【SS 1月2日】月ロケットの日
【今日は何の日ショートショート】- 月ロケットの日
1959年(昭和34年)1月2日、ソ連が世界初の月ロケット・ルーニク(ルナ)1号の打ち上げに成功した。この後、ルナ1号は地球と火星の間の人口惑星として周回軌道にのり公転する第一号となった。そして、ルナの開発は続き、世界で初めて月表面への軟着陸まで成功させることとなった。
【SS】打ち上げへの期待
人々の目はすでに宇宙開発に向けられていた。日本においても以前は「ソ連やアメリカの話だろう」くらいにしか捉えられていなかったが、今は積極的に宇宙開発に投資され、民間企業も参加するようになって来た。ただ、残念ながら有人の手前の段階で足踏みしてしまっている状態だ。ついこの前も打ち上げに失敗してしまったニュースが流れていた。
しかし、日本の底力はこんなものではない。ここから奮起した技術者たちは官民一体となって、人類の未来を見据え宇宙へ進出するための研究を加速していった。たどり着いたのは、「ゆるやかに大気圏を通り抜ける」という従来の発想とは真逆の方法だった。これまでは地球の自転の速度を利用し重力を跳ね除けて大気圏を脱出するためのエネルギーを作るため、ロケットエンジンを使っていた。だが、技術者たちは重力に逆らい垂直にゆっくりと地球を離れる方法を模索していたのだ。
たどり着いたアイデアは、ドローン連携である。複数のドローンに引っ張られた一台のドローンを宇宙に放り出す作戦だ。地球の自転に逆らう力を得るため自転と反対方向に移動しようとするドローンの力を借りて遠心力を中和して真っ直ぐ上昇し続けることを考えたのだった。
一回目のテストが実施された。もちろん無人である。前回までと大きく違うのはかかるコストが百分の一くらいだということだ。つまり、九十九回失敗しても一回成功すれば以前のコストとしてトントンだということだ。これには技術者たちも大いにリラックスして取り組むことができることとなり、その結果、一回ごとの品質が向上していた。
そして、打ち上げ本番。正確には打ち上げないので、離陸本番といったところだろうか。五十台のドローンが自転と綱引きするために利用され、一台のドローンとワイヤーで接続して空高く飛び立っていった。成層圏を越えようとするあたりから地球の自転の強い力を見計らったように、五十台のドローンが逆らう方向に飛ぼうとする。何とかうまくいきそうだ。
接続しているワイヤーが外された。そして一台のドローンは宇宙空間へと無事飛び出した。あとは軌道に乗るだけだ。このドローンはプロペラではなく圧縮空気を噴射する装置が付いている。ちょっとだけ噴射することで宇宙空間を移動するのだ。誰もが成功を祝った。地上ではドローンからの鮮明な映像に拍手喝采が起こっていた。その映像を世界中が注目していた。
一人の技術者が申し訳なさそうに監視センターにやって来た。
「大事なことを忘れていました。打ち上げたドローンを地球に帰還させる手段を考えることを忘れていました」
監視センター内は水を打ったように静かになり、中継用のカメラの電源がすべて落とされた。
了
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