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5月12日 海上保安の日 【SS】海の闇

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】-海上保安の日

海上保安庁が1948年(昭和23年)に「開庁記念日」として制定。2000年(平成12年)から「海上保安の日」に改称された。

1948年5月1日、海上保安庁が運輸省(現:国土交通省)の外局として発足し、5月12日、初代長官・大久保武雄(おおくぼ たけお、1903~1996年)の手により庁舎屋上にコンパス・マークの庁旗が掲揚された。創設時の旧組織はアメリカの沿岸警備隊(コーストガード)をモデルに設立された。


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【SS】海の闇

 夏になると家族連れやカップルで賑わうことになる海辺だが、海そのものは、楽しいだけではなく怖い場所だということを知っていますか。毎年夏になると海の事故は後を絶ちません。防波堤での釣り、浜辺での海水浴、ヨットでのクルージング、ジェットスキーでの爽快感全てが非日常を楽しませてくれます。しかし、一歩間違えば、海はあなたに牙を剥くのです。

 海の奥底深くには、あなたが知らない世界が広がっているのです。あなたが見ている「海」は表面的なものなのかもしれません。一方でそんな海で生活をしている人たちもいるのです。海を楽しむ人と海で生活をする人、人間の目線で海を守っている人、全て海を愛しているのかもしれませんが、海の中ではそんなことは関係ありません。そっとしておいてほしいと思っているのかもしれないのです。そんな海の中の世界を少し覗いてみることにしましょう。

「今日もまた人間たちが騒いでいますよ」

「暖っかくなってきたからな。仕方ないんじゃないか。毎年のことだし」

「そう言いますけどね、隊長。百年前なんてこんなことはなかったんですよ。我々は静かな環境で穏やかに暮らしていたんですよ」

「えー、百年前はお前まだ生まれてないだろう」

「じいちゃんから聞いたんですよ。もう、細かいところを突かないでください」

「そうかそうか。でも、人間たちも自分たちでなんとかしようとして巡視船で見回りをしたり、ライフセーバーのような仕事を作って安全を保とうと努力しているじゃないか」

「そうなんですけど、海岸はゴミだらけになって、海の中に流れてくるんですよ。そして何も知らない我々の仲間は流れてきたものを食べて死んじゃったりするんですよ。それに、今は地球の気候もおかしいから、イルカやクジラが浅瀬に入り込んで死んじゃったりするんですよ」

「確かにそれはあるなぁ。どっかの国からは無駄なミサイルを発射して、我々の海に落ちてきているしなぁ。あれは迷惑だし、魚たちも驚いているよな」

「でしょう。これ以上人間のいいようにはさせられませんよ。全く」

 これは、海底国家の警備隊の会話である。彼らは人間が海を汚したり荒らすことを嫌っているのです。できることなら人間に警告して、もっと海を大切にすることを教えたいと思っていたのでした。海底国家には、警備隊の他に報復隊という組織もありました。警備隊は地球上のみんなが仲良く暮らせるようにしていきたいと思いながら活動をしていましたが、報復隊はやられたらやり返すことをモットーに手段を選ばず相手に打撃を与えることを実行する部隊でした。海底国家の中でも存続を疑問視する声が多い部隊でした。この部隊は、海底国家の中で罪を犯したものたちに仕事を与え、同じ海底国民に危害を与えさせないために、犯罪者のパワーを外に向かって放出させるための部隊だったのです。

 海底国家の政治家の中にも悪知恵を働かせる者がいて、国防のためにこの組織を強引に作ってしまったのでした。もちろん部隊が単独で判断して報復する行為は禁止されていましたが、月日の流れとともに部隊の独立性が高まっていき、政治家も交代により、部隊と関わることを避けていったため、ますます単独での判断と行動が多くなっていきました。

 ある時報復隊は、警告の意味を込めた人間への報復を実行しました。とある防波堤で釣りをしているたくさんの人に対し、いきなり大きな波を起こして釣り人たちを海中に引き摺り込んだのです。一瞬で海中に引き摺り込まれた釣り人たちはなす術もなく、海水を飲み息絶えてしまいました。釣り人たちが残す残骸や切れた釣り糸などが海へと捨てられ、被害にあった魚たちの報復を実行したのでした。

 またある時は、サンオイルや日焼け止めオイルが海面をギラギラさせるほどに浮いている海岸で普段よりも大きな離岸流を発生させ、多くの若者を沖へと流してしまいました。海の表面をオイルで覆い酸素を取り込むことが困難な状態にしたので小さな魚たちはその場所での生活ができなくなったことに対する報復でした。

 一番大きな報復だったのは、原子力発電所が流していた排水のため魚が奇形化したことに対する報復として、大きな津波を起こし発電所の一部に損害を与えたことでした。これは人間たちも大慌てして、長い間対策に追われることになってしまいました。報復だったはずでしたが、海水も汚染されてしまったのは誤算でした。

 海底国家では、これらの行為が国民によって問題視されるようになってきましたが、報復隊に逆らえる組織がありません。海底国家では政治家を含め、その組織に関わることを恐れ始めたのです。そうなると勢いづいたのは報復隊です。海底国家を意のままに動かすことができるかも知れないと思い始めてしまいました。

「最近、報復隊の動きが一層酷くなってきたと思わないか」

「そうなんだよな。怖くて近くに行けないよな」

「このままだとポセイドンの怒りを買ってしまうんじゃないか」

「もしかするとそうかもな。でもそうしたら、知らん顔している俺たちにも天罰が下るかもしれないな」

「それはまずいな。我々警備隊で何とかできるかな。話し合ってみるか」

 いよいよ事態を見かねた警備隊が立ちあがろうと画策を始めたようですが、圧倒的な力の差があり、正面衝突の場合は完全に負かされることは目に見えていたのです。そんな時、ある一つのアイデアが警備隊の中で浮かび上がりました。

「報復隊の中枢部を壊滅させることができれば報復隊はおしまいです。であれば中枢部が住んでいる場所を破壊してしまえばいいのでは」

「なるほど。マグマ国家と手を組むということだな。よし、早速使者を送ろう」

 こうして即断即決した報復隊壊滅作戦が実行に移されました。マグマ国家は海底国家のさらに下にある国家でマグマを意のままに扱うことができる国家でした。そのマグマ国家の警備隊に依頼したのでした。作戦は見事に成功しました。報復隊の中枢部の生活場所に対しマグマを噴出させ、全てを溶かしてしまったのです。この結果、報復隊は制御を失い、警備隊に吸収されることになりました。一件落着したのです。そして政治家によりこの事件は、不運な不慮の事故として処理されてしまいました。


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