危険な水素である。関係者の対応は慎重になった。

 そんな時水素を貯蔵しているタンクが何者かによって爆発させられた。近隣数キロにわたり被害が発生してしまった。幸いなことに人への被害はなかった。この事故により、一旦水素を利用した電池の販売が自粛されることになったが、ある時、水素電池の拡大を阻止しては日本の未来が危ういと判断され、水素電池の利用拡大の推進が政府によって再びリードされることになった。一方、従来のマンガン電池やアルカリ電池は徐々に姿を消し、最終的には水素電池だけが残ることになった。

 水素電池はいろいろな大きさの電池に姿を変え、人々の生活に浸透していった。いつしか各家庭の地下には水素電池のバッテリーが埋設され、ソーラーからの充電を実施するようになっていた。

 あるテロリスト集団と思わせるような声明が発表された。

「普及している水素電池が如何に危険な物質であるかということを我々は証明していきたいと思う。これから毎日十件の個人の家で水素電池が爆発するだろう。水素電池を埋設している家庭はしばらく近づかないように気をつけよ」

 この声明を受け、政府は慌てた。すぐさま警察と連携し犯人を特定するように指示した。しかし、どの地域のどこの家が対象になっているかも見当がつかず、時間だけが過ぎ去り、警察の対応チームは焦っていた。

 次の日、誰もいない空き地で大きな爆発がおきた。どうやら水素電池が爆発したらしい。捜査班に緊張が走った。報道機関は挙って水素電池の危険性をフォーカスしてニュースを流した。

「住宅街のそばの空き地の地下に埋設されていた水素電池が何者かによって爆発させられました。水素電池は爆発すると大きなエネルギーを放出しますので、各家庭で管理されている水素電池は毎日点検をお願いします。また、当事件の関係者など詳細が分かり次第お知らせします」

 その後は爆発事件は発生せず平和な日々が過ぎていった。しかし、水素電池を利用している家庭からは心配の声が水素電池の供給会社に寄せられていた。

 数ヶ月経ったある日、ニュースでは住宅の水素電池爆発の犯人逮捕が報じられていた。犯人は、五十代のガソリンスタンドのオーナーだった。よくよく考えて自首してきたようだった。

「地元の信用金庫から借金をして、ガソリンスタンドを今年開業したが、世の中の話題は水素電池に移り、車も電気自動車が増え、売り上げが当初予定の三割しかなくこのままでは借金も返済できないし、生活もできないと考え、水素電池のせいだと八つ当たりしました。申し訳ありません。しかし、私にも生活があったんです。どうしようもなく死んでもいいと思いつつ、どこかに当たりたくなったしまいました。しばらく時間が経ち自分がした行いを反省しました。本当に申し訳ありませんでした」

 世の中の反応は、逮捕前は大ブーイングだったが、逮捕後は同情を寄せる声が多くなっていった。そして、人的被害が出ていないということで、裁判では実刑二年、執行猶予三年の判決が言い渡された。比較的軽い処分が言い渡されたという感じだった。裁判員裁判だった。

 判決が出た後、またしても大きくニュースになる出来事がおきた。水素電池を作っている会社が発表したのだ。

「我々は、今回の事件を起こしたガソリンスタンドのオーナーだった方を我々の会社にスカウトしたいと思います。水素電池が如何に優れているかを最も理解してもらいたい人だと判断したからです。ご本人からも承諾してもらっています」

 世の中のニュースでは美談として取り扱われた。これぞ企業の在り方としてすばらしいと挙って褒め称えた。世の中の流れは水素電池に対しほとんどが好意的になり、化石燃料からの脱却へと加速する動きが始まっていった。日本だけではなく世界中で。

 その頃、水素電池を作っている会社の社長室では、何やら怪しい会話が行われていた。

「上手くいきましたね」

「ああ、君のおかげだよ。水素電池の知名度がイマイチだったからね。世の中に水素電池ありと君が知らしめてくれたおかげで、我が社の売り上げは十倍になったよ。まぁ、すぐにとはいかないが、執行猶予期間が過ぎたら、我が社の役員として取り立てることにするから安心していたまえ」

「ありがとうございます。私もやってもいないことで自主する時はドキドキでしたがこんなに上手くいくとは思いませんでした。我が社の株も鰻登りに上がっていますね。おかげで社内持ち株で大儲けできそうです。社長」

「はっはっは、そうだな。全ては君のおかげだよ。感謝しているよ」

 よく見ると、社長室の隅に置かれている観葉植物の葉っぱの影に盗聴器が仕掛けられていた。家庭用水素電池を爆発させた真犯人が花屋に扮して仕掛けていたのだ。そして、この時の会話を盗聴した真犯人は怒りに震えていた。

「これじゃ、埒が空かないな。人は傷つけたくないから、真夜中に社長室を吹っ飛ばしてやる。隠しカメラと共に爆弾も仕掛けておいて正解だったな。はっはっは」


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