4月12日 世界宇宙飛行の日 【SS】神はいなかった
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 世界宇宙飛行の日
1961年(昭和36年)のこの日、世界初の有人宇宙衛星船・ソビエト連邦のヴォストーク1号が打ち上げられた。
この歴史的な出来事は、全人類のための宇宙探査への道を開いた。
この日は国連が制定した国際デーの一つでもある。英語表記は「International Day of Human Space Flight」で、日本語では「国際有人宇宙飛行デー」とされる。2011年(平成23年)4月の国連総会で記念日とすることが採択された。持続可能な開発の目標を達成し、国家と人々の幸福を増進し、平和目的のために宇宙を維持することを目的としている。
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【SS】神はいなかった
人類は遂に宇宙へと飛び立った。昔から宇宙は神様の住んでいる場所として崇拝されていたが、いよいよ、人類は神の領域へと足を踏み入れたのである。宇宙から見た地球は青く見え、ここに神はいなかったと言ったガガーリン。世界で初めて宇宙から地球を見た人だった。と、伝えられてはいるが、実際にはどうだったのだろうか。
世界中の各地では、突然消えてしまう人たちが後を絶たない。しかもかなり昔から発生している。日本で言えば神隠しである。最もその大半は誘拐や人身売買につながっているケースもあるようだが、宇宙人により宇宙に連れ去られて戻ってきたと主張する人も数多く存在しているのも事実だ。もし、宇宙に連れ去られた経験が真実ならば、その人たちは宇宙から地球を見ていたのかもしれない。なんとか確認する術はないものだろうか。そんなことを考えているソラという研究者がいた。彼の名は「宇宙」と書いて「ソラ」と読むのだが、紛らわしいのでソラで統一することにする。ソラは宇宙人と突然の行方不明者の関係を研究していた。
ソラは、過去に遡ることができれば、直接確認もできると思い、研究者仲間のベータ版情報ネットワークを検索していた。ベータ版情報ネットワークというのは各研究者が未発表の研究、つまりベータ版の状況を共有し、意見やアイデアを議論するためのバーチャル環境である。そこで、ちょっと面白い内容を見つけた。
『人の肉体は死と共に消滅してしまうが、意識は我々が存在している次元ではないところで転生を待っている。時に魂と表現しているものと同義語だと思ってもらっていい。我々が生活している三次元の世界と意識だけが存在している次元にチャネルを作ることで過去の人たちと意思疎通を図ることができる。我々研究チームはそのチャネル実現のための周波数を探し当てた。現在は安定して交信するためのシステムを鋭意開発中である』
という内容だった。日付は一年前になっている。場所はシリコンバレー。もしかするとシステムは完成しているかもしれないと思い、連絡を試みた。すると思った通り、システムはすでに完成していた。このシステムをうまく使えば、行方不明になったまま亡くなった人の意識と話ができるかもしれない。ただ一つだけ問題があった。システムと脳波を連携し、意識が集まる次元とのチャネルを作ったあと、正常にそのチャネルが切り離せるかという確認が取れないのだそうだ。システムを利用してくれる被験者が見つからないという。ソラは思わず立候補したくなってしまい、我慢できずに連絡してしまった。
「可能であれば、私が被験者になりシステムを使ってみたいのですが、もし、チャネルを切断することができなくなったらどうなるのですか」
「おお、問い合わせありがとうございます。言いにくいのですが、あなたの意識は意識の次元に行ってしまいますから、抜け殻となった肉体だけが残り、朽ち果てるのを待つだけという状態になります。わかりやすく言えば脳死に近い状態となるということです」
「うっ、それはなかなか一歩踏み出せないようなリスクですね」
「ええ、それで被験者として応募してくれる人が現れないのです。あなたが挑戦してくれるというのなら、あなたに万一のことがあったら、残された家族には十分な遺産が残るようには手配致しますが、いかがでしょうか」
「うーん、いかがでしょうかと言われてもなぁ。命まで賭けるとなると、色々と整理もしなくちゃならないし。うーん、第一怖いしなぁ」
ソラは、言い出してはみたものの、まさか命までかけることになるとは思わなかったので、躊躇してしまった。前には進みたい、確認もしたい、神の存在も聞いてみたい、ガガーリンより前に宇宙に行った人間がいればいろんなことを聞いてみたいという欲求も大きかった。それに意識だけの世界というのにも興味が出てきた。けれども家族と別れる勇気も持ち合わせていない。いや、それは勇気ではなく単なる無謀で無責任な行動だとソラは自分にどこかで言い聞かせている。早い話「死に対する恐怖」に支配されていたのだ。
数日間ソラは考え抜いた。このあと何年か後に安全に意識の世界と繋がることができるようになれば、他の誰かによって真実が追求されるかもしれない。そうなるとソラの研究は終了させられる可能性もある。ソラには幸いにも妻と子供もいないし両親もすでに他界している。二十年間研究してきたことの解を得られるのなら命を賭けてもいいのかもしれないと徐々に思い始め、アメリカに渡り、被験者としての誓約書にサインをした。
ソラは、意識の次元へ自分の意識を接続し、過去に亡くなった人たちとの交信を可能にするというシステムの前にいた。ヘルメットのような装置を頭に被ると、システムのスイッチが入れられた。低い低周波のような音が聞こえたと思った瞬間、見えていたものが何も見えなくなり、宇宙空間に放り出されたような感覚に落ちていった。周りには、無数の意識みたいな存在が感じられた。そんな中、コンタクトを取りたい意識を探していると、なんとも言えない暖かさを持った「何か」を感じた。そして、意識の中でその「何か」はソラに話しかけてきた。
「あなたは、まだ此処に来てはいけません。早々に元の世界に帰りなさい。私は、あなたたちが神と呼んでいる存在です。あなたたちが住んでいる地球からは遥か遠くの違う次元に住んでいますが、こうして意識の世界では共につながって生活を営んでいます。あなたの潜在意識の中に私の記憶を植え込んでおきますが、他の意識との交信は遮断させていただきます。なぜなら此処にいる意識は人間だけではないからです。異なる次元を脅かしてはなりません。あなたが戻った後は、此処とのチャネルはつながらないようにしてしまいます」
そう言われた瞬間、強烈な光を感じ、意識の次元とつながっていたチャネルは切れ、ソラは現在に戻ってきた。同時にシステムはエラーを起こし二度と起動することはなかった。システムの周りにいた研究者たちは私に尋ねてきた。
「何があったのですか? 向こう側でのことを教えてください」
「あぁ、意識の次元に入る瞬間に引き戻されたので何もわかりません。残念です」
「引き戻された? そんなバカな。我々の研究は正しかったはずなのに。なぜ入れなかったんだ」
システムの研究者たちは頭を抱えていたが、ソラは全く何も知らないとしか言わなかった。言うべきではないと潜在意識の中で判断していた。ソラは行ってはならない所に行ってしまったんだと自分に言い聞かせ、今後の研究内容の変更を考えていた。
『我々が考えているような神はいない。しかし、宇宙人は明らかに存在していて異なる次元を支配できる力を持っている。我々は意識の世界だけではなく、この世界でも宇宙の脅威に対応できるようになっておかなければならない。私は過去の研究にこだわりすぎていたんだ。未来に向けて宇宙への対応方法を研究すべきだったんだ』
ソラはそう決意して、帰国するためサンノゼから飛行機に乗った。ソラを乗せた旅客機は成田に到着する前に忽然と姿を消した。まるで神隠しにあったように。
了
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