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【SS】 学生時代の証子

中編ミステリー「証」のスピンアウトSSです。とはいえ、小説の設定はそのままで綴っています。


 訳あって小学生の時に、八王子から広島に引っ越して、祖父母との生活を余儀なくされた証子。無口な暗い小学生になった証子も次第に環境に慣れ、複数の中学校からの生徒が集まる高校では、やっと本来の明るい性格に戻り始めていた。

 高校一年の時に出身中学が異なる梅田洋子に出会い、初めて「友達」と呼べる存在が広島の地でできたのだ。証子は仲のいい友達ができて喜んだ。

「私ね。両親が愛しあった証の子だから、証子って名前になったんだよ。なんか、ちょっと恥ずかしいよね」

「ええ、そんなことないよ。素敵じゃない。私なんて広い海の心を持つようにって願いが込められたらしいけど、絶対無理無理」

 梅田洋子はおとなしい性格で、広島を愛していた。だから、大学も広島の大学を目指していた。第一志望は広島大学だった。一方、証子は母のことがずっと気になっていたので、大学は東京の大学へいくと心に決めていた。

 少なくとも小学生、中学生と同じ学校に通っていた生徒もいて、証子は時々揶揄われてもいた。

「あれー、授業参観でおばあちゃんしか来なかった証子様ではありませんか。仕方ないですよねぇ。お母様に捨てられたなんて可哀想すぎます。ハッハッハッ」

 わざとらしい言葉を連ねて、こんなことを言われるのは慣れてはいたが、洋子の前で言われるのがたまらなく嫌だった。それでも言い返しても無駄だということが体に染み付いているので、何も言わずに通り過ぎるばかりだった。証子は洋子と二人きりの時は、よく涙を見せた。でも、小中学の頃の証子を知っている生徒の前では涙を懸命に堪えていた。舐められてたまるもんかという気持ちが強かったようだ。

 証子は自分を育ててくれたおばあちゃんとおじいちゃんには感謝していた。しかし、それ以上に母親のことが心配でたまらなかったのだ。証子の微かな記憶では、父親の暴力があったから、自分は広島の実家に預けられたということになっていた。だから、母親は今でも我慢して生活をしているのではないかと心配だったのだ。しかし、今の自分には何もできない。だから母親が住んでいる八王子にキャンパスを持っている法政大学に入学してなんとかして母親の力になりたいと考え始めていたのだ。それに、亡くなってしまった自分の父親のことももっと知りたいと思っていたのだった。

 証子は、幸せな家庭に生まれた自分と母親を引き離したのは、今の母親の新しい夫なのではないかと思っていたのである。だから、なんとかして自分に力をつけて東京に行き、真相を確かめたいと思っていたのである。そんなことを考えながらも生きていかなければならないので、なんとか経済の勉強をして証券会社を目指そうと心に決めていたのである。そんなことを証子は洋子とよく話し合ったりしていた。洋子は本当に親身になって相談に乗ってくれた。そして、それぞれの道に踏み出すための大学受験の時がやってきた。洋子は広島大学、証子は法政大学。進む先は違うが二人は信頼という絆で繋がっていた。

 法制大学に合格した証子は早速東京での住まい探しなどを始めたのだが、広島のおばあちゃんたちは、浮かない顔になっていた。このまま広島にいてくれたらいいのにということは何度も言われたが、証子としてみれば母親を放っておくことなんてできなかったのである。

 小中学校でいじめられたことで、証子は自分の中に別の人格も持つようになっていた。もちろん、本人すら気づいていなかった。子供なりに、どうすれば生き抜けるかということを考えた結果、別の人格を作ったのだろう。そのおかげで証子は挫けることなく、ここまで成長することができていたようだ。そして、東京に出て一人の生活を始めることになることになり、余計に自分自身を隠すための人格が必要となり、心の中ではもう一人の自分がいるような感じだったのかもしれない。

 東京に出たら、広島でお世話になったおじいちゃんおばあちゃんへの恩返しもしたいから、東京では年老いた人たちの力になれるようなことを将来はやっていきたいと考えるようになった。漠然と法政大学の経済学部を卒業した際には、証券会社に就職してお年寄りの生活を支援できればいいなとと思い始めていたのである。その傍ら、自分にまつわる秘密を一枚ずつ剥がして家族の過去に何が起こったのかを確認しようと思い始めていたのである。それは、証子が小さい頃にひき逃げされて亡くなった父親の事故の真相を知ることだった。全てはそこから狂い始めたように感じていたからだ。

 証子は過去の確認と母親を助けるための東京での生活を目指し、広島での生活に終止符を打った。隠されている過去という事実を確認するために。


小説「証」の中でほとんど触れていない、証子の学生時代の部分をショートショートで綴ってみました。証子が探した過去そして、掴んだ未来に関しては本編でお楽しみください。



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