8月21日 テロ被害者想起と追悼の国際デー 【SS】目覚めた心
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- テロ被害者想起と追悼の国際デー
2017年(平成29年)12月の国連総会で制定。国際デーの一つ。英語表記は「International Day of Remembrance and Tribute to the Victims of Terrorism」。
テロリズム(テロ)の被害者を称え、彼らを支援すること、人権と基本的自由の享受を促進・保護することが目的。また、テロ被害者に一人ではなく、どこにいても国際社会が連帯していることを示す日である。この日を中心として、ニューヨークの国連本部では写真展が開催される。
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【SS】目覚めた心
最近では、紛争や戦争のニュースが、日常の一コマとなってしまっている。日常化したニュースに人々は麻痺したかのような反応をしているようだ。いや、反応すらしていないのかもしれない。ただ、無差別テロのようなニュースは、身近なところでもあり得ると感じ、恐怖を覚えることが多い。戦争で一般人が犠牲になるケースも報道されると胸が痛くなるが、テロの場合は、一般人を巻き添えにしてしまうことが多いので、人々が感じる恐怖は予想以上だ。
ある国に、爆破テロの被害にあった家族に生き残りの青年がいた。名前はシャリフという。彼は当初、兄がテロリストグループに入っていたことから、自らもテロリストの組織に入り、応援していた。時の政府の方針に賛成できなかったことが大きな要因だった。彼らにとっては、政府を倒して国民を解放したいという願いが活動の根幹としてあった。「国策という縛りから、国民を解放しなければならない。そのためには武力行使も厭わない」という考えも現状を素早く打開する為には仕方ないことなのだという説明を信じていた。
しかし、悲劇は起こった。シャリフ自体は組織の命令により、別な場所で監視活動を命じられていたため、地元を離れていた。そんな時、青年の家族が住んでいる街に政府の要人が訪問してくるという情報をキャッチしたテロ組織は、爆弾による制裁を計画した。場所は、街の中心にあるショッピングモール。多くの人が集まる場所だった。犠牲が大きければ大きいほど、与える影響も増大するとテロ組織は判断し、トラックでショッピングモールに突っ込んで爆破する計画を実行したのだった。不運にも、シャリフの家族は買い物のためにショッピングモールにきていたのだ。そして、爆発に巻き込まれてしまった。肝心の要人は、直前のスケジュールが伸びてしまい、ショッピングモール到着が遅れ、寸前のところで難を逃れていた。つまりテロ組織の計画は関係のない人々を巻き込んだだけで、失敗に終わったのだ。シャリフは何とも言えない違和感を感じていた。
『何かおかしい。家族を犠牲にしてまでもやり続けなければならないことが、本当に正しいのだろうか。仲間は理想の国家を作るためには犠牲は必要だというけれど、本当にそうなのだろうか。僕にとってはかけがえのない唯一の家族だった。仲間は名誉の犠牲だという。そんな名誉なら願い下げしたいくらいだ。僕は一人ぼっちになってしまった』
シャリフの心の中で何かが変化していた。それまでは組織の中で教えられることが正義であり、守るべきことだと信じていた。それは、自分と家族を守るためだと思っていたからだ。今回のことで完全に裏切られた気がしたが、口に出すことはできないでいた。組織内で訴えれば、反逆者になるからだ。
シャリフは数ヶ月間悩んだ。そして国を脱出すると決めた。行き先は日本。周りから最も安全な国だと聞いていたから。しかし、国を出ることは容易ではなかった。仕方なくシャリフは組織に提案した。
「日本に行って制裁行為を実施したいと思います。行っても良いでしょうか」
「日本で実行するのはかなり困難だぞ。何人で実行するつもりだ」
「私一人で実施します。短期留学ということで何とか潜り込もうと考えているのです。そして、爆発物は日本についてから材料を集めて作って見せます」
「なるほど、良い心構えだ。では、良いニュースを待っている。行ってきなさい」
やはり、人の命は仲間であっても重要視していないのだとシャリフは思った。しかし、これで何とか国を抜け出し、ヨーロッパ経由で何とか日本に入ることができる。まずは日本語を学習しなければ、日常生活もままならないと思い、日本に入った後、日本語学校に入った。
『僕が学んできたことは、もしかすると偏った情報だったのかもしれない。日本で報道されている僕の国の情勢は全く違うように伝えられている。こんなにも違うものなのか。僕がいた組織は世界から見るとテロリストと呼ばれているんだ。正義だと思っていたのに』
そんな思いに心が変化し始めた頃、通い始めた日本語学校で、テロ被害者として支援を受けているジャミラという女性と出会った。なんとシャリフと同じ国の出身だった。二人はすぐに意気投合し話をしていると、ジャミラの両親と妹もテロの被害にあって亡くなったということをシャリフは知った。人ごとではない状況という事と自分たちの行いは間違っていたということもあり、二人の距離は急接近していった。
シャリフとジャミラは遠く離れた日本で結婚式を挙げ、日本に帰化した。その後は、テロと呼ばれている活動を非難するとともに、テロ被害者のネットワークを作り、普通の生活ができるようになるための支援活動を夫婦で担当しはじめた。
その頃シャリフの国のテロ組織は、シャリフの動きを掴んでいた。裏切りを許しては、これまで亡くなっていったメンバーに顔向けができないということで、シャリフの殺害計画が指示された。もちろん、シャリフは知る余地もない。シャリフの命をかけた、テロ組織への反抗は今始まったばかりだ。
了
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