【SS】 どうして #シロクマ文芸部
恋は猫が持ち去ってしまった。二人に一体何が起きたのだろうか。
同棲し始めてから半年が過ぎた頃、二人一緒に生活するということに慣れ、お互いが同じ空間にいることが自然だと受け止められるようになっていた。
男性の名は、和洋、女性の名は麗という二十五歳の二人だった。二人は、たまたまペットショップで出会ったのが縁で付き合い始め、いつしか同棲するようになっていた。和洋はどちらかといえば犬派、麗は完全に猫派で犬嫌いだった。そんな二人は、アパートの制約上ペット禁止だったため、時折ペットショップを覗いて癒しを求めていたのだった。
二人はマンションに引っ越す費用を一緒に貯めようということになり同棲を始めた。貯金は麗の担当、生活費は和洋の担当だった。麗は倹約家で給与のほとんどを投資に回して資産を増やしていた。一方、和洋は麗が貯蓄しているという安心感からか給料は毎月綺麗に使い切っていた。二人の食費はもちろん麗の化粧品や服代なども惜しみなく負担していた。麗より少し多い給料だということも和洋の自尊心を増長させ生活費の全ての負担を請け負っていたようだ。
同棲して一年が経過した頃、麗は定期的に通っているペットショップで衝撃的な出会いをした。一見なんの変哲もない猫だったが、その愛くるしい目を見て、一目で好きになってしまったのだ。まるで一瞬で恋に落ちたようだった。麗はその子が誰かに買われてはまずいとその場で手付金を支払ってしまった。そのあとは、怒涛の如く麗の猫と一緒の生活に向けての行動が始まった。まずはペット飼育可能マンションを探し即契約。同棲していたアパートから麗は自分の荷物を運び出し、新しいマンションへと移動した。そしてミィと名付けたネコとの生活の場ができた。完全にミィちゃんに恋してしまったのだ。
麗は仕事を終えた和洋がアパートに帰ってくるのを手持ち無沙汰で待っていた。
「ただいま〜。あれ、今日は早かったんだね」
「うん、和洋が帰ってくるのを待ってた。早く、こっちにきて座って」
「え、何、なんかあった」
「あった、あった、大きなことが。あのね、私、ここから荷物運び出しちゃった、全部」
「えっ、えっ、どういうこと」
「あのね、ミィちゃんに出会ったの。それで、一緒に暮らせるマンションを慌てて探して見つけたのよ。だから、あたし、ここ出ていくって決めたの」
「ちょ、ちょっと待って。話が見えないな。一緒に住むためのマンションを借りるために貯金してたんじゃなかったっけ。で、そのミィちゃんって誰?」
「私が世界で一番愛するネコちゃんよ」
この日を境に麗が和洋のところに来ることは無くなった。
了
下記企画への応募作品です。
🌿【照葉の小説】ショートショート集 ← SSマガジンへのリンク
🔶 🔶 🔶
いつも読んでいただきありがとうございます。
軽いコメント、お待ちしています。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。