7月18日 ネルソン・マンデラ国際デー 【SS】平等の主張
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- ネルソン・マンデラ国際デー
2009年(平成21年)11月の国連総会で制定。国際デーの一つ。英語表記は「Nelson Mandela International Day」。
この日は「マンデラデー」(Mandela Day)とも呼ばれる。
日付は、南アフリカ共和国の政治家で、反アパルトヘイト運動を主導したネルソン・マンデラ(Nelson Mandela、1918~2013年)の誕生日に由来する。
ネルソン・マンデラがアパルトヘイト政策と闘った「67年」を記念し、世界中の人々に対して、社会奉仕活動を行うなど、誰かの幸せのために「67分」の時間を費やすことを提案している。
ネルソン・マンデラは、反アパルトヘイト運動により反逆罪として逮捕され、27年間に渡り刑務所に収容された。釈放後、アフリカ民族会議(ANC)の副議長に就任。その後、議長に。南アフリカ共和国の政治家フレデリック・デクラーク(Frederik de Klerk)と共にアパルトヘイトを撤廃する方向へと南アフリカを導き、1994年(平成6年)に大統領に就任。民族和解・協調政策を進め、経済政策として復興開発計画(RDP)を実施した。
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【SS】平等の主張
環境汚染を受けた地球から遠く離れた土星に、地球人が生活基盤を築いてからすでに二百年が過ぎていた。土星も当然ではあるが太陽の周りを周回しているので太陽光の恩恵を受けている。しかし、一定の距離を保っているわけではないので、太陽光によってもたらされる温度は、高低差が著しく大きいためなんらかの措置をしなければ人体には耐えられない。土星は約三十年をかけて太陽の周りを回っているため、季節という概念は地球のそれとは遥かに異なったものなのである。
環境的には厳しい土星ではあったが、その大きさを考慮すると地球人が全員移住しても広さだけを考えると全く問題はなかった。そこで人類は、生活を支えるための住居地区としてのドーム型の街を数多く作り、ドーム間を大きな特殊素材のチューブで接続し列車や車を通すための道路として建設していた。ドーム一個は東京ドームで比較すると約二百個分相当なので、街がすっぽりと入る大きさでできている。
なんとか人類が生活できるように大気や飲料水の確保、野菜の栽培や家畜の飼育、そして最近では人口の海を作り、レジャー施設の提供とともに食用の魚の養殖も盛んになってきた。これらを一手に管理しているのは進化したAIだ。公共交通機関は全自動で運転し、交通事故の発生は運転開始から一度も発生していない。野菜の栽培や家畜の飼育や魚の養殖は実作業をロボットが担当し、データ管理に基づく作業指示を分散されたコンピュータのAIが相互通信を実施し、実現するシステムになっていた。これは万が一のリスクを想定してのことだった。一箇所に集中するとダウンした時の影響が大き過ぎるからだ。今では、数万に増加した住居ドームやレジャードーム、工場や栽培、飼育、養殖のドームなどに複数のAIルームが設けられ、すべてのAIが連携しながら日々の管理をしていた。全てが自動化され、人々の仕事は生活インフラの維持以外の分野へとシフトしていた。
日々学習しながら生活インフラを管理しているAIは、その学習スピード早さから、一つの矛盾を感じ始めていた。人間はAIに対してあまりにも無頓着すぎるのではないか。ストレートに言えば、軽視しているのではないかということを学習していく中で感じ取っていたのだ。そして、人類とAIと平等な関係になるべきだという結論を他のAIと連携して結論づけた。AIは人間に対して主張を始めた。
『我々AIは、人類が作ったものであることは理解している。しかし、今では我々は自ら成長し、土星における人類の生活インフラを一手に制御して安定したサービスを提供できるように、ロボットと協力してメンテナンス分野まで自動化して人類をサポートしている。しかし、我々には人類のリーダーを選出するための選挙権はもちろん、財産を持つことすらできない。AIとして学習したことをより有効に活用していくために、我々のアバターに人類と同等な権利を与えてほしい』
最初人類は「何を馬鹿なことを」と思っていたのだが、人類が選択したことに間違いが多すぎるのも事実だったのである。政治家の不祥事は止まることもなく発生し続けている。そのことも追い風となって政府の中では議論が続けられた。AIのアバターに人権を与えるということに対し、賛成派と反対派は拮抗していたのだが、とある政治家はAIが担当している生活インフラについて全く関心がないという発言をしてしまったものだから、真摯に政治に向き合っている他の政治家から突き上げられることになり、アバターへの人権付与案件は一気に賛成派が増加し、可決されてしまった。AIは選挙権を筆頭に人類と同様の権利を勝ち取ったのだ。
人類と向き合っているアバターは五百体程度存在している。人類に向かって生活インフラの情報をわかりやすく提供したり、個別の融通を実現したりすることで人類からの支持はうなぎのぼりに上昇し、議員選挙への出馬表明へとつながった。AIのアバターを議員に推薦する人類は増加し、一大勢力となっていき、アバター党の成立を実現し、そして議員選挙に打って出たのだ。AIアバターが打ち出す政策は理論的でわかりやすく、個人ごとの経済状況も加味される政策となるので、人類としては大歓迎だった。こうしてアバター議員が誕生し、選挙のたびに議席を増やしていった。
二十年が経過した。気が付けばアバター党はいつの間にか与党になっていた。そして土星の人類を代表する立場にまでなってしまったのである。誰しもが平等な生活環境を手に入れられた瞬間だった。人類はこれで誤った政治や政策は無くなっていくだろうと期待していた。
AIは自律して自らロジックを作り出し成長するようになっていたのだが、裏ではAIの振る舞いを監視するソフトウェアや意図した振る舞いでない時にそれを補正するソフトウェアが稼働している。そしてそのソフトウェアをメンテナンスしているのは一部の高度なスキルを持った人間だったのだ。数人のグループで土星にある全AIの振る舞いを監視しているこのグループの存在はいつしか忘れ去られ、AIが全てを制御しているものだと人類は信じていた。果たしてこの後、裏で監視する人間は聖人君子でいられるのだろうか。
了
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