空に解き放った心 - 第三話 情報収集
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情報収集
こうして、翔との約束の内容を確認できた里香はほっとしてまたしばらくは仕事に集中する時間が経過していった。そうしているうちに、しおりと一緒に仕事をする案件が舞い込んできた。リーダーは翔ではないが、それなりに面白そうな案件だった。いつものように情報を分析して仕事は終了していったが、クライアントが、開発を担当する会社を決定していてコンサルチームからの引き継ぎを依頼されているということを知ったときに、どんなPMなんだろうと思い、引き継ぎの内容を見ていた。その時、里香は、「あれっ、この人自分のいいところを出せていない。しかもちょっとイケメンだ」と思っていた。それから気になってはいたが、どうやらしおりに声を掛けたらしく、「これはまずいな」と思ったがその時はどうすることもできなかった。里香はしおりに近づいて、どんな人かを引き出すことに集中していった。この辺りがデータアナリストとしての行動である。しかし、翔のことは伝えることができない。なんとなく後ろめたさとしおりさんももう少し付き合ってた相手を信じてればよかったのにと思ったが口には出せなかった。プロジェクトの引き継ぎが終了し、しばらく経った頃、里香はしおりに声をかけた。
「しおりさん、もうだいぶ慣れたみたいですね。コンサルの仕事に」
「里香ちゃん、ありがとう。あなたの調査能力に助けられているところが大きいと思うわ。私一人の力ではどうにもならないもの。みんな凄いわね。私も追いつけるように頑張んなきゃ」
「そんなことないですよ。しおりさんって凄いと思いますよ。みんな言ってます」
里香は受け答えするしおりを観察して、この人はやっぱり経営者だわと思っていた。しかし、この時、しおりは里香が気になっていたPMである健二と付き合い始めていたのだ。何となく、それを察知した里香は、少し探りを入れたくなったのである。しかし、自分が気に入っていた男性だということをしおりに勘付かれてはいけない。あくまでもクールに話しかけることに集中した。
「しおりさんは、今付き合っている人はいるんですか。何だか以前より、とっても顔が明るく感じるんですけど。幸せのオーラが出ているみたいですよ」
「あぁ、そうね、最近付き合い始めた人がいるのよ。なんで」
「だって、ちょっと前までは暗い顔だったのが、今はイキイキしてるんですもの。誰だって分かると思いますよ」
「あぁ、あなたは分析が本職だもんね。誤魔化せないわね。そうなの。今は違う会社のPMさんから声を掛けられたのがきっかけで付き合うことになったのよ。お互い、東京で頑張っているから結構話も合うしね」
「わー、素敵ですね。しおりさんって確か元々はPMだったんですよね。だったら尚更そのPMさんのことが理解できるんじゃないですか」
「あら、よく知ってるわね。それもあるけど、なんかすごい純粋で真面目なのよね。それほど収入もないのに時々ショットバーでヘネシーなんか飲んじゃってね。ワインは白しか飲まないし、お肉の時でも白を頼むのよ。ちょっとは譲歩してもいいと思わない。でもそれがいいところかもね、ちょっと物足りないけどいい人よ」
「わー、そんな一途なところっていいじゃないですか。羨ましいです」
「そうかな、そう言われると嬉しいけど、もう少し貪欲になってくれるといいんだけどな」
「えー、しおりさんって結構贅沢なんですね。一生懸命だけじゃダメなんですね」
「それはそうよ。中途半端な人は嫌だわ。やるからには頂点を目指すくらいじゃなきゃ」
「わー、厳しい。私なんか自分のことを思ってくれるだけで満足しちゃいそうです」
里香は、話をしながら思った。この二人は時間と距離を空ければきっと別れるだろうと。そのために自分に何ができるか、社長に何を頼れるのか、そして、PMである健二と自分が接近するするためにはどうすればいいのかといういうシナリオを考えた。もちろん、健二が所属している会社についても個人的に調査して、里香が働いている会社との接点も探った。その結果、意外なことが判明したのだ。健二が働いているシステム開発会社は、翔の会社でコンサルティングした後の案件を多く受注していて、最近は急成長している会社だったのだ。しかも、今後の開発体制のことを考慮して北海道や沖縄に安価な開発拠点を作ることを検討しているということも判明した。里香の頭は急速に回転した。北海道に拠点ができれば、自分も故郷に帰れるし、何よりしおりと健二の距離を作ることができる。さらに何とか北海道の拠点の会社に移ることができれば健二の心を揺さぶって振り向かせることができるかもしれない。それに、そうすることにより、翔の会社とのパイプを強くし利益への貢献も実現でき、自分の思いも遂げることができる。翔としおりも元さやに収まることができるかもしれない。一石三鳥である。これは何としてもうまくやらなければと思った。そのためには社長の力が必要だと感じた。分析をして確信が持てたら、里香は実行に移すのは早かった。翌日に社長のアポを取るために秘書にコンタクトした。そして、スケジュールを調整して社長室に行った。本来なら、会社の外の方がいいのかもしれないが、そこまで気が回らなかった。なにしろ早く話をしたかったのだ。
つづく
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【小説】空に解き放った心
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