4月25日 ファーストペイデー・初任給の日 【SS】何を買う
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- ファーストペイデー・初任給の日
日付はこの日が多くの企業で4月の給料日であり、新入社員が初めての給料を受け取る日であることから。
初任給について
初任給とは、学校を卒業して正規雇用されるようになった人が、最初に受け取る給料のことである。
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【SS】何を買う
今年の四月に新しく入社した同期で特に仲がいい三人組がいた。みんな出身地は違うが何故か入社後すぐに仲良くなっていた。福岡出身の南九州男、本人はあんまり好きな名前じゃないらしいが九州男児たる生き方をしろと祖父がつけてくれたらしい。あとの二人は、静岡県出身の青浜松太と神奈川県出身の三浦美咲、他にも同期入社はたくさんいるのだが何故かこの三人が仲良くなり、ランチも一緒に食べるようになった。もっとも同期のなかでこの三人が同じ部門に配属されたということが仲良くなるきっかけでもあったらしい。
松太の実家は茶畑農家なので、茶摘みの時期の時はよく手伝わされていたらしい。嫌でたまらなかったとよく言っている。美咲の実家は漁師だそうだ。美味しい魚を食べられるのはいいが、漁師仲間がいつも家に集まるのが嫌でたまらなかったと言っている。九州男の実家はなんの変哲もないサラリーマンの家庭だったので特に嫌なことはなかったらしいが、強いて言えば、毎日帰りが遅い父と専業主婦の母がよく喧嘩しているのを見るのが嫌だったようだ。
正社員として働き始めたものの、最初の給料をもらうまでの生活費が必要である。三人はそれぞれ家を出て一人暮らしを始めた。給料日までの生活費はそれぞれ親に出してもらった。そんなことを考えると最初に給料を貰ったら、それぞれの両親に何か買ってやった方がいいかなと話し合っていた。最も、心の中では、ほんのちょっとしたプレゼントで感謝の気持ちを表せて、喜んでくれるのなら安いものかもしれないと思ったりもしていた。三人は話し合った。
「ねぇねぇ、初めてのお給料が振り込まれたらみんなどうするの。やっぱり親になにか買って送るのかな。私は家が三崎で、京浜急行に乗ればすぐに帰れるから持っていくこともできるんだけど何がいいか分からないで悩んでるのよ」
「そうかー。美咲は近いからいいよな。もう少し近かったら実家から通えそうだもんな。俺ん家は茶畑だからゴールデンウィークに帰ると絶対茶摘みの手伝いなんだよな。だから、本当は何か送ってしまうかゴールデンウィーク明けに持っていきたんだけど、まぁ、そうもいかないだろうな。茶摘み手伝うからプレゼントなしってありかな、あはは」
「僕は福岡だけど飛行機代が高いんだよね。たぶんゴールデンウィークなんてもう取れないかもしれないし、新幹線では帰りたくないから、何かを買って送ろうかなと思うけど、美咲同様、何を買えばいいのか良くわからないなぁ」
「そうかー、松太も九州男もゴールデンウィークに帰るのは大変なんだね。じゃあさ、お給料出たら三人で一緒に買い物に行こうか」
こうやって三人は、給料日の振り込みを確認したあと一緒に両親へのプレゼントを買いに行くことになった。そして待ちに待った初めての給料日、四月二十五日がやってきた。朝出社したらメールを確認。三人の勤務する会社では紙の明細は発行されない。全てが電子メールで通知らしい。初めて手にする金額を見てバイト代をもらっていた時とは違う感動を感じていた。その時九州男が気づいた。
「あれ、最初に聞いていた初任給とは違うな。あと、税金もこんだけなら全然いいじゃん。へー、来月にはこれに残業代とかつくんだよな。今月は二十五日勤務だけど来月はまるまる一ヶ月になるはずだから、もう少し増えるってことだよな」
最初の給料明細は、ちょっと特殊かもしれないので、気をつける必要があると入社後の説明で言われていたが、そんなことは覚えていないようだ。まぁ、自分のこととして次第に学習していくのだろう。そうは言っても、この三人が住んでいるマンションは寮扱いで会社負担になっているからそれだけでも経済的にはかなり違うはずだ。そして、その辺りは美咲がきちんと聞いていたようで、松太と九州男に簡単に説明していた。
「松太、九州男、最初の給与明細はみんな同じ額だと思うから共有しておくね。住民税とかはまだ引かれていないはずよ。それに、私たちは厳密には試用期間中だから手当も付いていないの。だから説明会で言われた時の給与とは差があるのよ。それに入社した時に希望を書いた財形貯蓄などの引き落としもまだ始まってないのよ。勘違いしないようにしましょうね」
「さすが美咲、ちゃんと聞いてたんだな。助かったよ。ということは使い果たしたらダメだってことだな」
「松太、それは金額がどうのこうのというレベルじゃなく、全部使っちゃダメだろ。僕たちの将来は年金も期待できないし」
こんな話をした後、みんなで両親への感謝の気持ちを伝える品物を求めて百貨店に向かった。百貨店の中には両親への感謝コーナーが設置されていて、まるで三人が来ることを待っているかのようだった。結局、九州男は無難なネクタイとバッグ、美咲はお揃いの財布、松太は悩んだ挙句にスウェットの上下のお揃いを買った。美咲だけは持ち帰りにして、九州男と松太はちょっと照れながらメッセージカードも記入して同梱してもらっていた。一応買い物が終わり、美咲からの提案がでた。
「私から提案があるんだ。毎月なんてできないけど、初めての給料の時くらいさ、寄付をしていこうかなと思ってるんだけど、みんなどお」
「寄付かぁ、やったことないなぁ、松太は」
「あー、寄付はしたことないなぁ。金もなかったし」
「じゃあ、一応社会人の端くれとして少しだけ寄付して帰りましょう。ウクライナ基金とユニセフ基金、ほらあそこに受付があるわ。ネットで寄付するよりなんとなく実感もあるし」
三人は、わずかではあるけど、社会人としての責任を果たしたような気になって満足していた。この後三人は初めての給料で食事を楽しんで今後のことを話して帰った。もちろん男女平等でもらった額も同じということで割り勘だったことは言うまでもない。帰り際に九州男が何やら美咲に耳打ちしていたようだ。
了
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