見出し画像

【SS 12月29日】清水トンネル貫通記念日

【今日は何の日ショートショート】- 清水トンネル貫通記念日

1929年(昭和4年)のこの日、上越線の土合どあい(群馬県)~土樽つちたる(新潟県)の清水トンネルが貫通した。トンネル自体通行できるようになる完成はこの後であり、あくまでも「貫通」した記念日である。川端康成の小説「雪国」の有名な冒頭である「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」と記されたトンネルが清水トンネルのことである。清水トンネルはこの後、新清水トンネル、大清水トンネルが作られ、合計三本が並行している。


【SS】トンネルを抜けるとそこは…

 今や至る所に終わりがないのではないかというほど長い長いトンネルが存在する。鉄道の在来線をはじめ、新幹線や高速道路でも日本各地に存在する。逆に短いトンネルなのにカーブしているが故に確認しづらくちょっと怖いトンネルもある。

 車を運転している時、人は交感神経が活発になり緊張するらしい。そしてそれはトンネルに入る瞬間にさらに活発化し、トンネルを抜ける時安堵の気持ちが働き落ち着きを取り戻すのかもしれない。少なくとも私の場合はそうだ。

 そんな人間の気持ちに少なからず影響を及ぼすトンネルなのだが、実は世の中にはもっと不思議なトンネルも存在しているのをご存知だろうか。

 恋人たちが通るトンネルで、歩いてしか通れない。入り口が二つ並んでいて、恋人はそれぞれの入り口に分かれて入っていくのである。外の明かりが届かなくなるあたりから分かれ道になっている。それぞれが愛しい人に会うための選択をする。常に、右か左の選択である。中は真っ暗だから、壁に手を当てて進むしかない。ギブアップもできる。壁を2回タップすればトンネルは消滅し、外の世界に瞬時に戻ることができる。ただし、その時には愛しい人の記憶は消されてしまう。

 頑張って進んでいくと途中で愛しい人の呼び声がするところに差し掛かる。その声が本物かどうかを判断し、進む道を選択する。選択を謝れば、入って来たところに戻されてしまう。そして再度挑戦するか帰るかを選択することになる。もちろん片方が間違えば、恋人の方も一緒に戻されてしまう。振り出しに戻るわけだ。愛し合う二人は常に連帯責任を問われる。そのこと自体も試練なのだが、中には、自分は間違っていないのに恋人が間違えたので振り出しに戻され、憤慨するケースも多く見られる。そんな人たちの場合、振り出しに戻された後、入り口は閉ざされてしまう。つまり、永遠に結ばれないカップルは入口を通ることはできなくなるのだ。

 何回も何回も振り出しに戻され、それでも挑戦し続けているカップルがいた。振り出しに戻されるたび、間違った方が「ごめんなさい」と謝り、連帯責任で戻された相手は「よし、次こそゴールしよう」と励まして何度も何度も挑戦していた。

 優に五時間は経過したあと、トンネルの中で変化が起こっていた。分かれ道が全て消滅し、男性が入った入口と女性が入って来た入口は50メートルほど先で一つに繋がっていたのだ。そして、そこには出口の扉があった。二人は、繋がっている場所でお互いに出会い、手を取り合って扉を開けた。眩しいばかりの光を浴びて表に出た。そこは無事に出口に出られたカップルだけが目にすることができる「告白の場」だった。二人はお互いの目を見つめながら、向かい合い、男性は勇気を出して告白した。

「僕たちは、運命で結ばれていると思う。そして僕は君のことをとても愛しています。結婚しよう」
「私もあなたを凄く愛しているわ。これからの私の人生、あなたに預けます」

 こうして、トンネルを抜けることができたカップルは末長く幸せになったそうだ。しかし、出口を見つけられなかったカップルのその後は誰も知ることができない。なぜなら、本人たちの記憶が無くなってしまうのだから。


🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集  ← 記念日からの創作SS
🌿
【照葉の小説】ショートショート集  ← SSマガジンへのリンク
🌿【照葉の小説】短編以上の小説集   ← 電子出版を含めた小説集
🌿【照葉の日常】日々の出来事     ← 日々の出来事、エッセイ


☆ ☆ ☆
いつも読んでいただきありがとうございます。
「てりは」のnoteへ初めての方は、以下もどうぞ。

🌿松浦照葉の販売中の電子書籍一覧
🌿松浦照葉のプロフィール
🌿松浦照葉の毎日更新掲示板


#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日

いいなと思ったら応援しよう!

松浦 照葉 (てりは) よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。