【SS】22.再生水で自然保護 ※クリエイターフェス
毎日お世話になるトイレ。昔は水洗トイレ自体が珍しかったが今では水洗が当たり前でウォシュレットも当たり前の時代になっている。考えようによっては飲める水をジャージャーと流しているわけだから勿体無い。未来にはいったいどうなっているのだろうと考えを巡らせて書いたショートショートです。お楽しみください。
再生水で自然保護
私は喫茶店を経営している。もう開業してから20年になる。昔おじいちゃんが生きていた頃は喫茶店の経営は厳しいからやるもんじゃないと良く聞かされていた。
それを知っていた親父は、サラリーマンになって平凡な生涯を送り、みんなに看取られて20年前に癌を患い他界してしまった。
「潤、後悔しないように好きなことをしろ、お前の人生だ」
親父は病院に駆けつけた私に言い放って息を引き取った。その時の私は、40歳、20年前の話だ。父親が亡くなるまでは私もサラリーマンだった。
「いまさら、そんなこと言うなよ」
そう思いながらも、ふとおじいちゃんが経営していた喫茶店を思い出していた。
「お客さんの何気ない普段の生活の話が聞こえてきて、色んな人の人生の一瞬を見ているようだったな」
おじいちゃんがよく話してくれた内容だ。結局脱サラして喫茶店を始めてしまった。居抜きで見つけた店舗だったので初期費用はかなり抑えて開業できたのが、20年前の2080年の秋だった。それから色んなお客さまの話を聞きつづけている。
今日も営業をしているような二人のサラリーマンが昼下がりにコーヒーを飲みにやってきて話をしている。
「最近は、あんまり売れないなぁ。もう、だいぶ行き渡ったからなぁ」
「あぁ、そうだよな。我々の仕事もそろそろ潮時かもしれないな」
「お前の家も導入したのか、我が社の製品」
「いや、俺はさ、なんとなく抵抗があるんだよね。頭では理解できていてもいざ自分の身に降りかかるとどうも受け入れられない」
「あぁ、わかるよ。俺も最初はそうだった。なれると思うけどな」
「うーん、でもなぁ。確かに資源は大切で水の再生も大きな意味で言えばとっても大切だと思うんだけど、自分の家のトイレで流したものから再生される水を飲んだり料理に使うのは、理屈じゃなくて抵抗があるんだよな」
「まぁ、そうだろうな。でも、そう思っている間は、我が社の家庭用再生水製造装置は売れないと思うよ。気持ちって伝わるもんだから」
「そうだよな。さて、そろそろ午後の営業を再開するか。マスター、お勘定」
「ありがとうございました。おひとりさま850円ずつになります。マイナンバーカードでお支払いですか。であれば30%引きです」
こうして二人の営業マンは私の店の再生水で作ったコーヒーを飲んで仕事に戻っていった。人は、知ってしまうことで抵抗感が生まれるものである。であれば知る必要のないことは知らないままの方がいいだろう。
了
期間限定マガジン (2022/10/1 -2022/10/31)
#クリエイターフェス #ショートショート #創作 #小説 #ショートショート書いてみた
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。