8月9日 美白の女神の日 【SS】降臨
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 美白の女神の日
素肌美研究家で「美白の女神(ミューズ)」として知られる株式会社クリスタルジェミーの中島香里氏が制定。
日付は「びは(8)く(9)」(美白)と読む語呂合わせから。「しっかりとお手入れをして、美白になりましょう!」と提案するとともに、より多くの人に美肌への意識を高めてもらうことが目的。記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。
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【SS】降臨
郊外の住宅地に、まるで太陽にあたって日焼けしたように色が黒い女の子がいた。名前はビアンカ、両親は肌が白くて綺麗な美人になるようにと「白い」という意味の名前を付けた。しかし、両親の期待とは裏腹に、肌は成長と共に褐色になっていった。両親共に肌は白いので、そのうち白い肌になるのだろうと思い、あまり気にはしていなかったのだが。
ハイスクールに通うようになると、意地悪な友達は「ビアンカのくせに色が黒い。名前変えたら」とか「実は生まれた時、病院で取り違えられたんじゃないの」とか「きっと養子なんだわ。両親は子供を作れない体なのよ、きっと」などと、心無い言葉を浴びせるようになった。ビアンカもだんだん気になり始め、いつも顔を見られないように俯いた生活を送るようになってしまった。そしてある日、たまらずに両親に怒ったような口調で問いかけた。
「ねぇ、私、本当にお父さんとお母さんの子供なの。本当は、他人の子供なんじゃないの」
「えっ、何をバカなことを言ってるんだ。お前は私たちの子供に間違いはないよ」
「じゃあ、なんで私の肌はお父さんやお母さんのように白くないの」
「そ、それは、まだ子供だからよ。きっと白い肌になるわよ」
「お、おう、そうだとも。そんなことなんで気にしてるんだ」
「だって、学校でみんなから言われるんだもの。お前は生まれた時に取り違えられたとか養子なんだとか、そんなに色が黒いなら名前変えろとかって」
「な、なんだって。そんなことをお前の友達が言ってるのか。許せん、父さんがそいつらに言って聞かせてやる」
「お父さん、止めて。そんなことしたら、私、学校に行けなくなっちゃう」
「うっ」
この時、両親はビアンカが肌の色のことでいじめられ、真剣に悩んでいるんだということを知った。実は両親も肌の色が褐色になっているのを少し気にし始めていた。両親は話し合い、一度ビアンカを病院に連れていく決意をした。翌日、ビアンカは学校を休んで、両親と共に街にある総合病院まで行き、診察をしてもらった。最終的には皮膚科に回され、先生から診断が伝えられた。
「ビアンカさん、あなたの肌は色素沈着により褐色になっているようです。きっと、本質的には白い透き通るような肌なのでしょう。小さい頃、夏場の海水浴とか良く行っていませんでしたか。もしくは日の当たる場所とか」
「そういえば、小さい頃は庭で遊ぶのが好きだったので、プールを出してもらって毎日のように一日中遊んでいました」
「なるほど。普通なら日焼けで起きた色素沈着は時間と共に入れ替わった細胞で元に戻るのですが、あなたの場合は、なんらかの原因で皮膚の下の色素沈着した部分がそのまま残ってしまっているように思います。とても珍しい現象だと思います。もしかすると太陽光に弱い肌なのかもしれませんが、今は断言できません。できるだけ鍔の広い帽子をかぶって過ごしてみてください。そして日焼け止めは毎日塗るように。あっ、そうそう、普段露出していない部分の肌は透き通るように白い肌ですよ。それが本来のあなたの肌のはずです。取り戻せれば、女神様のように美しくなれますよ、きっと」
皮膚科の先生の言葉はビアンカに勇気を与えてくれた。病院の帰りに鍔の広い帽子を両親に買ってもらい、嬉しくて車の中でも被っていたくらいだった。
翌日から帽子を被って登校すると、案の定意地悪な女友達が「そんな帽子被っても無駄よ。肌の色は白くならないわ、ははは」とからかってきた。しかし、ビアンカは両親の子供だということもわかり、本当は白い肌なんだということも知ったので、キッと相手を睨むようにして言葉を返した。
「あなたはそうやって私を揶揄って楽しんでいるつもりでしょうけど、その度にあなたの心は醜くなっていってるわよ。私を揶揄って気が済むならそれでいいけど、もし、本当に綺麗な女性になりたいのなら、もう少し考えた方が良くないかしら。たった一度の人生なんだから」
「うっ、何よそれ。もういいわよ」
反撃されるとは思っていなかった女友達は、自分が恥ずかしくなってしまったのか、クラスメイトの前で反論され何も言えなくなってしまった。揶揄った女の子たちは、居た堪れなくなり教室から出て行き、教室に残っていたクラスの仲間たちから拍手が沸いた。
「ビアンカ、すごいね。あんたを見直したよ。強いし心も綺麗だよ」
「ありがとう、みんな。でも今までは本当に落ち込んでいたのよ。でもね、希望が持てたからしっかりしなくちゃと思い直したの。あの子たちも構ってほしかっただけだと思うわ。だからみんなも仲良くしてあげてね。私も仲良くなるようにするから」
からかった女の子たちは教室の外で一部始終を聞いていた。まるで子供じみたいじめをしている自分たちが恥ずかしくなり、教室のドアを開け頭を下げながら言った。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。なんだかイライラして誰かに当たらないと気が済まなかったの。なんだか私たちだけ浮いているような気がして」
この後、クラス全員はビアンカを中心に明るくなり、一つにまとまった。あっという間に一年が過ぎ二年生になる時がやってきた。クラス編成もあるのでこれまでの仲間とはお別れになるかもしれない。そんな時ビアンカをいじめていた女の子たちから提案があった。
「ねぇ、みんな。ビアンカってさ、最近とっても白い肌になったと思わない? なんだか少しずつ白くなってたから、今日見てあれって思っちゃったくらいなんだけど。少なくとも最初に出会った頃の写真とは別人みたいになったよ。まるで白い肌の女神が降臨したって感じ。だから、ビアンカを囲む会のパーティをしてこのクラスの思い出にしたいと思いまーす」
クラス全員が賛成し、体育館を借りてパーティをすることになった。こんなことになるなんて思ってもいなかったビアンカは、本当に透き通るような白い肌が美しい女性へと変身したようだった。いじめられたことによって、一つになったクラスは、この後バラバラになってもお互いを気にし助け合う存在になっていったことはいうまでもない。
了
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