見出し画像

4月18日 発明の日 【SS】豊かな生活

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 発明の日

1885年(明治18年)のこの日、現在の「特許法」の前身となる「専売特許条例」が公布され、日本の特許制度が始まった。

1954年(昭和29年)、特許庁と科学技術庁(現:文部科学省)が産業財産権制度の普及・啓発を図ることを目的に「発明の日」を制定。特許法でいう発明とは「自然法則を利用した技術的思想創作のうち高度のもの」とされている。


🌿過去投稿分の一覧はこちら👉 【今日は何の日SS】一覧目次

【SS】豊かな生活

 人はこれまでに多くの発明で暮らしを豊かにしてきた。火薬、羅針盤、活版印刷は三大発明と言われている。確かにこの三大発明は、人類にとって大きな影響を与えた。その後電気の存在が発見されると一気に生活に影響する発明が続き、電話の発明の後は情報伝達の速さにより、世の中で情報の地方格差をなくすことにつながった。電話線はネットワークにも利用されはじめ世界中がネットワークに接続する先駆けを作ることに成功し今日に至っている。最も今では無線が当たり前の世界にまで進化してしまっているが。電化製品も生活の質を向上させた立役者だろう。電球にはじまり、電気掃除機、電気洗濯機、電気炊飯器、電気冷蔵庫、ビデオ、エアコンなど電気が世の中に出た後の進化は凄まじいものがあった。それが今では、どんどん省電力化を目指した製品へと置き換わりつつあリ、過去の素晴らしい発明品の初期の製品は人々の記憶からも消えていっている。同時にAIの台頭も目を見張るものがある。

 現代では、食の安全を求める声も高くなってきている。これは人々の生活が安定してきている証拠でもあるだろう。戦中や戦後の混乱期には食べるものすら不足している時代だった。しかし今やスーパーには豊富に食べるものが所狭しと並んでいる時代になった。消費者はより安全な食を求めて買い物をするように変化してきているのである。一方、柔らかい食材も増え、噛まなくても美味しく味わえる加工品も増えてきた。一昔前はよく噛んで食べることが一般的だったにも関わらず、口に含んだだけで溶けてしまうように柔らかい肉やデザートのケーキなど、人々は徐々に顎を使わくなってきたのである。

 そんな現代に増加したのは、歯周病。そう、口の中の歯茎の病だった。どうしても口の中で咀嚼した時に残るものが増え、余計に歯周病を増加させる要因になっていった。ある発明家は、視点を変えて研究をしていた。柔らかい食べ物を敵視しても仕方がない。そもそも、歯周病菌や虫歯菌と呼ばれている口内に繁殖している雑菌を完全駆除してしまえばいいのではないかと考えたのである。

 この研究者の考え方は一貫していた。生活に便利なものや生活を豊かにするものは今後もっと発明され世の中に出てくることは間違いない。そうであれば、人間の体がそれらの発明を受容できる身体になればいいだけのことであると考えたのだ。この研究者にとってそれは、人間の進化そのものだった。人々は彼のことを進化の研究を真剣に実施しているように見えることから「進研ちゃん」といって揶揄していた。そう、人々は「進研ちゃんは口で屁理屈を言うだけで何も作れないだろう」と思っていたのだ。

 進研ちゃんこと、眞二という研究者は、そんな周囲の言葉は意に介さず、ひたすらに研究に打ち込んでいた。まずは自らが実験台として歯周病になることを目指した。すでに四十歳を迎えていた眞二は、努力しなくても歯周病になっていた。そして自分の歯周病菌のサンプルを採取し、歯周病菌を撲滅できる薬や光などあらゆるもので検証を続けていた。そしてある日、電磁波が有効であることに気づいた。これは彼にとっても盲点だった。なぜ電磁波が歯周病菌に効果があるのかは最初はわからなかった。

 はたと気づいたことがあった。眞二は運動不足解消のためにEMSマッサージ機を使っていた。筋肉が勝手に電気信号によって運動を開始する器具である。眞二は体の中の筋肉を振動させることで余計なものを追い出すことができるのでないかと仮説を立てたのである。電磁波によって歯茎の内側が運動する状態を作り、強い歯茎を再生成することができていたのである。眞二は自分自身の歯茎に三ヶ月間電磁波を当て続けてみた。そして、最も効果的な周波数の電磁波を発見したのだった。

 眞二は喜び勇んで、研究成果を論文にまとめ、数値情報などを詳細に整理し、こともあろうか世界的にメジャーなインプラント素材の開発メーカーに持ち込んだのだった。眞二としては「現在は無くした歯をインプラント化する技術は確立できているが、歯周病を撲滅できて仕舞えばインプラントの需要はなくなるから、この研究の成果はインプラントメーカーにとって最も意味があるだろう」と考え、有効利用してもらいたいと思った行動だった。

 インプラントメーカーは、研究内容を詳細にわたって検証した。そしてその内容が実に綿密に正確に研究され、実現可能であること、有効であることを確認した。そして秘密裏に結論をだした。

「この研究が世に出れば、インプラントメーカーのみならず、歯科医に関係する機材開発メーカーなども影響を受けてしまう。もしかすると歯科医は矯正する為だけの存在になるかもしれない。この研究は絶対に世の中に出してはならない」

 この後、眞二の足取りはパッタリと消えてしまい、眞二の行方を知るものは誰もいなくなっていた。そして十五年後、世の中では歯周病が蔓延し、セール品として売り出されるインプラントが飛ぶように売れる時代に突入していた。

「そういえば、進研ちゃんを見なくなってどのくらい経つかなぁ」

「あぁ、もう十五年は経つんじゃないか。あんまり付き合いもなかったしなぁ」

「やっぱり成果が出なくて夜逃げしたんだろうなぁ」

「多分そうだと思うよ。だって家賃は滞納、電気代も滞納していたって噂だったから」

 そのころインプラントメーカーの郊外にある研究施設で眞二に似た日本人を見かけたという通報がちらほらとSNSを通して入ってくるようになったが真実のほどは誰も知らない。



🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集  ← 記念日からの創作SS


いつも読んでいただきありがとうございます。
コメントも気軽に入れていただけるとうれしいです。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉


#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日 #掌編小説 #超短編小説

いいなと思ったら応援しよう!

松浦 照葉 (てりは) よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。