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8月14日 裸石の日 【SS】魔法の石

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 裸石の日

埼玉県北本市に本社を置き、アミューズメント業や宝石ルース販売の東洋ルースなどの運営を手がける株式会社東洋が制定。

日付は「は(8)だかいし(14)」(裸石)と読む語呂合わせから。

宝飾業界ではジュエリー製品になる前のカットや研磨が施されただけの状態の宝石を英語で「ルース」、日本語で「裸石」(はだかいし)と呼ぶ。

ジュエリーのハンドメイド需要の高まりの中、宝飾業界の活性化と業界外への人たちに「ルース」や「裸石」という言葉や個人でもジュエリー製品になる前の宝石を購入できるということ知ってもらうのが目的。記念日は2022年(令和4年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。


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【SS】魔法の石

 青年実業家として成功した光石正輝という青年がいた。正輝は、高校を卒業とともに一人になった。両親を亡くしてしまい、天涯孤独になって全てのやる気を無くしてしまっていたのだった。正輝の両親は小さな宝石店を営んでいたが、資金繰りが厳しくなり、正輝の高校の卒業式を待って、遂にどうしようもなくなって心中してしまったのだ。卒業証書を手にした正輝が帰ってきた時には、すでに両親は冷たくなっているのを見て、正輝は一瞬で奈落の底に落とされた思いだったようだ。

 警察や近所の人たちの助けもあり、形ばかりの葬儀を済ませたものの、住居兼店舗は銀行の抵当に入っており、数ヶ月以内に明け渡さなければならない。両親が残した財産は無く、唯一考慮してくれていたのは正輝に借金が相続されないように手を打っておいてくれたことだった。両親は心中する前に自己破産の手続きを終わらせていたのだった。何も知らなかった正輝は、自分だけ置いてきぼりにされた気分になり、両親を恨めしく思ったが、色々と考える時間の余裕はなく、行き先を決める必要に迫られた。

 両親の四十九日を済ませ、誰もいなくなった家に一人、桜の季節が過ぎ梅雨に入っていた。そろそろ家を出ていかなければならない。思い出の品物は沢山あるが持っていくわけにもいかない。親子で写った写真はスマホの写真に収めた。自然と涙が出たが、何としても生き抜いてやると思いながら思い出の写真に火をつけた。写真は全て燃やしてしまったのだ。過去と別れるために。

 そして夏の日差しが熱くなり始めた七月、自分の身の回りのものだけをリュックに詰め、いざ家を出ようと玄関を開けた。何となく後ろ髪を引かれる思いというのはこんなことなのかなと感じながらも、玄関を出て一礼し、行くあてのない旅に出ることにしたのだ。いざ出発しようとした時、両親との出来事を一つ思い出した。

『そういえば、両親に何かあったら、開けなさいと言われていたものがあったな。たしか、お風呂場の天井裏だった。すっかり忘れていたぞ。ギリギリで思い出せてよかった』

 一旦、玄関を出たもののもう一度部屋の中に引き返し、風呂場へ向かった。正輝の家のお風呂は、システムバスになっていたので、天井にはメンテナンス用の穴が空いている。下から押し上げると簡単に開く仕組みだ。風呂イスの上に乗り風呂場の天井裏に顔を出して見回してみた。何やら小箱が置かれている。これだと思い、正輝は箱を手に取り椅子から降りた。

 そっと小箱の蓋を開けてみると、QRコードが印刷されたメモが一枚だけ入っている。正輝はスマホを取り出して、カメラでコードを読み取りクリックした。すると、もともと両親が運用していたお店のページに飛んだのだ。ただ、表示されたページは公開されているページではなさそうだ。スマホの画面には、正輝という表示とその下に生年月日を入力するエリアが表示されている。正輝は、そこに自分の誕生日を入力した。すると、メッセージが現れた。

『店の奥にある台所の床下収納を外して少しだけ掘りなさい。そこには当分生活に困らない程度の現金と裸石を隠してあります。家を追い出される時に忘れずに持っていきなさい。このくらいしか残してやれないお父さんとお母さんを許してね』

 正輝は驚いた。自己破産していたので、何もないと諦めていたが、両親は正輝のために内緒で隠しておいてくれたらしい。もちろん公にはできない。正輝は急いで台所に行き、床下収納の蓋を開け、その下にあるプラスチックのケースを外し、地面を掘った。コツっと何かに当たる感触があり、お菓子の缶が出てきた。その中には、短い手紙とともに、現金一千万円と裸石が十個程度入っていた。裸石は宝石店に持っていくか質屋に持っていくことになるが、まだ正輝は十八なので、何とか現金でしばらくは頑張ってみようと考えた。

 正輝は、両親が残してくれた現金で安いアパートを借り、住まいを確保した後、両親が残してくれた裸石を並べ見つめていた。

『せっかく残してくれた裸石だから、お金には変えたくないな。何か生かす方法はないかな。そうだ、これをペンダントに仕立てて、レンタルで貸し出すビジネスでも始めてみよう。パーティとかデートとかでもしかしたら需要があるかもしれないぞ。ダメ元で始めてみるか』

 こうしてペンダントのレンタル店をオープンした。オープンといっても物理的な店舗は持っていない。全てはネット上での取引である。私書箱経由で取引するので自宅の住所も使うことはない。最初から上手くいったわけではないが、大きな石のペンダントで見栄えがいいということと、レンタル料金が安いということが口コミで広がり、固定客までつくようになるまでに、それほど時間はかからなかった。結局手持ちのペンダントだけでは要望に答えられなくなり、商品を徐々に増やしていき、今では千個以上のペンダントやブローチを取り揃えるまでになり、ひと月の売り上げは一千万を超えるまでに成長した。見栄を張りたい女性のニーズを上手く掴んだビジネスとなったようだ。

 会員制も導入したり、キャンペーンを実施したり、最終的には販売も実施するようになり、安定した収入を得られるようになった。従業員も雇うようになり、正輝自身は海外へ出向き新しい裸石を探すことに夢中になっていった。日本に戻った時は、必ず墓参りをしている。

『父さん、母さん、やっぱり僕は二人の子供だね。今や宝石でご飯を食べるようになったよ。活動資金を残しておいてくれて本当にありがとう。だいぶ遅くなったけど、報告にきたよ』


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