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5月22日 サイクリングの日 【SS】風を楽しむ

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】-サイクリングの日

公益財団法人・日本サイクリング協会(Japan Cycling Association:JCA)が、創立45周年記念事業として2009年(平成21年)4月に制定。

人がこぐことで走行する自転車は、CO2などの温室効果ガスや騒音を出さず、自然環境にやさしい乗り物であり、また、健康の維持・増進への効果が期待できる。そんな自転車の積極的活用の推進を図り、サイクリングに対する関心と理解を深めることが目的。

ちなみに5月5日は自転車の日


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【SS】風を楽しむ

 歴史の教科書によると、以前は足でペダルを漕いでその力をチェーンという伝達する鎖のようなものを介して地面に接地した丸い輪っかのようなタイヤと呼ばれるものに動力を伝達し、回転させて前進させることができる移動装置というものがあったらしい。当時の人は自転車と呼んでいたということだ。もう実物に触ったことがある人は誰もいないし、文献もそんなには残ってはいないが、古いデジタル資料としてレースやサイクリングといった情報は入手することはできる。しかし、当時利用されていた材料は現在は入手困難な部品が多いため、一部の過去再現マニア以外には作っている人もいない。

 今は昔の西暦という呼び方では4000年に相当する時代だ。すでに西暦という呼び方も使われなくなり、今では2000年に一旦リセットされた新地球暦で統一されており、省略形でNEC2000年と表記されている。

 今の時代は外気は汚染され、なかなか外に出かけることは困難になっている。もっぱら市街地を覆っているドーム内での生活が中心だ。移動する手段として、至る所に自動運転のソファがあるので、座るだけでどこにでも行ける。もちろん遠出をする時には空中を移動する乗り物を利用することになる。従って、大昔の車や自転車と呼ばれるような乗り物は必要がないし、免許制度というものもない。

 ただ、人々の願望として「自然の風」を感じたいという要望が多数集まり、風を感じられる環境が擬似的に作られ、今では誰でも風を楽しむことができるようになった。サイクリング・ドームと名付けられた新しい生活ドームが作られたのだ。このドームの中は擬似自然環境が実現されている。遠くには海も山も見える。もちろん映像によるものではあるが、人間の目には本物と映るくらい精度が高い。ドームといっても直径が50キロもある巨大な空間なので、普通の人が歩いて端っこまで行くことは不可能に近い。この広い空間で擬似自然を楽しめるようになっている。

 ドーム内の特徴としては風を感じたいという要望を実現するために、歴史の本に乗っていた自転車にそっくりの空中浮遊装置がレンタルできるようになっていることだ。自転車の格好をしている装置にまたがると、一応ペダルはついているが漕ぐ必要はない。ハンドルについているタイマーをセットするだけで、そのタイマーに応じたコースが自動選択され景色を楽しみながらサイクリングできる仕組みになっているのだ。もちろんタイヤのような形状をしたものが取り付けられてはいるが、地上から十センチほど浮かび上がって進むのでタイヤは回転することはない。固定されているだけだ。

 体で風を感じるために、ドーム内に気流が人工的に作られ、場所によってそよ風だったり、前屈みになりそうなくらいの向かい風が当たるようにデザインされている。もちろん、空気自体は常に清浄され続けているので、ウィルスを含め埃などは一切ないクリーンな空気である。ドーム内の景色はその大半が映像で作り出されている。ホログラムを使いあたかも本物のように見えている。そのため、毎日違った景色を楽しめるようになっており、事前にリクエストをしない限り、同じ景色の中を走ることはないようになっている。利用する人間が飽きないようにという配慮なのだ。

 人が生活するドームの中は快適な空間が作られているのだが、その分ドームの外は厳しい環境が広がり、動物が生活できる環境とは程遠い環境となりつつある。しかし、人類は見て見ぬふりをしてドーム内の快適さを追求し続けている。このままでは地球上での生活もそう長く続かないかもしれない。誰かが立ち上がり、現実を直視し改善しなければサイクリングどころではなくなるかもしれないのだ。

 初夏の暖かい日差しを浴びていて暑くなり目が覚めた。今は西暦2023年。どうやら夢を見ていたようだ。遙か未来の夢を。風を楽しみながらのサイクリング途中で河原の土手で休憩のために自転車を止めて、うとうとしてそのまま夢の中に入ってしまったようだった。ふと時計を見ると午後四時を回っている。サイクリングコースをもう一周しようかとも思ったが、土手の周りに落ちている空き缶を拾って帰ることにしようと思い立った。幸いビニール袋も持っている。少しでも綺麗な土手沿いの道にしておきたいと思ったから。


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