5月4日 国際消防士の日 【SS】心の火
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 国際消防士の日
消防士の守護聖人である聖フロリアヌスの聖名祝日。英語表記は「International Firefighters' Day:IFFD」。
もともとヨーロッパの多くの国では聖フロリアヌスにちなんで「消防士の日」とされていたが、1998年(平成10年)12月に起きたオーストラリア・リントンの山火事で、急に風向きが変わり5名の消防士が命を落としたことを将来の教訓とするために、「国際消防士の日」が制定された。
この日は人々の安全を守るために犠牲となった消防士を追悼する日であり、また、消防士や消防組織の活動やその役割について再認識するための日である。
🌿過去投稿分の一覧はこちら👉 【今日は何の日SS】一覧目次
【SS】心の火
発生した火事に対して消火活動を行う消防士は、危険な炎に立ち向かい消火させることを日々実施している。また、火災現場での人命救助活動は時間との戦いであり、消防士にのしかかるプレッシャーは計り知れない。その勇気と行動のおかげで数えきれない命が救われているのだ。そんな活動を支えているのは日々の訓練の賜物なのであろう。厳しい訓練を耐え抜いているからこそ、一分一秒を争う火災現場でも的確な行動ができるのではないだろうか。
世の中で発生している「火」は実は目に見える火災だけではない。人々の心の中でも燃え盛る炎が存在しているのだ。心の中の炎は二種類に分類される。ひとつは「やる気の炎」と呼ばれているもの。これは人を前向きな行動に駆り立てて、心身を活発化させてくれるので、人々の成長にプラスに作用してくれる。最も、燃えすぎる「やる気の炎」だとやる気ばかりが先行し、燃え尽きてしまうこともあり要注意ではある。もう一つは真逆の「恨みの炎」と呼ばれているもの。これは人の心を閉ざし、そのエネルギーを間違った形で実行してしまうことにつながる。そう、関わる人を傷つけてしまう行為に走ってしまうのだ。
そこで心のカウンセリングの専門家や脳神経外科医、そしてITのプロが密かに集まり、人の心の中の炎の研究を始めた。最初は炎を見える化することの研究開発が始まった。これは心の中の炎を実際の炎の映像で表示する仕組みだ。「やる気の炎」は真っ赤に表示され、「恨みの炎」は青白い炎で表示される。さらにその強さは炎の大きさで表示される仕組みを開発していた。どうやらプロトタイプが出来上がったようだ。早速研究チームメンバーで試されようとしている。開発リーダーである京介がプロジェクトリーダーとして仕切っていた。
「チームの皆さん、やっと心の炎をパソコンの画面上に表示するシステムができました。つきましては、皆さんが実験台となって検証したいと思います。ご協力願えますか。じゃあ、まず最初はカウンセラーの艶子さんからお願いします。この帽子を頭にかぶってください」
京介は帽子の形をした電極を艶子に被ってもらった。帽子とパソコンは多くの導線で接続されている。途中に何やら箱みたいなものがあるがきっとここで信号を処理するのだろう。いよいよ、アプリが起動された。その瞬間パソコンの画面には、小さな赤い炎が表示された。一斉にみんなが声を上げた。
「やる気、少なっ」
「だって、もう疲れちゃってるからやる気なんて萎えてしまったわよ」
続いて、脳神経外科医の健一が実験台になった。顔色が悪く、かなり疲れているようだ。健一が頭のどこから、どの程度の電気が出力されるかという重要なデータを整理してくれたのだ。なので数日寝ていない。夜中にはぶつぶつ言いながらデータ整理をしていたようだ。アプリが再起動され、今度は大きな青白い炎が表示された。
「うわっ、健一先生。危ない状況ですよ。このままだと他人を傷つけてしまうかもしれませんね。もし、差し支えなければ、恨みの矛先が誰だか教えていただけますか」
「ああ、いいよ。ここにいる私以外の全員だな。人のことをこき使いやがって」
「うわー、そんな〜。そんなに怒ってたんですかー。気づきませんでした。申し訳ありません」
そう言って京介は慌てて、アプリの消火機能を作動させた。するとそれまでメラメラと燃え上がっていた青白い炎が次第に小さくなり、やがて消えてしまった。すると健一の顔つきは穏やかになり、怒りが消えていった。
「お、なんだかイライラしてたことが嘘みたいに無くなったぞ。大成功だな」
メンバー全員でシステム開発の成功を祝い、翌日から次のステップに移っていった。現在稼働確認できたシステムをスマホで使えるように移植し、誰でも利用できるようにしたのだった。センサーも小型化し直接装着せずに離れていても検知する装置に変更した。準備は整った。この後は「恨みの炎消火隊」が結成され、まずは都市部で実験が始まった。最初のターゲットは新宿だ。いろんな人たちが集まり酔っ払いも多いし、家出した若い人も多い。この地域をパトロールして、恨みの炎を毎日消火する活動を続けた。そして三ヶ月が経過した。夜中に集まっていた若者の数は目を見張るほど少なくなり、事件の数も急減した。手応えを感じた恨みの炎消火隊は、さらに活動を継続し一年が経過した。この地区での事件はほぼ発生しなくなった。それどころか路上に放置されがちだったゴミも無くなっていき、綺麗な街へと生まれ変わったのだ。
新宿での効果を確認し、その内容を詳細な報告書にまとめた後「恨みの炎消火隊」は、政府中枢部に秘密裏に報告書を提出した。だがその報告書は一部の政治家によって闇に葬られてしまったのだ。どうやら一部の政治家にとっては不都合が起きるようだった。それを知った「恨みの炎消火隊」のメンバーは全員が心の中で青白い炎が大きく燃え盛るのを感じてしまった。隊員は涙を流しながら、お互いの恨みの炎を消し去り、何事もなかったかのようにいつもの日常に戻っていった。
こうしていつしか、研究予算も底をつき「恨みの炎消火隊」の活動が存続できなくなり、解散に追い込まれてしまった。しかし、ただ一人、青白い炎を心の中で再燃させた人物がいた。それは開発リーダーだった京介だった。京介は何としてももう一度「恨みの炎消火隊」を再結成させなければならないと強く信じ、無所属ながら議員として立候補したのである。道のりは長そうだが、もはや京介に運命を託すしかない。ただ、京介の心の中で燃え盛る青白い炎が気がかりではあるのだが。
了
🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集 ← 記念日からの創作SSマガジン
↓↓↓ 文書で一覧になっている目次はこちらです ↓↓↓
いつも読んでいただきありがとうございます。
コメントも気軽に入れていただけるとうれしいです。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉
#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日 #掌編小説 #超短編小説
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。