【SS】 街クジラvs山クジラ #シロクマ文芸部
「街クジラの奴ら、最近調子に乗ってんじゃねえか。自分たちが都会に住んでいるからって、俺たち山クジラに上から目線だもんな。一度くらい懲らしめてやろうぜ」
こんなことを山に住んでいるクジラたちが話している。どうやら、久しぶりに街に行ったら街の連中に馬鹿にされてしまったようで、腹を立てているようだ。
ずいぶん昔のことになるが、クジラ族は海の中だけで生活をしていた。それが、巨大に進化したヒレで空を自由に飛び回ることができるようになり、地上でも生活をするようになっていたのだ。その頃には、大きな体も小さくなり、人間からも恐れられることも無くなっていた。人間たちとは不可侵条約協定を結び、貿易によって富を得たクジラたちは街を作って住み始めた。しかし、富を築くことができなかったクジラたちは山に住み自給自足の生活をするようになったのだ。それが、生活資材の仕入れのために、時折山から街に買い物に出かける山クジラたちを街で見かけるたびに、街クジラたちは揶揄って楽しんでいたのだった。
流石に毎回バカにされていると、敵対心まで生まれ、山クジラたちは街クジラたちに喧嘩を仕掛けようと企み始めたのである。街クジラたちは普段はオフィス仕事が多いため、以前の体格を維持できず、ほっそりとした体型のクジラになってしまっていた。ところが山クジラは日々肉体労働に追われていたため、以前よりも一回りほど大きな体格へと成長していた。
遂に我慢できなくなった山クジラたちは数十頭もの大群で空を飛び、街に向かった。驚いたのは街クジラたちである。まともに喧嘩をしても勝てる相手ではないということは一目で分かった。しかし、街クジラはプライドだけは高かった。
「山クジラ諸君、武力に訴えて我々を支配しようとしているのか。もしそうなら、我々は火器を使って応酬することになるぞ。そうなってしまえばお互いにいいことはないぞ」
「おい、街クジラ共、お前たちのそんな考えが気に食わないんだよ。俺たちは元を正せば同じ種なんだぞ。進化の過程で富を得たか否かで住む場所が異なってしまっただけなんだよ。それを自分たちの方が偉そうにするから、山クジラたちは怒ってるんだ。街クジラのリーダーさんよ。人間と仲良くできているお前たちが、なんで同じ種である俺たちを見下すんだよ。態度が改まらないなら、本当に戦争になってしまうんだぞ。馬鹿らしいと思わないのか。それじゃあ、人間と同じになってしまうぞ」
街クジラは山クジラに詰め寄られて、ハッとした。大切なことを忘れてしまうところだった。海にいた時はみんなで助け合っていたが、陸に上がった途端、勘違いをするようになってしまったのかもしれないと反省したのである。どうやら、人間との貿易をすることでお金というものを手にするようになり、悪魔の囁きに耳を貸すようになってしまっていたようだ。我に返った街クジラのリーダーは、山クジラに陳謝するとともに、同じ種同士での差別的発言をしたものに対しては厳しい罰を与えると約束した。
この後、しっかり初心に戻った街クジラたちは山クジラを卑下することもなくなり、仲良く交流するようになっていった。大きな紛争に発展することなく本来どうあるべきかということを思い出した街クジラたちは全員反省していた。また、山クジラも大挙して押し寄せたことを反省し誤った。街クジラたちは、お金を得たことでちょっと偉くなってしまったと勘違いしていたと素直に認めたのだった。お金がもたらす心や態度への影響をクジラたちは認識し、反省したのである。今後は、平和な関係を維持していくだろう。
了
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