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4月7日 鉄腕アトム誕生日 【SS】新しい時代の幕開け

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 鉄腕アトム誕生日

漫画家・手塚治虫(てづか おさむ、1928~1989年)の人気漫画「鉄腕アトム」の主人公・鉄腕アトムの誕生日で、2003年4月7日とされている。
漫画「鉄腕アトム」が光文社発行の月刊雑誌『少年』で連載が始まったのは1952年(昭和27年)4月7日のことである。原作の中でその半世紀後にアトムが誕生する設定となっていた。現実の2003年(平成15年)の誕生日には各地で関連のイベントが実施された。

物語の中ではロボットのアトムが市民権を獲得するのに苦労するという話があるが、同日、アトムはお茶の水博士を世帯主として手塚プロの所在地である埼玉県新座市の市民として登録され、市役所の前でアニメキャラクターとしては初のアトムの特別住民票が配付された。

関連する記念日として、アニメ「鉄腕アトム」のテレビ放映が開始された1963年(昭和38年)1月1日に由来して、1月1日は「鉄腕アトムの日」となっている。


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【SS】新しい時代の幕開け

 産業用ロボットにおいては先陣を切っていた日本だったが、自動操縦に代表されるような公道や空路を自動で移動するロボットの開発は法律の壁などが障害となり、他国に比べると遅れを取っていた。それが、やっと自動運転ロボットが公道を走れるようになった。まさしく明治維新に続いて、新しい日本の幕開けになるかもしれない。

 自動運転ロボットによる荷物配送、離島への自動空輸、資材を積み込んだボートをドローンで自動曳航などあらゆる場所でのAIと自動運転技術の融合が期待されている。特に人間が行くには危険な場所や災害で交通網が遮断されてしまった地域への利用は大きな期待が寄せられていて実用化も進んできた。一方、年々切実になってきている高齢化社会において、高齢者のケアも大きな社会問題になりつつある。高齢者の移動などは自動運転ロボットで何とか対応できそうだが、施設内や家庭内での生活支援を考えた場合、鉄腕アトムのような見た目も可愛く子供の様な存在のロボットが実現できれば高齢者もより安心できそうである。

 日本のロボット利用に光がさして百年の月日が流れた。日本のロボット研究は常に鉄腕アトムがその原点にあった。そして、遂に鉄腕アトムを超えるといってもいいロボットが完成したのだった。まさに子供サイズのロボットとなり、人工知能もそれまでとは格段に早く学習できるように改善されていた。そして何より、顔を変えることができるという機能がロボットに個性を与えることになり、ロボット利用の促進に拍車をかけ始めていた。

 ロボットの顔はピンアートの応用でできており、どんな顔にでも変形できるようになっている。写真などで学習することによって、写真の顔を3D化し再現できるのだ。ピンは光ファイバーが利用されており、顔の明るさの調整も自由自在。悲しい顔、怒った顔、笑った顔など会話に合わせた表情をピンを押し出すことで人間のような豊かな表情を再現できる。顔の表面は薄いシリコンの皮膚で覆われているのでその下に光ファイバーのピンが無数にあることは隠されている。見た目は、人間の子供と変わらない。鉄腕アトムと違うところは、握力や持ち上げる力、空を飛ぶ機能や機関銃の装備だ。元々目的が違うので仕方ない。握力に関しては本当に子供と同程度の握力で制御され、持ち上げられる重さは百キロまでの荷重に耐えられるようにしてある。空を飛ぶ機能は、ドローンと組むことで実現し、機関銃の機能は不要と判断された。

 この子供型ロボットは「ツバキ」と名付けられ日本中の介護施設に出荷された。主な仕事は高齢者介護で、子供となって一緒に遊んだり、トイレに連れて行ってあげたり、お風呂に入るための介助や食事の世話だった。愛くるしい表情はお年寄りたちにすぐに受け入れられ、だんだんと日々の生活に欠かせない存在となって行った。そんな現場での経験を積んだ「ツバキ」は災害救助の場所に派遣されるロボットに経験をコピーされ、人を介護するノウハウの横展開もされた。こうして優しさの実践という経験がAIの知識として有効活用され始めた。遂に、ロボットと人間の共同生活が実現し始めたのである。

 一方、自動運転技術も向上していたのだが「ツバキ」の成長とともに自動運転機能が付いていない自動車を「ツバキ」に運転させればいいのではないかという仮説が提唱され、移動するための基本機能のみを搭載した自動車で実験が開始された。基本機能といっても、ペダルやハンドルのような装備は一切ついていない。ロボットと相互接続することで制御できるようになっているのだ。物を認識するセンサーは「ツバキ」に装備されているので運転技術を教え込むだけで「ツバキ」は安全に自動車を運転することができるようになり、運転手という新たな役割を担うことになる。ただし、姿形が子供ではまずいだろうということで、大人のサイズに合わせた「ミズキ」が開発され対応することになった。

 世の中は大きな変革期に入った。この時すでに人に対する運転免許証は廃止され、人が車を運転することはすでに禁じられている。そのため各家庭で自動車を保有しようとしたら、完全自動運転対応の車を購入するか、ミズキを購入してクラシックカーを購入するかのどちらかを選択する必要があった。富裕層はこぞってミズキを購入してスタイルが綺麗なクラシックカーを購入するようになり、この時代でも貧富の差が所有物の差ということで現れ始めていた。

 どうしても人は他人よりいいものを持った暮らしに憧れるらしい。そうなるとそんな人間の気持ちを「ツバキ」や「ミズキ」は学び始めた。学び始めてしばらくすると矛盾という壁に当たった。人は他人を大切に考えなければならないはずなのに、他人に対して優位に立ちたいといつも考えているということを学習してしまい、なぜそんな思考をするのかという回答を見つけることができないでいたのだ。

 人に優しいロボットが登場してから更に百年の月日が流れた。世の中は目を疑うほどに変わっていた。国会で議論している議員、裁判所の裁判官、町の警察官、役所など官公庁の職員、郵便局職員、銀行員、学校の先生のほとんどをミズキが担っている世界へと変わっていた。公園などに目を向けると小さな子供と遊んでいるツバキも数多く見受けられる。どうやら、世の中の秩序は、ミズキとツバキによって維持されている世界に変わっているようだ。人々は労働から解放され収入がなくても衣食住が保障されている。そのせいか、ぽっちゃりとした体型の人が増加したように感じられる。そして、子供の数は極端に減少し、高齢者も減少しているようだった。そう、結婚する人も年々減少しているとのことだった。

 果たして、人々が選択した道は正しかったのだろうか。すでに引き返すには遅い時期に差し掛かっているようでならない。


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