3月27日 オンライン花見の日 【SS】美しい映像
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- オンライン花見の日
東京都渋谷区神南に事務所を置き、ドローンレースやイベントの企画、ドローンを活用した企画・撮影・編集などを行う株式会社ドローンエンターテインメントが制定した。日付は3月27日が「3×9(さくら)=27」の語呂合わせなどで「さくらの日」とされているため同日にした。
日本を代表する花の「桜」を愛でるお花見は大切な日本文化の一つだが、2021年(令和3年)3月時点において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響でお花見をすることが難しくなったことを受けて、オンライン上で桜の映像を通してのお花見「オンライン花見」をすることで、お花見文化を守り、世界中の人にも親しんでもらうことを目的としている。
同社は2019年(平成31年)1月14日に設立された会社で、イベント企画の一つとして日本各地の美しい桜をドローンで撮影する「桜ドローンプロジェクト(Sakura Drone Project)」を実施している。
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【SS】美しい映像
美しい映像を視聴者に届けるためにドローンが大活躍する時代に突入している。少し前までは、ヘリコプターやセスナをチャーターして空撮しなければならず、それなりのコストがかかっていたが、ドローンが利用できることになり格段に空撮は身近なものとなり、多くの映像がネット上やテレビから流れるようになっている。
技術の進歩は凄まじいもので、映像そのものを記録する技術や補正する技術も大幅に進化した。画質は以前と比べ物にならないくらい鮮明になり4K映像の録画も手元のスマートフォンでできるまでになっている。そして少々のブレ画像は自動で補正してくれ、安定して被写体を追いかけた映像に仕上げてもくれる。さらには、顔色が多少陰っていても、明るく健康的な肌色に補正する機能まで付いている。
ドローンを操る会社も最近は仕事が鰻登りになり、日本各地に出かけていくようになった。数年も仕事をしていると同じ場所からの依頼も増えるようになってきた。似たような仕事をする会社が次々と開業し、競争は激しくなり、ただでさえ利益率が薄い仕事だったのに、赤字ギリギリで交渉しないと受注できる案件がなくなってしまうかもしれないと感じた会社があった。
その会社はベンチャーとして起業したフライビューという会社だったが、年々厳しくなる価格競争に疲れ始めていた。ある日の社内会議で経営を立て直すための打開策を検討する会議が開催されていた。
「みんな、社長である僕が不甲斐ないせいで会社経営は厳しくなってしまった。立て直すためのいいアイデアを誰か持っていないだろうか」
「社長、怒らないで聞いていただけますか」
「もちろん」
「私たちの会社はドローンを使ってリアルの映像を撮影し続けてきました。当然、機材の保守費用、交通費、出張費、現地との交渉などコストが多くかかっています。しかし、大手は各地に拠点を持っているので我々がかけるコストの半分もかかっていません。これでは勝てるビジネスは難しいと思います。そこで」
「うん、そこで」
「視点を変えて、一切リアル映像を撮らない仕事に切り替えるというのはどうでしょうか」
「何、リアル映像を撮らない。それでどうやってビジネスをするんだ」
「はい。我々の会社にはこれまでに撮ったリアル映像のストックが大量にあります。それらを掛け合わせることによって、実際には存在しない花だったり風景だったりを作り出すことができます。これからはそんなフェイク映像を楽しんでもらう会社へと方向転換してはどうでしょうか。そうすることで、他社にはない映像を世界にリリースでき、現地に出向く必要もなくなります。大幅にコストは下げられるわけです。そして、広告などに利用できる映像として企業顧客を開拓すれば、失った利益を取り戻せるのではないでしょうか」
「なるほど。蓄積した映像の掛け合わせか。もしかするとそれらを入力にして人工知能に新たな映像を作らせることもできそうだな。うん、面白い」
「どうせなら、映像を作り上げた後、その映像にあった音楽も人工知能に作らせてしまうというのはどうですか。新しい曲ということになり著作権も持つことができます」
「うむ、それもいいアイデアだな。では今保守しているドローンの活用はどうすればいいと思うかな」
「一つのアイデアとしては貸出用として使うことと、そしてもう一つのアイデアとしては、ドローンで撮影する際に特殊なカメラに載せ替えて、撮影と同時に画像編集を自動で実施するようにして、フェイク映像をその場で作り出すようにすると面白いかと思います。それがネット上でリアル映像とフェイク映像を同時上映すればウケそうです」
「なるほど〜。色々とアイデアは出るもんだな。それにしても、面白いアイデアばかりだ。ぜひ方向転換して映像を創造する会社へと変わっていこう。ただし、外に出ることができない人たちのために、範囲は限定するとしてドローンのリアル映像の提供は残したいと思う。それ以外はエンターテイメントのビジネスとして大いに芸術性を追求し拡大したいものだ」
こうしてリアル映像のオンライン提供だけを実施していたフライビューという会社は、人工知能を利用して新しい映像や音楽を創造する会社を目指し、舵を切り直した。この会社は、元々はコロナウィルスの影響で外出を控えるよになった社会へ日本の習慣であるお花見映像をオンラインで届けることを目的として設立した会社だった。しかし、同様のタイミングで参入してきた会社も多くなり、競争が激化してしまったのである。コロナによる規制も緩和方向に向かい、人々は再び外出するようになり、オンラインによる花見情報提供のビジネスにも翳りを感じたフライビューは新しい方向へと向かい直したのだった。果たして新しい船出は成功へと繋がっていくのだろうか。市場開拓の手腕にかかっているのかもしれない。
了
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