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6月14日 世界献血者デー 【SS】血の創造

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】-世界献血者デー

国際赤十字・赤新月社連盟、世界献血団体連盟、国際輸血学会が2004年(平成16年)に制定。国際デーの一つ。英語表記は「World Blood Donor Day」。

「世界献血者デー」は、1995年(平成7年)に「国際献血者デー」、2000年(平成12年)に「世界保健デー」を開催した経験に基づいて制定された。その後、2005年(平成17年)に世界保健機関(WHO)の総会決議において記念日として承認された。この決議では、血液の安全に関わる国際機関や団体に対して、「世界献血者デー」を推進し協働して支援を行うように要請している。


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【SS】血の創造

 我々の体の中には赤い血が流れている。そして血液型と言われる分類で、同じ血液型でないと拒絶反応を起こしてしまう厄介な液体である。そんな中で万能な血液型の研究は進んでいた。O型はどの血液型にも輸血できるから万能なのだとか、いやいやAB型は、A抗体とB抗体を持っているから場合によってはAB型の血液が万能なのだとか色々な意見と共に研究は進んでいる。

 医療現場では血液不足をなんとか防止するために献血のお願いを実施し、各地で献血車が動き回り、必要な血液を集めている。そんなことがもう何年継続しているのだろうか。全ては人の善意に頼っている行動だと考え、なんとかならないのかということを考えているちょっと変わった人がいた。イギリスにおいて密かに「血」の研究をしているブラッディ博士だ。

 ブラッディ博士はコウモリに噛まれて以来、郊外の自宅の地下に研究室を移し、外部と遮断した環境で人間の血の分析を始め、動物の血液に至るまで多くのサンプルを集め比較検証を進めていた。年齢はすでに六十歳になろうとしていたが、見た目はまだ四十歳程度だった。

 眠ることなく研究を進めて二十年が経過しようとしていた時、ブラッディ博士の脳裏に「血の培養」という言葉が浮かび始めた。少ない血液を使って多くの血液にするのである。人工血液に関しては日本人の手で開発が進められている。主として血液の中に含まれる血小板を人工的に生成するというものだ。実用化されるのは近いということもブラッディ博士は知っていた。しかし、ブラッディ博士は「本物の血液」にこだわっていたのだ。

 ブラッディ博士は病気を直すために血液が欲しいのではなかった。世の中に迷惑をかけずに、本来の研究を続けるために、安定した一定量の血液が必要だと考えていたのだった。ブラッディ博士はもともと歴史学者である。世界中の国の歴史を調査しそれを国ごとの真の正しい歴史として記録文書を編纂することが彼の本来やりたかったことなのだ。そのためには各国を直接訪問する必要もあるのだが、自由に動ける時間の制約を受けてしまったため、なかなか研究室から出ることが叶わないでいた。

 本物の血液を大量に生成するために「培養」ということをブラッディ博士は思いついたのだが、その現実策は恐ろしいものだった。ブラッディ博士にとって「血液型」は区別する必要はなく、新鮮で人の血液であれば良かったのだ。

◇  ◇ ◇

 今を遡ること二十年前、ブラッディ博士が四十歳の頃である。歴史調査のためイギリスの山の中に一人で入って行った。夕暮れまでには帰ってくるつもりだったが、群生している植物や地層を確認していたら初めて見る洞窟を見つけてしまった。手に持ったライトを照らして洞窟の中に入っていくと、奥は幾重にも洞窟が分かれている広場のような所に出た。天井は異様に高い。鍾乳洞の様に水が滴り落ちていて、なんとも不気味な空気を感じる場所だった。ブラッディ博士はもしかすると歴史的発見かもしれないという期待感のほうが大きくなり、暗い洞窟の中を調査し始めた。するとどこから現れたのか大量のコウモリが博士のいる広場に集まってきて、頭上で旋回し始めた。しかもそのスピードは速い。空気を切り裂いて飛ぶ音が広場の壁にこだまして恐怖を感じた。そのコウモリの中に一際大きなコウモリがいて一直線に頭上から博士目掛けて舞い降りてきた。あっという間だった。博士の首の付け根に後ろから噛み付いたのだった。博士は何もできなかった。次第に意識が遠のいた。

 気がついたのは翌日の夕方だった。てっきり死んだと思っていた博士は、焦って洞窟を出て暗い夜道を一目散に帰って行ったのだ。そして翌朝、自分に起きたことを悟った。太陽の下に出ることができない。噛んだコウモリはドラキュラだったのだと。そして博士はそれから血液を補充しないと生きていけない体になってしまった。しかし、良心はなぜか残っていた。そのため、人を噛むことはしなかった。なんとか小動物を捕まえては血液を補充していた。しかし、どうやら限りなく人に近い血液でないと思考能力が衰えることを身をもって知ってしまったのだ。

◇  ◇ ◇

 新鮮な人の血に限りなく近い血を作り続けるために、博士が血液培養の媒体として選んだのは、チンパンジーだった。チンパンジーを数匹捕獲し、地下室に固定した。最初に人の血液を輸血し、人の血液に近づけることを試みた。栄養を自動的に与え、腕に刺したチューブから新鮮な血液を抽出し、人工透析にかけて血液を抽出する仕組みを作ってしまったのだ。ここで得られた血液を博士は摂取して実験した。思考の低下は感じられない。これなら人間を犠牲にしなくてもいいと博士は自分の行為を正当化していた。チンパンジーの寿命は約三十年。その度に博士はチンパンジーの捕獲を繰り返しながら自分の研究を継続させていた。

 こうして百年近くが経過した時、博士の行動が街で密かに話題になり始めた。すでにデジタル時代に突入しておりAI搭載のロボット警官が登場していた。ロボット警官は博士の研究室を訪ねた。博士は何食わぬ顔で対応したが、ロボット警官は生体反応がないということを即座に検知し、博士を縛った。しかし博士はその程度で束縛できるものではない。逃げ出す博士を追いかけるロボット警官。博士は思わず階段を駆け上がり扉を開けてしまった。秋晴れの晴天だ。太陽の光は無常にも博士の体を灰にしてしまった。地下室には、無惨な姿で息が絶えそうになっているチンパンジーが三匹縛られた状態だった。

 博士が噛まれた洞窟はいまだに誰にも知られることなく人の目に晒されてはいない。ただ、一月に一度くらいの頻度で身体中の血を抜かれた様な遺体が見つかる事件は継続して起きている。

 


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