7月15日 同窓会の日 【SS】星めぐり
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 同窓会の日 (毎月第3土曜日)
ウェブ同窓会サイト「この指とまれ!」などを運営していた株式会社「ゆびとま」が制定。
日付は第3土曜日が3連休になる確率が高いことから。懐かしい再会と感動の場である同窓会により多くの人に参加してもらうことが目的。
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【SS】星めぐり
地球の人々が太陽系のいろんな惑星に移住し始めてからすでに百年の歳月が流れた。それぞれの惑星の重力の違いも重力制御装置の発明によって、どこの惑星に行っても体感的には困らなくなった。それでも違いは体に出るので三ヶ月程度生活をすると内臓の位置が変化を始めたり、筋肉量が変化したりすることが起きてしまう。そのため、各惑星には他の惑星を訪問した時に困らないように、体の変化を調整するためのトレーニングルームが数多く作られている。利用料は取られないので各惑星の民は必ず一月に一回は利用して体の変化を予防しているのが現状だ。
体の変化を予防している理由の一つには、同窓会の開催という理由が隠されてもいた。各惑星の旅行会社は、惑星間に散らばっている同い年の人たちや同窓生の人たちのために、大々的な同窓会旅行を受付ていた。各惑星の中で実施する同窓会ではなく、それぞれの惑星からどこかの惑星に集まって実施するという惑星を跨いだ旅行を案内していたのである。
旅行会社が計画しているのは、水星、金星、地球、火星、木星、土星のそれぞれで開催するプランを出している。どこで開催しても出発する惑星がどこであっても、料金は均一となっているので、実に参加しやすいプログラムとなっていた。一番人気はやはり地球だった。まだ地球で生活している住民も多くいるのだが、他の惑星に移住した人たちにとっては、なかなか訪れる機会がない。しかし、地球がどう変わったのかを確認したいという気持ちと昔の綺麗な地球を夢見て来てみたいとみんな思っているのは間違いなかった。
最近の地球は人口がピーク時の一割程度になってしまってから、大気汚染や異常気象も少なくなり少しずつではあるが綺麗な緑と水が戻ってきているような感じだ。今年の八月開催のツアーの中に、とある地球の小学校を卒業した人が旅行会社に注文して、地球で開催するプログラムを準備している同窓会があった。幹事役を担当するのは、人の世話を焼くのが大好きな今年六十歳になる健介という人物。そう、今回は還暦の祝いを兼ねた小学校の同窓会だった。声をかけられたメンバーは百人をくだらない。だが、すでに違う世界に行ってしまったものや銀河系の外に行ってしまった者もいて、参加表明したのは五十人ということになっていた。
五十人の還暦対象者が、お盆の日に地球に集った。すでにお盆という行事は過去の慣習となり実施されてはいなかったが、同級生ですでに亡くなってしまった人たちも、お盆なら参加するために帰ってきてくれるかもしれないと、健介はみんなにメッセージしていたのだった。そんな気遣いができるところが、みんなから慕われているところだ。集まったメンバーの大半は地球に住んではいないので、久しぶりの地球の空気と景色を堪能していた。みんなの記憶や知識としての地球は、環境汚染が進みマスクなしでは外の空気も吸い込めないというものだったが、すでに空気は改善され、数百年前の綺麗な空気が蘇っていた。自ずと参加者の顔に笑みが溢れ、昔話にも花が咲き始めていた。同窓会が始まり、健介はステージに立って挨拶をした。
「還暦を迎えるみなさん。今日はようこそ地球に集まってくださいました。そして、我々の目には見えないかもしれないけど、黄泉の国から参加してくれた同級生の諸君。懐かしい顔を見ていってください。今回、開催場所を地球にしたのは意味があります。我々が卒業した小学校はかろうじてこの地球にありました。その時はみんながガスマスクのようなみのを装着して学校に行っていたと思います。でも、今回、外を散歩してわかったと思いますが、地球は復活し始めています。還暦を迎えた我々の残りの人生をもう一度、地球で過ごすことを考えてみませんか。そんなことも伝えたくて地球での開催を計画しました。今日はゆっくりと楽しんでいってください」
健介は同窓会を開催して、もう一度綺麗になりかけている地球に戻ってみんなが気軽に会える距離で生活できればいいなと考えていたようだ。大部分の同級生は賛成したのだが、ほとんどの人が家族がいて、生活基盤がそれぞれの惑星で出来上がっている。そんなことを考えると気持ちとしては参加したいが、家族のことを考えると断念しなければならない思いを抱いている人がほとんどだったのだ。
最初からわかっていたことだった。賢典も例外ではなかった。実は、健介は最愛の妻を去年亡くして、地球に戻ってきていたのだった。しかし周りを見ても友達すらいなくなった地球が寂しかった。それで地球で同窓会を開催することを思いつき、みんなを誘ったのだった。そのことを集まったみんなもわかっていたので、余計に心が痛んだ。だが、せっかくの同窓会である。しんみりしても仕方ない。遠い過去となってしまった小学生の頃のすでに曖昧になってしまった記憶を呼び戻し、楽しくおしゃべりし、久しぶりの地球の食事に舌鼓をうっていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうものだ。楽しかった同窓会も終わりとなり解散する時間がやってきた。亡くなった同級生のために蝋燭も灯していたのだが、その蝋燭が風もないのに大きな炎となり、自然と消えてしまった。同級生は一斉に手を合わせていた。そして、あと何回同窓会ができるのだろうかと心の中で思いながら、そのことを口に出すものはいなかった。そして、それぞれの家族が住む惑星へと帰っていった。健介は全員が宇宙船に乗り込むまで手を振り続けていた。
了
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