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【SS】 思い #シロクマ文芸部

「私の日を見つけたい。私以外の誰かのための日じゃなく、私のためだけの日がほしい」そう星に向かって両手を合わせる少女がいた。

 この少女は幼い頃、両親の愛情をいっぱいに浴びて育てられていた。毎日が少女のためにあると言ってもいいような日の連続だった。そんな幸せの中にいた少女に不幸が訪れたのは、少女が八歳の七夕の日だった。

「ローラ。お前はまだ八歳だけど、落ち着いて聞きなさい。お前の父と母は航海の途中で嵐にあって行方不明になったよ。おそらく命が助かることはないだろう。お前は、親戚の家にひきとられることになったんだよ。何か大切なものを一つだけ持ってビリーおじさんのところに行きなさい」

 いきなりこんなことを言われたローラは、後ろから父と母がいきなり出てくるのではないかと期待したが、何も起こらなかった。それどころか、会ったこともないビリーおじさんの家に行くことが不安で仕方なかった。この時は、両親の死に向き合うことなんてできない年齢だったのだ。

 連れて行かれた先での生活は一変した。ビリー家はローラ一家の優雅な生活を恨めしそうに眺めていた一家だった。家も狭くてとても清潔とは言えない。ビリーには子供がいなかったから、親族からの命を受けてローラを引き取ったのだった。親族は子供がいない夫婦だから大切にしてくれると思い託したのだった。しかし、ビリーには経済的に余裕がなかった。とてもじゃないが女の子に勉強をさせることはできない。それどころか食い扶持が増えたのである。ビリー夫婦はローラを住み込みのお手伝い以下の待遇で毎日の家事をさせた。当然、家事なんてしたこともないローラは毎日怒られ、箒で叩かれる日々を過ごすことになった。服は汚れたまま、お風呂にも入れないので、洗濯をする時に近くの川で水浴びをして清潔さを保つ毎日だった。手足は荒れ、可愛い笑顔は消え、幸せだった頃の面影は全く感じられなくなっていた。

 そんな生活を送り始めて三年が経過した。家事もこなせるようになり、怒られる頻度も減ってはいたが待遇はなんら変わらなかった。周りの家の子供達を羨ましく思う毎日は変わらず続いていたのだ。なぜだか街ではお祭りのような騒ぎが起こっていた。なんでも東の国で大成功を収めたキャプテンがこの地に寄港し貿易の拠点を作るということだった。その顔中髭だらけのキャプテンは、ローラが幼い頃に住んでいた屋敷を買い上げておふれを出していた。

「この屋敷に住んでいたローラという娘を見つけてくれたものには報奨金を出す」

 このおふれを見た市民は口々に「報奨金なんかいらない。可哀想なローラは町外れの家で働かされているから、助けてあげてくれ」と訴え出た。それを聞いたキャプテンは、ベールで顔を隠した女性を伴い、屈強な船員を連れてビリーの家に向かった。

「ビリーの家はここか。ローラという娘がいるだろう。連れて出てきなさい」

 家の中にいたビリーは妻と共に恐怖に包まれた。

「あのー、ローラが何かしでかしましたでしょうか。もしそうだとしたら、私たちには関係がないことです。仕方なくここで世話してあげてるだけなのです」

「ビリー。私だ。解らないか。私は生きていたんだ。やっとの思いで帰ってくることができた。親戚であるお前が私の娘をこんな扱いをしていたなんて。ローラ、辛い思いをさせたな、おいで」

「お父様、お母様、ローラは、ローラは、」ローラは駆け寄ってきて抱きついたが、言葉に詰まり泣きじゃくるだけだった。

「何も言わなくていい。こんなにやつれて手も荒れて、可哀想に。街の人たちはみんな心配してくれていたよ。遅くなってごめんよ。嵐で遠い東の国まで流されてしまったんだ。待たせた分、ローラにはお返しをしないとな。さぁ、家に帰ろう」

「ローラ、辛かったわよね。こんな手になって。これからはまた家族一緒に暮らしましょう。ごめんね、待たせてしまって」

「ビリー、酷い扱いをしたのは分かっているが、ローラを売ることなくここに置いてくれていたことだけは感謝する。しかし、お前とはもう金輪際縁を切る。少ないがこの金をとっておけ」

 ビリーは今更ながらに後悔していた。人は助け合うものだから何かあったら頼むぞとローラの父親からは言われていたのを思い出したのだ。結局は自分に返ってくることになるということを身をもって知ることになった。だがすでに遅かった。ローラは引き取られる時にもってきたたった一つの大切なものを取りに戻って持ってきた。そしてそれを母親に差し出して渡した。

「お母様。もうボロボロになったけど、ローラが作ったお母様への誕生日ブレゼントよ。会えなかったから渡せなかったの。だから大切にしまっておいたのよ」

 そう言ってちょっと歪んだ花の刺繍が施されたハンカチを母親に渡した。母親の誕生日は七月七日だったのだ。母親は大粒の涙と共にローラをしっかりと抱きしめた。家族で住んでいた屋敷に戻り、日が沈み星が輝き始めた空を見上げ、ローラは手を合わせて言った。

「私の日が見つかりました。お星様ありがとう」


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