1月16日 閻魔賽日 【SS】鬼たちの脱走計画
【今日は何の日】- 閻魔賽日(えんまさいじつ)
仏教では1月16日を「閻魔参り」または「閻魔賽日(えんまさいじつ)」という。地獄の釜の蓋が開いて、鬼も亡者も責め苦から免れ、休む日とされている。奉公人のある家では、正月の行事を終え、この日に「薮入り」といって休暇を与えていた習慣もあった。
【SS】鬼たちの脱走計画
地獄の鬼たちの仕事はとてもハードだ。休みは年二回しかない。一月十六日と七月十六日だ。この年2回だけは地獄での鬼たちの仕事、そう地獄に落ちてきた悪いことをした人間に責苦を強いる仕事はお休みなのである。鬼たちの仕事は二十四時間責め続けなければならないので交代制だ。しかし、この年に二日間だけは全ての仕事から解放される。責められる人間も大変ではあるが鬼の方も大変な肉体労働なのである。
そんな毎日の仕事に嫌気がさしていた鬼たちの集団がいた。鬼たちは密かに地獄からの脱走を計画していた。その数二百体。鬼たちは計画が閻魔大王にバレないように細心の注意を払いながら、日々の仕事をこなしていた。しかし鬼たちには一つだけ不安があった。
人間の体の中には上尸、中尸、下尸、と呼ばれる三尸(さんし)虫がいてなんとか人間の寿命を縮めようと虎視眈々と狙っている。そして、宿主が悪さを働いていると庚申(こうしん)の日に、宿主が眠りにつくと体から抜け出して閻魔様に報告に行くのである。
この三尸虫はなんと鬼の体の中にも住み着いていたのだ。足元をしっかりと固めて盤石にしておきたいと考えた閻魔様は人間だけでなく、鬼たちにも三尸虫を送り込んでいたのだ。
今年最初の庚申の日は、一月二日だった。鬼たちはこの日ばかりは全員が徹夜をした。眠ってしまうと三尸虫が閻魔様に報告に行ってしまうかもしれなかったからだ。一月三日になり、鬼たちは勤務交代をしたが徹夜してしまったためウトウトするものが多発し、仕事に支障をきたし始めていた。おかしいと感じた閻魔様は居眠りしている鬼たちを呼びつけ、鋭い眼光で睨みつけながら、詰問した。
「お前たちは何故にそんなに眠い。昨日は庚申の日だったな。貴様ら、よからぬことを企てていたのではないか。もしそうなら今白状すれば許してやるが、後で分かったら地獄にいる人間と一緒に責苦を味わってもらうことになるぞ」
鬼たちは恐ろしさのあまり、両手を揉みながら口々に謝罪した。
「申し訳ありません。脱走を計画していました。もう二度としません。お許しを」
「よし、正直に白状したな。ではお前たちは片方の目をくり抜くだけで許してやろう」
「ヒェー、そ、そんな閻魔様。お慈悲をお願いします」
「馬鹿者め。ここは地獄じゃ。慈悲などというものは存在しない」
こうして鬼たちの脱走は未然に防止された。閻魔賽日には、今回脱走を企んだ鬼たち以外には休暇が与えられた。人間界では、薮入りということで奉公人たちが顔に笑みを浮かべながら故郷の両親のところに向かった。もし、鬼たちが脱走していたら人間界は大混乱に陥っていたであろう。閻魔様の鋭い感性で混乱は防がれ、今また人間界の悪行が三尸虫によって閻魔様に報告されていた。
三尸虫からの報告を聞きながら、閻魔様はニヤリと笑い言い放った。
「ワッハッハッ、また、地獄も賑やかになりそうだのう。なんと悪行を重ねる人間の多いことか」
了
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