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4月10日 瀬戸大橋開通記念日 【SS】君に逢える

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 瀬戸大橋開通記念日

1988年(昭和63年)のこの日、「瀬戸大橋」が開通し、本州と四国が橋で結ばれた。

1978年(昭和53年)の着工から9年6ヶ月を経て完成し、総事業費はおよそ1兆1,338億円である。「瀬戸大橋」は岡山県倉敷市と香川県坂出市との間9.4kmの海峡部を結ぶ橋であり、道路・鉄道併用の6つの橋で構成されている。橋の全長12.3km、幅35m、高さ194m。橋は上部に4車線の瀬戸中央自動車道が走り、下部にJR本四備讃線(愛称:瀬戸大橋線)が通る2階建ての構造になっている。


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【SS】君に逢える

 僕は岡山でジーンズ製造に携わっている。国内製造のジーンズとしてはちょっと有名な児島でジーンズを作って今年で五年目になる。僕が作るジーンズの品質も人気もだいぶ上昇し、やっと安定して収入が得られるようになった。僕は二十八歳。付き合っている彼女が四国に住んでいる。四国に友達とドライブに行った時、お互いグループ同士だったからなんとなく仲良くなり、自然に付き合い始めて三年くらい経っただろうか。随分と待たせているので、そろそろ一緒になりたいと考えている。そんな時期を目標にするにはもってこいの計画が瀬戸大橋開通だった。この橋が完成する1988年には、プロポーズしようと考えている。

 今は、1986年だから、僕が三十歳になる時、彼女は二十六歳になる。それを目標にして僕も頑張ることにする。その時までは自分のジーンズのお店も立ち上げる予定だ。この岡山の地でメジャーなジーンズ店を必ず立ち上げてみせる。そして彼女を迎えるんだと固く決意していた。

 月日は流れ、桜咲く春が訪れた。いよいよ瀬戸大橋の開通だ。大きなセレモニーが開催される。でも、僕はそんなことには興味はない。この橋が開通することで、いつでも彼女に会いに行けるようになることが嬉しくてたまらなかった。それまでは、四国は遠い地に感じていたから。陸路だと広島のしまなみ海道や淡路島を通るルートはまだ開通していない時なので、この瀬戸大橋の開通を待つしかなかった。目の前の四国にいる彼女に会うためにはフェリーを使うか遠回りしてしまなみ海道を通るしか選択肢がなかったのである。それがようやく、目の前から四国に渡れる橋が架かることになる。しかも、鉄道も通るので、かなり便利になるのだ。彼女とは、橋が開通するまで会うことを我慢しようと話していたので随分長い間あっていないような気がする。

 僕が立ち上げたジーンズの会社「海風ジーンズ」もなんとか受注が増え、もう少しで軌道に乗るところまで漕ぎ着けている。社名の由来は、僕の名前が風太で彼女の名前が春海だったので一文字ずつ取って「海風」と付けた。四国にいる彼女は信用金庫で勤務している。僕は、愛車のブルーバードに乗って橋を渡った。助手席には花束と指輪を置いてある。彼女にプロポーズして渡すためだ。僕はゆっくりと橋を渡り丸亀に向かった。僕は土日を休むわけにはいかないので、店の定休日である火曜日に彼女の元へと向かっている。彼女は仕事なので夕方に丸亀に着くようにした。彼女が務める信用金庫の駐車場に車を回し、定時になるのを待つ。やっとこの日が訪れたということで僕は有頂天になっていた。今日は彼女を驚かせたいので何も告げずにやってきた。そう、サプライズだ。

 彼女を待っていると、私服に着替えた彼女が裏口から出てきた。しかし、知らない男性と腕を組んで楽しそうに笑いながら歩いている。僕は目の前の光景が信じられなかった。お互いに約束して信じていたはずだった。それなのに体が固まって車から降りることすらできない。来なければよかったと後悔し始めた頃、彼女が僕の車に気づいて、男性の腕から自分の腕を振り解いて小走りに駆け寄ってくる。僕は無意識に俯いてしまった。悪夢なら覚めて欲しいと心から願いながら。

 彼女は僕の車までやってきて、運転席の窓をノックしている。僕はゆっくりとオートウィンドウのスイッチに手を伸ばし、運転席側の窓を開けた。

「来てくれてたんだ、ありがとう。会いたかったわ。でも連絡がなかったからびっくりよ。ちょうどいいわ、紹介したい人がいるの」

「えっ、誰。あの男の人」

「あっ、もしかして、変な勘違いしてるかな。あの人、私のお兄ちゃんだよ。ずっと東京に行ってたから会えてなかったけど、久しぶりに実家に帰ってきたから会ったのよ。まさか、私のこと疑ったんじゃないでしようね。風太のお店の名前には私の名前も一文字入っているんだから、もっと私のこと信用して欲しいわ」

「えっ、いや、全然。信じているよ、当たり前だろ。そうか、お兄さんか。じゃあ、挨拶しないと」

 僕はほっとしたのと同時に初めて会う春海のお兄さんの前で緊張していた。春海にリングを渡して結婚を申し込むということが完全に頭の中から吹き飛んで、お兄さんになんて挨拶すればいいんだと脳みそがフル回転している。

「やあ、初めまして。春海の兄の夏樹といいます。今は、東京の商社で勤務しているのでなかなか帰ってこれないんだけど、今日は運が良かったなあ。あなたに会えて。風太さんでしたよね。いつも妹がお世話になっています。もうだいぶ長く付き合っているみたいだけど、プロポーズはまだかな」

「えっ、はい。プロポーズします。春海さん、結婚してください」

「おいおい、それは僕に向かってじゃなく春海の方を向いて言わなくっちゃ。僕に会って緊張させてしまったようだな。ごめんごめん」

「もう、風太ったら。私、恥ずかしい。なにこのへんてこりんなプロポーズ。しかも信金の駐車場で兄貴に向かって大声でプロポーズなんて」

 大きな声が信金の中まで届いたのか、なんだなんだと信金の中から職員も駐車場に集まってしまった。僕は恥ずかしさと嬉しさでいっぱいになり、もう一度車に戻り花束と指輪を手に持ち、人だかりの中で春海の前に行き、もう一度プロポーズした。

「僕と結婚してください」

「はい、よろしくお願いします」

 周りを取り囲むように集まった職員から大きな拍手が湧き起こり、周りをたまたま通りかかった人もプロポーズと察して足を止め拍手を送ってくれた。僕は天にも登るような気持ちの中、彼女と彼女のお兄さんをブルーバードに乗せ、彼女の実家に向かっていった。車の中から春海は実家に電話を入れ、風太を連れて行くことを伝えていた。僕は指輪と花束を用意するので頭が一杯になっていたから、春海の実家へ持ってくお土産をことをすっかり忘れていた。そして、そんなことには、全く気づくことなく春海の実家に向かったのだ。まぁ、仕方ないよね。


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