6月29日 星の王子さまの日 【SS】王子様との出会い
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 星の王子さまの日
この日は『星の王子さま』で知られるフランスの作家で飛行士のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900~1944)の誕生日。フランス・リヨンで生まれた。
また、1999年(平成11年)のこの日、神奈川県箱根町に世界で最初の記念館「箱根サン=テグジュペリ 星の王子さまミュージアム」がオープンした。このオープン記念として記念日が設けられた。
※ 箱根にあった星の王子様ミュージアムは2023年3月を持って閉館したようです
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【SS】王子様との出会い
スカーレットはいつも夜になると星空を眺めていた。きっと素敵な王子様が空から現れてくれる日がやってくると信じていた。もう直ぐ十八歳の誕生日。スカーレットはきっとその日に素敵な王子様が目の前に現れてくれるはずだと信じていた。
スカーレットの家はそれほど裕福な家庭ではないが、やさしい両親と弟の四人家族で幸せに暮らしていた。スカーレットの家は大きな通りのカーブになっている場所に面して建っている。王様が城から出てパレードをしたり、数多くの兵士たちが戦争に行って旗を高らかに掲げながら凱旋するときに通る道だ。通りがざわめくと何をやってる時でも、直ぐに家を飛び出し背伸びしながら見物するのが唯一の楽しみだった。そして、その中に素敵な王子様がいるかもしれないと思い、いつも探すのだった。
誕生日を迎えた朝、いつにも増して家の前の通りがざわめいていた。半分は悲鳴とも取れるような声だった。スカーレットは家族に声をかけることも忘れ、勢いよく家の前に飛び出して行った。そこで見た一瞬の光景はまるで想像していない悲惨な状況だった。至る所に人が倒れており、多くの馬や戦車が土埃を上げて走り去っている。その隊列は途切れることがないのかと思うほど続いていた。
敵が侵攻してきたのだと理解した時は遅かった。スカーレットの目の前に、大きな車輪に刃物をつけた戦車がものすごい勢いで向かってきた。何も考える余裕などなかった。スカーレットは遠のく意識の中で綺麗に晴れ渡った空を見ていた。なぜだか青い空以外は目に入ってこない。下の方で悲鳴が聞こえている。次の瞬間、空中に跳ね上げられたスカーレットの華奢な体は勢いよく地面に叩きつけられ、次々と走ってくる戦車の車輪に踏み潰された。あっという間の出来事だった。スカーレットは息絶えた。
スカーレットの父親は、いつもの朝ではないと察知し、家中の窓を閉め子供達の安全を確認しようと子供部屋に向かっていた。そしてスカーレットの姿が見えないことを知り、全身の血の気が引く思いを感じていた。「まさか」と思った。そして、窓の隙間からそっと外を確認し、家の前で血まみれになりぴくりともしないスカーレットの姿を見つけた。しかし、軍隊が過ぎ去るまでは何もできない。ただ祈るだけだった。周りの家の人たちも多くが被害を受けているようだ。軍隊が通り過ぎた後には、おびただしい数の人々が血を流して倒れていた。すかさず父親はスカーレットの亡骸を泣きながら抱きかかえ、自分の家の裏に埋葬し、家族とともに生きるために逃げ出すことを決意し、涙を流しながら急いで国を離れた。
思った通り、城の中まで侵入した敵の軍隊は宮殿に入りすぐさま王様を殺してしまった。国は隣の国の王様によって統合され統治下に入ってしまった。国民に厳しく容赦しない王ということで有名な国王だった。国中が震え上がったのは言うまでもない。
スカーレットは自分の身に起こったことがわからないまま天国へと続く道を歩いていた。途中で綺麗なお花畑を通ている時、目の前に真っ白な衣装で剣を携えている青年と出会った。思わず「王子様だ」とスカーレットは思った。するとその青年は近づき微笑みながら話しかけてきた。
「スカーレット、君をずっと待っていたよ」
「えっ、あの、王子様。私のことをご存知なのですか」
「もちろんさ。君の前世は僕の愛する人だったんだから。その時の名前もスカーレットだったよ。僕はウィリアム。ウィルと呼んでくれていいよ。僕はなんとか転生せずにずっと君を待っていたんだ。神様はいたずら好きで、君だけを転生させてしまったんだよ。君はずっと王子様が現れるのを待っていただろう。でも、君が生きている間は僕は迎えに行けなかったんだ。ただ待つことしかできなかった。そして、君に取っては不幸な出来事が誕生日に襲いかかってしまった。君は亡くなってしまったんだよ」
「あぁ、やっぱり私は死んでしまったのですね」
「心配することはない。これから、二人で過去に戻って転生するんだ。そして今日起きてしまった悲惨な侵略を食い止め、平和な時間を巻き戻すんだ。ただ、過去に戻って転生するということは君の今日までの人間としての存在は消えてしまうということだ。ご両親の記憶からも消えていく。申し訳ないけど」
「なんだか頭が混乱してしまうような内容ですね。でも、私が見たあの光景が無くなるのなら、周りの人たちの悲惨な姿もなくなるのなら、私は喜んでついていきます。だって、私にはウィルという素敵な人ができたのだから」
こうして二人は過去に戻り転生した。その過去とは、隣国から攻められるという情報を得ておきながら何も準備しなかったために、滅ぼされてしまうという過去だった。今回はそのリベンジだ。今度は周到な準備をして敵を退けた。当然、ウィルもスカーレットも死なずに済んだ。そして、未来が変わった。スカーレットのいない家族は敵の攻撃を受けることもなく、大きな通りのカーブになっているところの家で今も楽しそうに三人家族で暮らしている。当たり前だが、家の裏にはスカーレットは埋葬されてはいない。存在が無くなったのだから。
ウィルとスカーレットは、過去ではあるが現世で添い遂げることができ、年老いてしまうまで仲良く城の中で暮らしたそうだ。
了
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