2月10日 海の安全記念日 【SS】海中都市
【今日は何の日】- 海の安全記念日
全国水産高校長協会が2003年(平成15年)に制定した記念日である。水産高校のの実習船がハワイで事故に遭い、教員と生徒9人が死亡してしまった。これを追悼し、安全祈願のための記念日である。
2001年(平成13年)2月10日8時45分(日本時間)、愛媛県立宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」が、アメリカ・ハワイ州のオアフ島沖で、浮上してきたアメリカ海軍の原子力潜水艦「グリーンビル」に衝突され沈没。乗務員35人のうち、えひめ丸に取り残された教員5人と生徒4人が死亡した。また、救出されたうち9人がPTSDと診断された。
【SS】海中都市
地上の生活をよそに、海中の深い場所に都市が建設されていた。太陽の光が届かない海溝だ。それゆえ、地上で生活する人は誰も気づかずに過ごしていた。しかし、時代とともに深海を探検するための機器や有人の探査船が開発され、そのベールが剥がされてしまったのだ。
当然、ニュースにはならず極秘情報として取り扱われた。というのも、海の安全を守るために海中都市が重要な役割を果たせるのではないかと考えられたからだ。海中で生活する人々は長い時間をかけて深海へと移動していった。水圧や空気の問題があったからだ。残念ながら人が魚と同じ様にエラ呼吸ができる様にはならなかった。
しかし、海底の人たちは、それをテクノロジーで解決したのだった。海中都市は大きな透明ドームで覆われており、ドームの内部と外の水圧がバランスできる様に建設されている。そして万一のため、ドームは三重化されて保護されている。ドームの都市自体は直接海底にあるわけではなく、見えない様に海底の地下などに作られている。通常の探査機では発見できない様にカモフラージュも施され、海底の岩盤の下や、海底でせり出している岩礁の中をくり抜いて作られていた。もちろん、一箇所にとどまるわけではなく、何箇所も何箇所もドーム都市は作られ、それぞれのドーム同士はチューブと呼ばれるトンネルで接続され、自由に移動することができる様になっていた。そのチューブ自体は、何箇所かは海底で剥き出しにならざるを得ず、海中を横断する様な場所もあった。そして、それがある日地上の人間に発見されてしまいドーム都市の存在が知られることとなったのである。
水中は地上と違い、水という密度の高い媒体を使うことで遠くとの通信を可能にしている。水中で音を立てるとかなり遠くまで伝えることができるのだ。このことを応用してドーム間の通信は実現されていた。地上では今では携帯が主流であるが、海底では、水を媒体とした伝達方法が主流だった。それはウォーターコネクトと呼ばれていた。指向性を持つとともに中継機を置くことでどこまでも瞬時に伝達することができていた。
ある日、主要な国のリーダーと海底国家のリーダーの会議がついに実現することとなった。海底国家のリーダーは女性だった。常に女性がリーダーを継承していたのだ。日本のリーダーは冗談まじりに乙姫様ではないのかと言ったくらいだった。
リーダー会議では、海の安全について議論が交わされた。海底国家は、欧州、太平洋、日本海、インド洋などあらゆる海底に都市を築いていたので、その影響力は実はアメリカやロシアを凌ぐほど強大だったのだ。しかも地上よりもはるかにテクノロジーが進化していたのだ。海底国家のリーダーは、地上の人間が海を汚すことを中止するならば、海面や海中で発生する事故に対し、救援することを約束し、嵐など自然現象が発生し事故につながる様な時には船舶に対し警告する様な協力もしようと提案してくれた。その代わり、海が今以上に汚染されたり、プラスチックの投棄が増加する様なら、自然現象がもっと厳しい制裁を与えるかもしれないと釘を刺した。
「地上のリーダーの皆さん、私たち海底国家は人口十億人を超える国家であり、あらゆる海底に居住地を建設しています。しかし、地上の生活とは交わらない様に独立して日々の生活を送っています。地上の皆様と争う気もありません。どちらかと言えば、地上の皆さんが平気で海を汚している現実をもっと真剣に考え、改善していただけるのならば、我々は地上の人たちの海難事故に対して救援したり自然現象の発生を抑え込んだりして被害が最小限になる様に協力するつもりです。今は、細かく砕かれたプラスチックが海洋動物に深刻な被害をもたらしています。その事実をもっと真剣に受け止め、各国で最重要改善項目として取り扱っていただきたいのです。我々も皆さんに協力したいと考えていますが、改善の兆しがない場合は我々ももっと強い手段で訴えるかもしれません。お互いが平和な生活を維持できるように賢明なる判断をお願いします」
参加した地上のリーダーたちは、海底から何ができるのだという程度に捉えてしまった。よって、海底国家からの切実な提案は完全に無視されてしまったのだ。そして、会議から数年後には、季節感がずれ始めたり、海底地震による津波が発生し各地で被害が出始めたりした。しかし、その時には各国のリーダーも代替わりしていて海底国家のことはすっかり忘れ去られていた。さらに悪いことには、相変わらず海洋汚染が継続されていたのだった。同時に海の安全も脅かされる事態になっていることに、誰も気づかないでいたのだった。
海底国家では遅々として改善されない海洋汚染に業を煮やし始めていた。このままでは、地球自体が地上の人間のせいで滅んでしまうかもしれない。そしてある計画が秘密裏に始められた。
その計画とは、心優しい人間だけを海底国家に招き入れ、移住させる計画だった。そして、海を蔑ろに考える人間だけが地上に取り残される状況を作り、最後通告を行った上で、地球規模の津波を起こし一掃してしまおうという恐ろしい計画だった。二十年間かけて実現するという計画が立案され、各地で工作員が活動を開始した。
計画はまだ始まったばかりだ。地上のリーダーたちよ。まだ、間に合う。国民を説得して海の重要性を再認識し、住みやすい環境へと改善しようではないか。そうすれば、海の安全も手に入れられるのだ。これが最後のチャンスだ。
了
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