3月12日 世界反サイバー検閲デー 【SS】サイバー攻撃
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 世界反サイバー検閲デー
報道の自由のために活動するNGO「国境なき記者団」(Reporters Without Borders)と国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」(Amnesty International)が2008年(平成20年)に制定した記念日。
英語表記は「World Day Against Cyber Censorship」。この日には中国や中東諸国などで行われている「インターネット検閲」に抗議し、検閲や遮断を行っている国や企業に対し中止の要請が行われる。過去には、中国のYahoo!とGoogleに対して、インターネットの検閲をしないように要請している。
また、これらの国をインターネットの言論の自由を脅かす「インターネットの敵」(Enemies of the Internet)として、そのリストを発表している。2014年(平成26年)の発表では19ヵ国が挙げられ、中国や北朝鮮、イラン、シリア、サウジアラビア、ウズベキスタン、エチオピア、インド、ベトナム、アメリカ、キューバ、イギリス、ロシアなどが含まれている。
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【SS】サイバー攻撃
インターネットの普及は瞬時に伝わる情報網を世界中に確立してしまった。ただし、その内容が正しい情報か間違った情報かは選別されない。受け取り側が判断しなければならないのだ。だんだん「国」という単位が危ぶまれてしまうことにもなってしまう可能性も出てきた。そんな状態を良しとしない国々は、国内に入ってくる情報の制限や削除をする検閲組織を立ち上げ、氾濫する情報の内、国内で伝えている内容と異なる情報が国民まで届くことを阻止し始めた。
その検閲的な活動はさらにエスカレートし、国民の個々人の情報機器端末に集まる情報までも管理しようと試み始めた。当然膨大な量の情報となってしまう。そのために、人工知能の技術を活かし、国として国民へ伝えている内容と異なる内容が入っている情報を探し、削除するとともに端末の保有者を反逆罪に問うということにまで発展してきた。国民は正しい情報がなんなのかということを判断することはできなくなり、国の進む方向についていかざるを得なくなっている。国が国民全体をマインドコントロールしているようなものだ。豊かな正しい生活を人間として送るためのルールとして各国では法律を定めているはずだが、時として国民を束縛し国の安定を図ろうとしている国々も存在しているのが現状だ。
すでに情報社会となっている地球全体では、物理的な戦争行為よりも情報操作のほうが経済に対するダメージや国としての信頼にダメージを与えることができるようになってしまった。国をあげての敵対国へのサイバー攻撃を仕掛け、仮想通貨を強奪したり、フェイクニュースを晒すことで自分たちの国が正しいように見せかけることも日常茶飯事となってしまった。まるで国と国が騙し合いを展開しているような社会になってしまっている。
そんなインターネットの現実に目を背けず、インターネット上で飛び交う誤った情報を意図的に発信している国のコンピュータに対し、攻撃を仕掛けるチームがいつの間にか発足していた。その名はグリーン・ハッカー集団。地球の緑を守るために、正しい情報の伝達と国間の友好に繋げたいというのが目的のようだ。彼らは世界中のどこかに存在しており、メンバー同士も顔を知らない。同じ気持ちを持つものが自然と集まった集団だった。したがってリーダーはいなかった。いや、強いていえば彼らが通常利用している人工知能がリーダーの役割を演じているようだった。次に攻撃しなければならないコンピュータを選択したり、国を特定したりしてくれているのは人工知能が担当していたのだ。
グリーン・ハッカー集団は、ターゲットが決まるとその相手先のコンピュータが発信したインターネット上の情報をくまなく削除して回り、おおかた消し去った時に発信元のコンピュータを攻撃して機能停止に追い込むということを繰り返していた。そうすることが自分たちの理想に一歩近づくと考えていたからだ。
最初の頃は世界中から称賛の声が上がった。戦争を起こす国や内部紛争を起こしている国々が対象となっていたからだ。だが、年月が経つにつれ攻撃対象に変化が現れ始めた。いわゆる先進国と呼ばれる国々が攻撃対象になっているように見え始めていたのだ。先進国もまた情報を隠蔽しねじ曲げているのだろうか。
その真相が徐々に明かされてきた。それまで攻撃対象となっていた国には一切攻撃が発生せず先進国のみにターゲットが絞られ始めたのだ。気が付いたのはホワイト・ハッカー集団だった。自分たちの理想を追い求めて社会貢献しようとしていたグリーン・ハッカー集団が気がつかないところで陰謀は渦巻いていたようである。ホワイト・ハッカー集団は大手企業の利益を守るために活動していたが、ひょんなことからグリーン・ハッカー集団が利用している人工知能コンピュータにたどり着いたのだった。紺屋の白袴とはよく言ったもので、グリーン・ハッカーの頭脳とも言えるコンピュータがいくつかの国の検閲組織から攻撃を受け徐々にウィルスに侵されていたのだった。この事実はグリーン・ハッカー集団に知らされた。
グリーン・ハッカー集団は素直に過ちを認め、ネットを通じて陳謝した。この後は、誤って削除した膨大な情報のリカバリーを約束し、再びインターネットを通した情報の秩序が保たれるように努力するという報告をした。しかしこのことでコンピュータの弱点を認識したコンピューターメーカーは独自のロジックを開発し始めていた。完全なる自己修復機能である。万が一アタックされたら自己防衛をするとともに自己修復し常に学び続ける機能の実装に成功したのだった。
しかし、一部の科学者の中には、そのこと自体をリスクとして考えなければ、とりかえしのつかない事態を招くとして、インターネットの一斉遮断ウィルスを秘密裏に開発し続けていた。個々のコンピュータが生きていたとしても血管であるネットワークそのものが機能停止に陥ればインターネットはダウンするのである。そんなウィルスが全世界に撒かれるXデーはどうやら、年末年始の時期になりそうだという噂がネット上を駆け巡った。
果たして何が真実で何がフェイクなのか。判断はあなた自身に委ねられているのかもしれない。
了
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