3月10日 農山漁村女性の日 【SS】覚醒した女性たち
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 農山漁村女性の日
昔から各地域にある婦人だけの休息日とされる「女人講」などが農閑期の10日であることが多かったということと、農山漁村女性の3つの能力(知恵・技・経験)をトータル(10)に発揮して欲しいという関係者の願いも込められている。農山漁村の各地域における女性の地位・役割の向上、社会生活参加などを目指して制定された。
当初は、農林水産省の婦人・生活課が1988年(昭和63年)に「農山漁村婦人の日」とされたが、1999年(平成11年)に「婦人」を「女性」と言い換え、農林水産省が「農山漁村女性の日」として制定したようだ。同省では、農山漁村の女性たちが果たしている役割を正しく認識すると共に、女性の能力を一層発揮するための環境づくりを目指している。
🌿過去投稿分の一覧はこちら👉 【今日は何の日SS】一覧目次
【SS】覚醒した女たち
とある漁村に、日々海に潜り生計を支えている大勢の海女がいた。男たちは漁に出ると何日も家には帰って来ない。その間、女たちは家を守り、家計を支えるために海に潜っていた。多少のシケの日でも女たちは海に潜って懸命に働いた。
そんな海女の中の一人に恵子という女性がいた。恵子には光春という亭主がいたが、女癖が悪いことで村でも有名だった。酒の席で男たちは、そのことを面白おかしく笑い話にしていたが、恵子にとっては笑い話では済まされない。相手の女性から「だまされた。独身だって言ってたのに」と怒鳴り込まれることもしばしばだった。そんな時決まって光春は家から逃げ出し他の女の家にしけ込んでいたのだ。
幾度となく光春の後始末をさせられた恵子は流石に耐え切れなくなり、海女のリーダーの望美にそのことを打ち明けた。
「望美さん、ちょっと聞いてくれる。私、ずっと我慢してたけどもう限界なの。亭主とは縁を切りたいと思ってるのよ。うちの亭主は女癖が悪くて稼ぎのほとんどは他の女に貢いでるのよ。漁師仲間と飲む時は浮気のことを酒の肴にもしてみんなで楽しんでいるらしいわ。そして、相手に自分が所帯持ちだとわかると雲隠れして、私に後始末をさせるの。子供のために改心してくれるかなと期待していたけれど、もうダメ、限界。別れても仕方ないと思い始めたのよ。どう思う」
望美は激怒して恵子に言った。
「あんたは何でもっと早く言わんの。よう我慢してたね。これは我々海女に対する男どもの挑戦よ。何でも亭主の思い通りになるなんて思ったらとんでもない。海女全員で男ども全員に知らしめないとだめね。恵子の亭主は当然だけど、そのことを酒の肴にして楽しんでいる男たちはみーんな同罪よ。私に任せておきなさい」
恵子は相談してよかったのかちょっと迷ってはいたが、もう後には引けないと腹を括った。覚悟を決めた女は強かった。
その後男たちは再び漁に出かけた。一週間の予定だった。何事もなく漁に出た男たちはいつものように仕事をし、大漁で魚を満載にした船とともに港に戻ってきた。これまでなら、家族が出迎えて大漁を祝いながら水揚げの手伝いもするのが通例だった。しかし、今日の港には女子供の姿がない。まるで誰もいない港に迷い込んだのかと思うほど静かだった。まずは水揚げをしなければ商売にならないので、男たちは自分たちだけで作業を開始した。もちろん不安は感じていたが、一週間分の漁の成果を無駄にはできない。生活がかかっているのだ。
一通り水揚げ処理も終わり、市場の担当者に魚を引き渡し、せりが始まり、料亭やスーパーの仕入れ担当者などが入札していた。漁師たちは自分たちの仕事を片付け、いつもならみんなで行きつけの飲み屋に寄ってからそれぞれの家に帰るのが普通だったのだが、この日は誰も来ていないということが気がかりだったため、全員が家路を急いだ。すると、所帯をもっている男たちの家には、同じメッセージの置き手紙が残してあったのだ。
『あなたたち男漁師が安心して仕事に行けるのは、私たち女が家を守っているから。そして漁の間の生活は海女の収入で賄っていることを知っているでしょう。恵子さんの亭主の振る舞いは、許せません。男たち全員の連帯責任として、私たち海女全員で男たちに抗議することにしました。男たちは話し合って今後どうするかを、男たちの代表者が海女のリーダー望美に連絡をください』
海女たちは、子供たちを連れて隣町の温泉宿に来ていた。男たちが漁から帰ってくる日が土曜日だったので子供達も連れて行くことができたのだった。しかも、都合がいいことに月曜日も祭日だった。二泊三日で女子供だけでもれなく温泉旅行に出ていたのだ。そうとは知らない男たちは慌てふためいて、漁業長の下に集まった。さすがの漁業長も焦っていた。
漁業長は全員の同意をとり、光春に反省文を書かせるとともに、漁師全員が光春の話を面白おかしく酒の肴にしていたことの反省文を書くことにした。光春もこんな大事になるとは思っていなかったらしくシュンとなっていた。しかし自業自得でもあった。漁業長は代表として望美に連絡を入れた。
『男たちはみんな猛省している。面白半分で酒の肴にしたことも反省している。光春に関しては土下座して謝りたいと言っているので、一度だけ機会をやってほしい』
数日後海女と子供たちは街に戻ってきた。女たちの帰りを待っていた男たちが街の入り口で集まっていた。整列し丸坊主になった漁師たちが頭を下げて待っている姿がそこにあった。そして、光春は恵子の前に行って土下座して涙を流しながら誤った。
「恵子、すまん。調子に乗り過ぎてしまった。もう、絶対に女遊びはしない。ここにみんなの前で誓う。だから後一回だけチャンスをくれ。頼む。いや、お願いします。この通りです」
頭を地面に擦り付けるように光春は懇願した。さて、この結末は。。。
恵子と光春がこの後どうなったかは、皆さんのご想像にお任せします。海女たちはなんだかんだ言っても仲間達が大好きなのです。
了
🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集 ← 記念日からの創作SS
いつも読んでいただきありがとうございます。
コメントも気軽に入れていただけるとうれしいです。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉
#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日 #掌編小説 #超短編小説
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。