9月23日 秋分の日 【SS】ご先祖様
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 秋分の日
「国民の祝日」の一つ。1948年(昭和23年)に公布・施行された「国民の祝日に関する法律」(祝日法)により制定。
「秋の彼岸」の中日でもあるため、「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」ことを趣旨としている。
この日は二十四節気の一つ「秋分」で、9月23日頃にあたる。昼と夜の長さが同じになる日とされるが、実際は昼の方が若干長い。「秋分の日」の前後三日間とこの日は「秋の彼岸」であり、墓参りをする人が多い。
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【SS】ご先祖様
私は年に何度か、ご先祖様と直接会話している。嘘ではない。実際に面と向かって話をしているのだ。これは私の家系に代々伝わる習慣でもあり、他言無用の話として読んで欲しい。
我が家の家系は私で丁度十代目である。昨年九代目である私の両親が亡くなった。したがって、ご先祖様と会う時は初代から九代目までの人たちが一堂に集うことになる。はっきり言って訳がわからない。おじいちゃん、おばあちゃんまでは会った事があるので分かるのだが、それより前のご先祖様は全て同じに見えてしまう。おじさんやおばさんにもたまに会うだけだったので、今となってはよくわからない。霊魂となってからは、ただでさえぼんやりとしか姿が見えないので、私としても適当に誤魔化しながら話をすることになる。氏名と没年月日が記載されている過去帳を手元に置いて話をするのだが、その中から探すこと自体が面倒くさい。なので、生者として場を仕切る責任を持つ私は、ルールを作ろうとお願いをしてみた。
「ご先祖様。いつも私たちを見守ってくださりありがとうございます。年々ご先祖様が増えていくということは生きている人間からすれば寂しいものです。同時にたくさんの魂に守られているんだなと痛感もいたします。しかしながら、ここまでご先祖様が多くなってしまうと私としましては、瞬時に何代目のどなただろうという把握が困難になってきました。そこでお願いがあります」
「一体なんだ、改まってお願いとは。我々でできることであれば助けてやるぞ。遠慮なく言ってみなさい」
「おう、俺たちも聞いてやるぞ。なんだ」
「早く言ってちょうだい。どんなこと」
一言いうだけでも何人からでも返事が返ってくる。正直、面倒臭いのである。同調するだけの返事なら黙っててもらった方がいい。そうはいっても、ご先祖様を蔑ろにはできないので黙って聞き流してはいるのだが。
「ありがとうございます。こうして毎回皆さんとお会いでき、嬉しいのですが、何しろお姿が透けていますので、どなたなのかを判別しにくくなっているのです。そこで、皆さんがお話になる前に、何代目なのかということとお名前を最初に言っていたたげればと思います。そうすれば私もすんなりと理解することができると思います。どうでしょうか」
「おう、三代目の源太郎だ。例えば、こんな風に最初に言えばいいんだな。俺は問題無いぞ。多分、みんなも同様だろう、なぁ、みんな」
「はい、五代目妻、はし江でございます。かしこまりました」
「二代目、良平。わしも分かったぞ」
こうして、素直なご先祖様たちは、私の依頼を最も簡単に了解してくれ、それからと言うものは、まるで小学校の先生にでも挨拶するかのように、ご先祖様たちは名前を言うこと自体を楽しんでいたようだ。私も向こう側に行ったら、忘れないで十代目、匠と名乗らなければといいかせたところだ。
今回は、ご先祖様たちからの要望もいくつか出てきた。生者である私や、私の兄弟、子供達に対する要望だった。
「七代目、又三郎だ。墓周りの草の手入れが最近滞っているようだから掃除をして欲しい。藪蚊が飛び交っている墓に入っているのはあまり気持ちがいものではないからな」
「八代目、誠治です。お墓の前に日本酒を置いてくれるのは嬉しいのだが、できれば辛口にして欲しい。直接飲めるわけではないが、甘口は嫌いだったから見るだけでもいい気持ちには慣れないんだ」
「六代目の妻、スエです。お盆に出してくれる迎え火の提灯は、もう少し見やすいところに掲げて欲しいのです。家のまえの木が大きくなって見えにくくなりましたから」
「皆さん、わかりました。色々とご意見ありがとうございます。最近、わがやも忙しくてお墓参りに行けておらず本当に申し訳こざいません。お彼岸には、きっとピカピカなお墓にします。お供えもちゃんとしておきますから安心してください。お盆の迎え火の高さには気がつきませんでした。提灯の数を増やすことも合わせて考えてみますね」
一通りのお互いの意見が出たあと、長くなりそうだったので、会話を中断した。すると、初代の平吉がうっすらと畏まった表情になって意見を言いはじめた。
「初代、平吉じゃ。みんなで盛り上がっているところ、申し訳ないのじゃが、一つ伝えておかなければならないことがあるんじゃ。実は、こうして死んだ者と生きている者が一堂に会して話ができるのは、わしが死んだ時、阿弥陀様にお願いをして聞き入れてもらったからなんじゃ。わしが死んだ後、ちゃんと家系が繋がっていくのか見届けさせてくれって頼んでの。だがのう、それには条件がつけられたんじゃ」
「条件とは何ですか」
「実はのう。十代目まで家系がつながることを先祖で確認できるまでの間だけ、特別な能力を授けてくださったんじゃ。だから、九代目が亡くなり十代目まで確認できた今がその条件に合う年なんじゃよ」
「えっ、じゃあ、今回が最後ということですか」
「すまんのう。今まで黙っていて。ただ、話をしたらその時点で終了になるということも言われていたんで、話すに話せなかったんじゃ」
「そうだったのですか。阿弥陀様から授かった力だったのですね。じゃあ、これからはこの家系も普通の家と同じになるわけですね。ではこうしませんか。これからは直接会話はできないので、この家にやって来られた時には、蝋燭の炎を二回揺らしてください。そして帰る時は三回揺らしてください。そうすれば、生きている私たちも皆さんの到着を知ることができますから」
こうして、不思議な力を持った家系は終わりを告げた。力を持っていたということを周りの家に知られることもなく。そして、次のお盆の時、ご先祖様の数の回数分、蝋燭が二度続けて揺れ続けるのを匠は見ていた。
了
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