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【SS 1月14日】左義長の日

【今日は何の日ショートショート】- 左義長の日

 「左義長(さぎちょう)」は、「小正月(こしょうがつ)」に行われる火祭りの行事であり、14日か15日に行われる神事である。地方によっては『どんど焼き』などと呼ばれている。路傍の神「道祖神」の祭りとされる地域が多いようだ。
 田んぼに刈り取った後の藁などを積み上げ火をつけて、しめ飾りを持ち寄って焼き、炎が大きくなるとその年の病気がなくなると言われ、書き初めを焼くと字が上手くなると言われている。


【SS】火の浄化

 神世の昔から炎で不浄なものを焼き尽くすことで浄化することができると信じられていた。ゆえに火は神聖なものとして扱われることが多く、神事には欠かせないものとなった。一方、水も同様に汚れたものを洗い流すと言うことで大切にされてきた。相反する火と水ではあるが、共に事あるごとに注目されている。

 昔、ある村では玄関や窓、裏口に至るまで、家の中と外を出入りできる場所の全てにお札を貼っていた。もれなく全ての家に貼ってあった。空き家になっている家にまでも貼ってあり、村に出入りする道路にも門があり、そこにも同じお札が貼られていたのである。ただし、村外れに建てられている藁でできた小屋だけにはお札が貼ってなかった。

 お札が貼ってない家には悪霊が棲みつき、住んでいるものに対して取り憑いてしまい、その家は断絶してしまうと言う言い伝えがあった。実際、今空き家になっている家がそうだったらしい。村中では三軒存在している。そんな目に遭わないためにお札を毎年貼り替えているのだそうだ。にもかかわらず毎月どこかの家では盗難が発生していた。これもお札によって入り込んで住み着くことができなくなった悪霊の仕業に違いないと噂されていた。

 毎年発生する悪霊を捕まえて退治するために、あえてお札を貼らない藁の家を一軒建て、悪霊を呼び込んでいるのだそうだ。そして、正月の14日になったら村人は、村中のお札を貼り替えて、古いお札を持って藁の家の前に集まり、一斉に火をつけるのだ。その火柱の高さは入り込んだ悪霊の数に比例して高くなる。今年は高さ十五メートルにまで達していた。かなりの悪霊が入り込んでいたようだ。しかし、古いお札と共に燃え上がった火は神聖な力を持ち、青白い炎となって藁の家もろとも入り込んだ悪霊を完全に浄化することができていた。そして鎮火したあと、川から汲んだ綺麗な水で燃えた後を清めていた。これは残火が風によって他の家に燃え移らないようにすると言う行為も含まれていた。

 こんな習慣が何百年もの間続けられてきた。そして例外なく今年も実施された。しかし、今年は藁の家に火をつけても激しい炎にはならなかった。そのことで人々は安心して口々につぶやいた。

「ついに悪霊はいなくなったようだ」

 しかし事実は違った。小さな窓一箇所にお札を貼り忘れていた老夫婦が暮らす家があり、悪霊はそこに入り込んでいたのだった。藁の家を燃やす時には必ず顔を見せる老夫婦だっただけに、村人は不思議に思い、老夫婦の家を訪ねてみた。村人が老夫婦の家に近づいた途端、老夫婦の家は激しい青白い炎に包まれた。その炎の勢いは天まで届くかのように凄まじく近づくことさえできなかった。そしてその火の中から一枚のお札がひらひらと燃える事なく家の外に飛んできて一人の村人が拾い上げた。

 お札の裏には老夫婦の最後の言葉が書かれていた。

「これまで人様の物を盗んで生きてきました。申し訳ありません。しかし、もう体も動かず悪いことすらできません。これまでの悪行を悔いてせめてもの償いに悪霊と共にこの身を浄化します。申し訳ありませんでした」

 そういえば、毎月どこかの家で盗難が発生していたということを村人たちは囁き合った。しかし、骨すらも残らず焼けてしまう凄まじい業火による最後を見た村人たちは一様に手を合わせ成仏することを祈った。そして、焼け跡には水がかけられ囲いをして浄化された神聖な場所として後世に残した。いつしかその場所には一本の楠が植樹され大木に育ち、隣にはお寺が造られ飛んできたお札に対し毎年供養が行われるようになっている。それ以来、藁の家が激しく燃え盛ることは無くなったと言うことだ。



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