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2月15日 次に行こうの日 【SS】壁の向こう側

【今日は何の日】- 次に行こうの日

東京都世田谷区に東京本校がある日本最大級の音楽学校・音楽専門学校「国立音楽院」(くにたちおんがくいん)を運営する株式会社国立音楽院が制定した日で、次を2、行こうを15で解釈した語呂合わせの日である。

なかなか学校に馴染めない子供たちが、新たな一歩を踏み出すきっかけになればということが目的で制定された。


【SS】壁の向こう側

 目の前に大きな壁が立ちはだかっている。向こう側に行きたいけれど、登るのが怖い。でも、壁の向こう側の景色は気になる。周りに聞いても言ったことはないから知らないという。そう言われると余計に言ってみたい衝動と、いくのが怖いという気持ちがぶつかり合う。

 かなり以前のこと、この街は外敵から住民を守るために高さ五十メートルほどの壁を街の周りに張り巡らせた。当時は、隣の国から攻めてくる軍隊や動物の襲来を防ぐためとして作られたようだ。そして、その後数百年に渡り、門の無い壁は外界との交流を遮断し続けていた。すでに攻め込もうとする国もいなくなっていたが、壁に阻まれた国ということで周りの国は国交をしようとも思わなかったようだ。かくして、壁に囲まれた国は、完全に世界から忘れられた国となってしまっていた。

 僕は、どうしても自分の好奇心に打ち勝つことができなかった。何としても壁の向こう側に行ってみたいという気持ちの方が日に日に大きくなっていったのだ。それを実現するために、まずは、情報を集めることにした。

 一番最初は経験豊富な人に聞けば何かわかるかもしれないと思い、年寄りに聞いたところ、壁の向こうは悪魔が支配している土地だから、出た途端に魂を抜き取られてしまうらしいと教えてくれた。そんなことはゴメンだが、話してくれた年寄りも壁の向こうに行ったことはなく、代々伝えられたことを頑なに守り続けているだけのようだった。しかし、現代において本当に悪魔なんているのだろうか。

 次に、占い師のところにも行ってみて聞いてみた。占い師によれば、過去に壁を超えて戻ってきたものはいないそうだ。だから行くべきではないと言う。しかし、よく考えてみれば、壁の向こう側が楽園だったとしたら、敢えて戻ってくるものはいないだろう。占い師の言葉もまた信用ならなかった。

 さらに警備隊のところを尋ねてみた。警備隊は壁の向こう側には何度か行った経験を持っている。最も信頼できる情報を得られるかもしれないと思い聞いてみた。壁の向こうには何があるのかと。警備隊の答えは単純だった。「何もない。ただ、どこまでも続く森があるだけだ」どうやら警備隊は、壁の向こう側には行ったことがあるものの、壁から離れたことはなかったようだ。

 いろんな人に聞いても結局壁の向こう側のことはよくわからない。それに、なぜ今だに門の無い壁に囲まれているのかもわからない。でもきっと壁の向こうには僕が知らない世界があるはずだ。僕はそれを見てみたい。その願望が日に日に強くなっていった。

 ある日、仲のいい友達を集めて壁の向こう側に行ってみないかと誘ってみた。しかし、親友だと思っている仲間でさえも、躊躇していこうとはしない。みんな見たことがない世界を恐れているようだった。壁の向こうを知らないくせに。僕はだんだん腹が立ってきた。見たことがないから行きたいのに、みんなは見たことがないところには行きたくないと言う。どうしても納得いかなかった。僕の心の中の好奇心は躊躇することなく、行ってみようよと訴える。後悔したまま年を取るより、失敗してもいいから自分の目で確認したほうが多分幸せだと感じていた。

 ついに僕は決心した。壁の上に登り太陽に向かって飛んで行くことを。そのために壁の上から飛び立つためのグライダーを必死になって作った。そして、高さが五十メートルはある壁を懸命に昇った。不思議と壁に登ることを止めるものは誰一人としていなかった。それどころか、たくさんの人が集まり見守ってくれた。もしかすると、みんなは僕の行動に期待をしていたのかもしれない。自分ではできないから、僕に一縷の希望を託していたのかもしれない。

 日が傾きかける頃、僕は壁の上に立っていた。グライダーを組み立て準備完了。壁の内側には、すごい数の人が集まって僕を見ていた。僕は手を振った。そして、言った。

「みんなの代わりに壁の向こう側の世界を見てくるよ。そして、必ず帰って来てみんなに教えてあげる。どんな世界だったのかを」

 意を決して僕は飛んだ。まだ見ぬ世界を見るために。僕の心は昂っていた。そして、壁の上から見ていたどこまでも続く森の上をどこまでもどこまでも飛んでいった。やがて沈みゆく太陽に吸い込まれるように、僕が乗ったグライダーは夕日に向かって飛び続けた。誰も見たことがない世界を見るために。


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