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4月5日 横丁の日 【SS】酒がない横丁

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 横丁の日

日付は「よ(4)こ(5)ちょう」(横町・横丁)と読む語呂合せから。

「横丁の日」は、東京都港区南青山に本社を置き、地域の魅力ある食材・料理を提供する個性的な店舗が集まった飲食施設「横丁」を展開する株式会社アスラボが制定し、2018年(平成30年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。

アスラボの「横丁」は全ての飲食を一つの席で一度の会計で楽しむことができ、飲食店の人には少額資金での開業・出店が可能となるなどの特長がある。「横丁」を通じて地域の熱意ある起業家を支援し、地域経済を盛り上げることを目的としている。


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【SS】酒がない横丁

 サラリーマンを中心に賑わうのが〇〇横丁と呼ばれる存在だろう。中には飲み過ぎて道端に倒れ込むサラリーマンやOLが現れることもあるが、ある程度はご愛嬌である。日頃のストレスを発散することは大切なのである。まぁ、ほどほどに飲むに越したことはないが、辛い時はとことん飲みたい時もあるものだ。

 僕が働いているオフィス街の裏に新しい横丁がオープンしたという知らせが届いた。その名も「たらふく横丁」というらしい。何やら美味しそうな料理がたくさんありそうだ。小さい文字で注意書きも添えてある。

「二十歳未満、アルコール・アレルギー、アルコールが飲めない方は入場できません」

 ちょっと気になる注意書きである。アルコールを注文しなければ問題なさそうにも思うのだが、もしかするとアルコールドリンクを必ず注文しなければならないのかもしれない。まぁ、僕はお酒は大好きだから問題はないだろう。同じようにアルコール大好きな友達を誘って行ってみることにした。

「横丁に飲みに来るなんてひさしぶりだなぁ、和也」

「今まで、近くになかったからな。今回行ってみて、このたらふく横丁がよかったら時々は寄って帰れるな。最も秀一は、結婚してるからたまにしかダメだろうけどな」

「え、まぁな、結婚したばっかりだしな」

 僕らは大学の同期で、同じ証券会社に就職した友達同士だ。何かあれば、一緒に飲みに行って愚痴をこぼしてストレス発散する。まぁ、どこにでもいるサラリーマンの部類だ。大学生の時には、ヨレヨレになったサラリーマンを見て、こき使われて何が楽しいのかなと思っていた頃が懐かしい。今では、僕たちがそう思われる方だ。歩いているうちに正面に看板が見えてきた。「たらふく横丁」と書いてある。何やら受付のような場所が設けられていて、呼び止められた。

「ご来場ありがとうございます。たらふく横丁は初めてのご利用でしょうか。それともすでにカードか登録済みアプリをお持ちですか」

「いや、今日初めて来ました」

「それはありがとうございます。それでは、早速利用者登録をお願いいたします。アルコールが入ってますので会員制の横丁としてオープンしました。皆さんが安心していい気持ちになっていただくためです。ご理解のほどをお願いします」

「ああ、なるほど。身元がはっきりしている人だけが利用できるのは利用者としても安心ですね。僕はアプリ登録でお願いします。秀一はどうする」

「あ、俺もアプリで。カードは絶対忘れるから」

 年齢確認と住所氏名、メールアドレス、好きなアルコールの種類を登録してアプリ登録を済ませた。どうやらこのアプリでいろんな特典があるらしい。

「どこのお店に行かれても、アプリで精算できますのでハシゴされても個別会計の必要はありません。個人ごとでもグループごとでも対応可能です。利用していただいた金額ごとにポイントも貯まるようになっています。貯まったポイントはお会計にご利用いただけます。そしてもう一つユニークなサービスとして、横丁内の移動距離に応じたポイントも加算されるようになっています。複数のお店を利用されればポイントがたくさん貯まるようになっているのです。それではどうぞたらふく横丁の味をお楽しみください」

 今時のシステムだなと二人で感心しながら、たらふく横丁の門をくぐった。すでに何人か先客がいておしゃべりしながら楽しんでいるようだ。店先を見ていると、必ずと言っていいほど看板の下の方に、日本酒中心、焼酎中心、ウイスキー中心、バーボン中心、紹興酒中心、ウォッカ中心などの文字が書かれている。もちろん、一つの店舗で複数の表示があるところがほとんどだ。アルコールとの相性がいい料理を出しているということなんだろうか。初めてみるような表示だった。物珍しそうに歩いていると、声をかけられた。

「お兄さんたち、この横丁は初めてみたいだね。とりあえずはビールじゃないかい。どうだ、うちの焼きそばを軽く食べてから他の店に回ってみては」

 なるほど、ビールと焼きそばは合いそうだなと僕たちは目で合図しながら、そのお店に入った。そしてビールを注文しようとした時、異変に気付いた。メニューにアルコールメニューが一切ないのだ。

「ご主人、焼きそばのメニューはたくさんあるけど、アルコールのメニューがないんですが、とりあえずビールください」

「あーーー、お客さん。ビールだけっていうのは置いてないんですよ、この横丁では。食べたい焼きそばを注文してもらえばわかると思いますよ」

「え、そうなの。じゃあ、イカ焼きそばを二つ」

 しばらくして、どう見ても普通のイカ焼きそばと水が出された。何だか騙されているような気もしたが、せっかくなのでパクパクと食べてみると、何となくほろ酔い気分になってしまった。

「ご主人、これどういうこと。なんかいい気持ちになってきたんだけど」

「へへ、うちの麺はビールで練り込んであるんですよ。だからビール中心の表示をしてるってわけです。たらふく横丁のお店は、全部料理の中にアルコールを混ぜてあるんです。使っているアルコールが看板に書いてあるんですよ。最初に案内役が教えないのは驚いてもらいたいかららしいですよ。こうすることによって飲み過ぎを防止する対策にもなっているんですって。そりゃあ、食べ物はアルコールと違って、限度があるからベロベロに酔っ払うほどは食べられないですよね。健全にアルコールを楽しめるたらふく横丁ってわけですよ」

「へぇ、考えたなぁ。確かにこれだと飲み過ぎは無くなりますね〜。ちょっと物足りない感はあるけど、食事しながらおしゃべりしてほろ酔いになるのはいいアイデアですね〜。女性にも受けそうですね」

 たらふく横丁での飲み物では、アルコール飲料の提供はない。ソフトドリンクもない。あるのはお白湯かお水のみである。それもミネラルたっぷりの地下水である。主催者によると、食事に含まれるアルコールに対するチェイサーの役割ということで水を提供しているそうだ。


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