2月7日 北方領土の日 【SS】お互いの主張
【今日は何の日】- 北方領土の日
1981年(昭和56年)、日本政府が北方領土の返還運動の推進と、国民の関心と理解を深めることを目的に閣議決定にて制定。北方領土は現在ロシア連邦が実効支配している国後島・択捉島・歯舞諸島・色丹島の4島を指し、記念日の日付は日本(江戸幕府)とロシア(帝政ロシア)で最初に国境の取り決めを行った、1855年(安政元年)の「日露和親条約」の締結日(新暦)に由来している。だが、ロシアは、日本が含まれない国間での違う協定の結果を引き合いにしてロシアの領土だと主張している。先に開拓して生活の基盤を作っていた日本人を全員追い出したことも自国の領土だからと正当化しているようだ。
【SS】お互いの主張
国が違うということは、それぞれの国の中で伝えられる情報が違うということも意味している。そして、国に都合のいい根拠を示せる歴史的な事実を全面に押し出して正当化する。ましてや、その正当化された内容を侵害しようとすれば軍事力でねじ伏せようとする。そんなことを許さないためにも国際法があるのだが、それさえも聞き入れようとはしないのが「国」なのである。つまり国にとって利益になると考えられる解釈を都合よく利用し、国は未来に向けた存続を誇示してしまうのだろう。もちろんリーダー次第かもしれないが。
「国」という大きなまとまりの土地と歴史がそうさせるのだろうかと思っていたが、どうやらそうでも無いらしい。「人間」という種は自分の利益になるかもしれないと判断するとそれを正当化する様な回路を脳内に持っているのかもしれない。そう言えば、ビジネスシーンでも思い当たることがしばしばニュースになることもある。例えば、談合による公共事業の入札だったり、シェアを勝ち取るための一円入札なども例外では無いだろう。それに人の心の弱みにつけこみ多額の寄付金を搾取する様な商法も同様だろう。
◇ ◇ ◇
ある会社では、同業他社と差別化して売り上げを伸ばすために、新しいシステムを構築しようと考え社内プロジェクトを立ち上げることになった。そのために外部の力を借りることを決断し、システム開発に詳しい会社の助けを得て新システムの概要デザインを開始した。システム開発会社はのちの開発プロジェクトを受注するための営業活動という位置付けで対応を始め、エンジニアを無償で送り込み、この会社の社員とともに全体のデザインを詳細に作成していったのである。
その結果、デザインされたシステムは、この会社が持っている情報を整理し直して活用できるような仕組みへの道筋をつけることができていた。開発費用の損益分岐点もその根拠が明確に示され企画書としてまとめられ、社長もこの企画なら投資しても回収できるとともに会社の成長に貢献できると判断した。関わっていたプロジェクトチームは両手をあげて喜んだ。それまで一生懸命議論して企画を作り上げてきた甲斐があったということを。
数日後、このブロジェクトを手伝ったシステム開発会社の担当営業に一本の電話が入ってきた。それは信じられない様な内容だった。
「その折はお世話になりました。ともに作成した企画は社長の心を動かし、描かれている内容に従って開発プロジェクトを進めてくれという指示が出ました。しかし、残念ながらパートナーは御社ではなく、この企画には全く関係しなかった別のメーカーと一緒にプロジェクトを進めなさいと言われてしまいました。申し訳ありません」
「え、いったいなぜ、そんなことが起きてしまったのですか」
「これまで縁があったメーカーが今回我々が作った案をそのまま実現できますといって社長を訪問した様です。そして開発費用は御社が提示している額の三割で請け負いますと宣言したそうなんです。我々が弁解する余地は全くなく、契約まで終了してしまいました。本当に申し訳ありません」
「そんなことがあったのですか。このたった一週間のうちに」
電話を受けたシステム開発会社の担当営業は呆然としたまま、電話を切った。こんなことがまかり通るのかという憤りも感じていた。企画書を完成させるためにエンジニアたちは三ヶ月間お客様の会社に訪問し続け、昼夜を惜しんで議論し企画書にまとめあげたというのに。たった一週間の間の一回のコールで契約をもぎ取られてしまうなんて信じられないことだった。
いろいろと反省することもあった。営業活動と称して企画書作成を無償支援したことが間違っていたのか。他者が虎視眈々と契約だけを取っていってしまう動きに気づかなかったことがいけなかったのか。お客様を信頼し過ぎてしまったのか。営業の頭の中は色んなことがぐるぐると駆け巡っていた。
そして考え続けた結果、一つの結論にたどり着いた。逆の立場にならなくて良かったと。少なくとも企画を一緒に作ったお客様たちとは激しい議論もしたが、最後は一つのチームになることができていた。我々が実施したことは「人」としては間違っていなかったんだと。もし、逆の立場だったら、契約を取った後、とんでもない苦労をしてしまうことになるだろうと思ったのである。心が通わないプロジェクトチームではシステム開発はほぼ失敗するものだと思ったのである。
◇ ◇ ◇
数ヶ月後、システム開発会社の営業は一通のメールを受信した。あの時一緒に苦労して企画を作成したお客様の一人からだった。そろそろシステムのテストにでも入ったのだろうかと思いながらメールを確認した。
『せっかく立派な企画書を一緒に作成していただきましたが、御社に代わって契約したメーカーではスキル不足により、システムとして構築することは困難だということが判明し、開発は頓挫してしまいました。現在、システム開発費用の支払いでメーカーと揉めています。もし御社と一緒に開発ができていればと思うと残念でなりません。私は来月この会社を去ることを決断しました。あの時、一緒に企画を作ってくれたエンジニアの方々にくれぐれもよろしくお伝えください。できれば開発を一緒にしたかったと』
◇ ◇ ◇
トップの決断はともすれば、周りにいる人の心までも傷つけてしまうことになりかねない。目先の利益のみに気を取られてしまうと進む方向を見誤ってしまうのかもしれない。どんなリーダーでも誤った判断をしてしまう時はあるものだ。しかし、それが誤りだったのかどうかは結果が出るまで分からないのかもしれない。もし、今回のケースでも無事にシステム開発が成功していたなら、違った結果になっていたはずだから。そうして結果だけが歴史に刻まれていくのだろう。
了
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