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3月14日 採用担当者へありがとうを伝える日 【SS】採用面接

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 採用担当者へありがとうを伝える日

 宮崎県西都市に本社を置き、採用業務や経理業務などのオンラインアシスタント事業などを行う株式会社キャスター(Caster Co. Ltd.)が制定した日で、日付は「さ(3)い(1)よ(4)う」(採用)と読む語呂合わせから。

採用の繁忙期であるこの時期に、日々の業務に追われている採用・人事担当者に「ありがとう」の気持ちを伝えることが目的で作られたそうです。


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【SS】採用面接

 最近は就職協定もその存在意義が薄くなり、いわゆる青田買いと呼ばれる採用が常識になって久しい。大学では、三年生になるとまず就職先を確定させて、その後じっくりと四年生の期間を過ごすことになる学生が多い。応募する側としてもアンテナを張って自分が進みたい企業の求人情報をチェックし、合わせていくつかの企業の入社試験にエントリーする。そんな光景が常識のように学生たちの間に広がっていた。

 一本木正道という男子学生も就職のことで悩み始めていた。他の学生と違うところは数多くの会社の入社試験を受けようとは思ってもいないということだった。正道は自分が選択した企業を一社に絞り込み全力で挑む覚悟だった。「もし落ちたなら」ということ最初から考えることはなかった。自分を信じ、ぶつかるだけだと考えていたのだ。そんな正道はありきたりの面接対策を準備するわけでもなく正面から勝負しようと決めていた。

 面接の日がやって来た。あいにく朝から雨がひどく降っていた。面接会場は会社内ではなく外部の面接会場だった。予定時間の十五分前には会場入りし、自分の順番になるまで目を閉じて集中して待っていた。そして呼びだされた。ノックをして面接会場に入る。そこには、初めて対面する管理職であろう4人の面接官が座っていた。一番端に座っている人から促され一礼して席に座った。

「雨の中ご苦労様です。本日は弊社の面接に来ていただき感謝いたします。まだ緊張が解けてはいないと思いますが、早速面接に入らさせていただきます。まず初めに簡単に自己紹介と志望動機をご自身の口で簡潔に説明していただけますか」

「私は、〇〇大学工学部から来ました一本木正道です。本日は面接の時間を取っていただき感謝しています。不慣れではありますが、よろしくお願いします。私が御社を志望しているのは、御社が世の中に送り出している製品である自動車に強く惹かれたからです。エンジン、デザイン、安全性能、そして何より他社を圧倒する販売網と生産能力にとてつもなく強大なパワーを感じました。その御社の中でパワーの源として働けるようになることは短い人生の中で悔いのない時間を過ごすことができるだろうと確信したのです。もちろん、まだ技術も知識もついて来ていませんが、それは諸先輩方も最初は同様だったはずです。なので自分にできないはずはない、努力次第だと考えています。そして御社なら、至らない部分がある自分でも社内研修によって補う時間を取れると信じて今回の面接に挑みました」

 こうして始まった面接は、一本木の「やる気」を全面に押し出したやり取りが続き四十分ほどで終了した。すべての応募者の面接が終了し、面接官たちはその日の学生の相対評価を実施していた。一本木に対しては非常に前向きな気持ちは認められたが、それだけに挫折を味わった時の心配をみんなが感じていた。あまりにも前のめりすぎる性格はチームワークを乱す要素にもなりやすいと判断されたのだ。この時点で、採用枠からは外された。当日の判定会議が終了し、面接官が全員部屋から退出すると、出口のところで一本木が面接官を待っていた。

「本日はありがとうございました。私は絶対に御社の中で力になって見せます。よろしくお願いいたします」

 面接官たちは苦笑いをして、軽く会釈をして通り過ぎて帰っていった。残念ながら、この一押しが余計なアピールだと判断され不採用が確定してしまった。

 その後「不採用」という通知が一本木に届いた。一本木はそれでも諦めなかった。その後、他社を受けることなく大学院まで進み、再度同じ会社にエントリーしたのだった。一本木はどうしても入社したかったのだ。大学院に進み、安全性能の研究を実施していた一本木は論文発表などを通して自分の考えを世の中に発信し続けていた。その一つを過去に面接を担当した役員が偶然にも見ていたのである。そして、一本木がエントリーしていることを知り、通常の面接ではなくスカウト枠を使って再度面接を実施してくれた。一対一の面接だった。根っからの研究者タイプだった一本木は前回の面接の時はあまりにも尖りすぎた対応をしていたため、会社側としては敬遠してしまっていたのである。しかし、業界に対する意気込みは本物であり、有能であると今回は判断され、通常の枠以外での入社が確定した。そして異例であるが、年棒も通常の倍近い額が提示された。

 めでたく入社の運びとなった一本木は、メキメキとその実力を発揮し、五年後には責任ある仕事に就いていた。そして、立場は変わり、面接の時期になると面接官として学生の前に座り、見極める作業を担当するようにもなっていた。そして、うまく話せない学生や意気込みすぎている学生に手を差し伸べ、短い時間の中で学生の本音を聞き出すことに集中するようになっていた。一本木が採用した学生はもれなく会社内では高いパフォーマンスを上げるように成長していたため、社内からはとても感謝されるようになっていた。加えて、一本木自体も新しいアイデアを提示し開発した後、量産される自動車に組み込まれる機能をいくつも実現していったのである。

 面接という短い時間で本当の価値判断をするというのは大変困難なことであり、その短い時間が人生を左右してしまうことにもなってしまう。こんなところでも、誰と出会うかということで異なる結果になってしまうものだ。学生側も緊張して大変ではあるが、面接する側も非常に神経を使い集中するので大変な作業であることは間違いない。毎年担当されている面接官にもエールを送りたいものである。


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