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6月26日 雷記念日 【SS】追ってくる雷

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 雷記念日

930年(延長8年)のこの日(旧暦)、平安京の清涼殿に落雷があり、大納言の藤原清貫(ふじわら の きよつら)が亡くなった。
平安京では長い間日照りが続き、公卿たちが清涼殿に集まり雨乞いを行っていた時の出来事だった。

この落雷は政治的な策略によって京の都から太宰府に左遷され、そこで亡くなった菅原道真(すがわら の みちざね)の祟り(たたり)であると信じられ、道真の学者としての名誉を回復した。また、これにより菅原道真は雷の神「天神」と同一視されるようになり、「天神=学問の神」として菅原道真が祀られるきっかけとなった日である。


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【SS】追ってくる雷

 俄かに空が暗くなり、あっという間に一面を覆い尽くしたかと思えば、けたたましく音を立ててひどい雨が降ってきた。これほどの豪雨は経験したことがない。全てを流してしまいそうな勢いである。そんな悪天候の中、暗闇に紛れて悪事を働くものがいた。兄貴と呼ばれる逃げ足の早い駿夫はやおと弟分で怖がりの静生しずおの二人組だ。

「これだけ強い雨なら多少物音がしても誰も気づかないな。全く、我々の商売には有り難い天気だぜ。おい、準備はいいか」

「兄貴、準備はいいんですが、今日はちょっと酷すぎじゃないですか、雨が」

「バカやろう、だからいいんじゃないか。こんな時に外に出るやつなんて雷様ぐらいのモンだよ」

「そんなもんスかねぇ、なんか、ちょっとヤバすぎる天気のような気がして怖いっす」

「ばっかやろう、泥棒が怖がってどうすんだ、いくぞ」

 豪雨の中、スウェットスーツに身を包んだ二人組の泥棒は、照明が付いていない裕福そうな大きな家を見つけると裏に周り、風呂場の窓や洗面所の窓を確認した。風呂場の窓には鍵はかかっていないが格子が付いていたのでパス。隣の洗面所の窓は鍵がかかっていないし体が通れる程度の大きさの窓があった。二人の泥棒は、小さめの窓に順番に捻りながら体を押し込み、家の中に入った。迷うことなく金庫を探すために2階の寝室らしき部屋を探した。予測は的中。しかも手提げ金庫なのでそのまま持ち去ることにした。家を出る時に入ってきたところから出る必要はない。二人の泥棒は、キッチン横の扉から外に出て裏通りを右に曲がって逃げ始めた時、雷がものすごい音を立てて二人の後ろに落ちてきた。歩道の柵になっている部分に落ちたようだった。

ゴロゴロ、ドーン。

「うわ〜、びっくりしたなぁ。手すりに手を置いてたら感電してたな、おい、大丈夫だったか、静生」

「はい、大丈夫です。やっぱり今日はやめといた方が良かったんじゃないですか」


 その頃、雲の上ではニヤニヤしながら太鼓を叩いている雷様の親子がいた。この豪雨を隠れ蓑にして悪事を働こうとしている二人組をたまたま見つけたのだった。そこで、雷様は少し懲らしめてやろうと思い、雷を制御して落とし始めた。

「息子よ、よく見ておきなさい。地上では、人のものを盗んで持っていこうとしている悪い男たちがいるだろう。あの男たちに盗んだものを返させるからよく見ておきなさい」

「はーい。お父さんはやっぱりすごいね。あの悪い人たちに直接雷を当ててしまえばいいのに」

「ははは、どんなに悪い人でも、少しはいい心も持っているはずだから、いき過ぎた罰を与えてはいけないんだよ。それに、人間は人間の世界で罰を与えないとね」


 泥棒の二人は手提げ金庫を持って交差点に向かって走った。交差点に辿り着いて、渡ろうとした時、行手を阻むようにまた雷が落ちてきた。驚いた二人は、交差点の信号が青になっている右手の方の横断歩道を無意識のうちに渡っていた。そして渡り切った時、またしても左手に雷が落ちてきた。二人は避けるように右に曲がり、豪雨の中を必死に走った。当たり前だが、通行人は誰もいないし雷の音も豪雨にかき消されている。二人は、もしここで雷に打たれて死んでも当分見つけてもらえないかもしれないと思い怖くなっていた。駿夫は足の遅い静生を気遣うようにゆっくりと走っている。すると正面からライトを照らしながら巡回している警官二人が近づいてくる。

「おい、静生。まずい、おまわりだ。右に曲がれ」

「兄貴、怖いよー。あれ、ここ、さっき盗みに入った家ですよ」

「何、あ、本当だ。まさか、雷に追い立てられて戻ってきてしまったのか。そんなことがあるのか。しかし、まずいな、おまわりも来ているし。仕方ない、静生、金庫をキッチンのドアを開けて中に戻してこい。そうすればおまわりと出会っても大丈夫だ」

「え、兄貴。稼ぎを諦めるんですか」

「色々考えている余裕はない。早く返してこい」

 こうして泥棒二人組は、持ち去った金庫を自分たちが逃げる時に出てきたキッチンのドアを開け、そっと金庫を押し込んでドアを閉めた。そして、何食わぬ顔で、表の道路に出て何にもないような顔をして歩き始めた。


 これを見ていた雷様の親子は、満足そうに微笑みながら話していた。

「お父さん、すごーい。あの悪い人たち、盗んだものを返したよ」

「うまくいったな。これであとは、お巡りさんが話しかけてきっと捕まえてくれるだろうからお父さんの役目は終わりだ。息子よ。お前も早く雷の制御の仕方を覚えるんだぞ」


 豪雨の中で巡回していた警官は、実は近所からの通報を受けて豪雨にもかかわらず巡回していたのだ。そして、雨の中を平然として歩いている二人を呼び止め、職務質問を始めた。

「こんな危険な豪雨の中、一体何をされてるのですか」

「いや、別に。雨がひどいから川は大丈夫かなと思って様子みようかなと出てきました」

「もしかして下に来ているのはウェットスーツじゃないですか」

「なんでもないっすよ。ねぇ兄貴。俺たちはサーフィンするんです」

 二人の警官はこの男たちの身柄を拘束し交番に連れて行った。二人の男たちの上着の内側には、小道具がびっしりと入っているのを確認し警官はこの二人を緊急逮捕した。手錠をかけられると静生はパニックになってしまい、口を滑らせ窃盗の現行犯として再逮捕された。

「おまわりさん、俺たちは、何も盗んでません。盗んだ金庫はキッチンの横のドアから返しておきましたから。俺たちは何も盗んで持ってきてません。無実です」

 このあと、県警に連携され現場となった一軒家に警官が行き、侵入の跡を確認したあと、金庫についた指紋も採取され、泥棒二人は、家宅侵入と窃盗の罪で書類送検されることになった。その時、静生はたまらず警官に質問したそうだ。

「あのう、雷を落として俺たちが侵入した家に戻るように仕向けたのは警察の新しいテクノロジーですか」


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