見出し画像

2月23日 工場夜景の日 【SS】秘密研究所

【今日は何の日】- 工場夜景の日

 工場の夜景を新たな観光資源として捉え活動する「全国工場夜景都市」が2016年(平成28年)に制定。工場の光が独創的な夜景を作り出すことから工場の持つ悪いイメージを払拭することも狙ったのかもしれない。

日付は第1回の「全国工場夜景サミット」が2011年(平成23年)2月23日に神奈川県川崎市で開かれたことからこの日になった。工場夜景の魅力を発信し、工場夜景観光の発展が目的とされている。

全国の工場夜景を巡るブックレット

https://kojoyakei.info/img/yakei_booklet.pdf


【SS】秘密研究所

 海岸沿いに作られている工場地帯の夜景は人工物の冷たい感触が織りなす不思議な魅力を感じるだろう。見方によっては近未来の光景に見えないこともない。少し前までは、汚染された排水を流したり、煙突から出る煙で大気汚染をしていたりと煙たがられる存在でしかなかった工場地帯だ。ところが最近の工場はクリーンな状態を保持しているのが普通となり、一昔前の評判は払拭しているようだ。今でこそ斜陽してしまったが、半導体の工場はきれいな水が流れるそばに作られることが多かった。製造過程で多くの水を利用するからだ。そして製造過程で利用した工場排水の汚染状態を調べるために、排水で作られた池をつくり鯉を飼っていた時代もあった。鯉たちが問題なく生活できることを示すことで工場から出た処理された排水はクリーンであると証明していたのである。

 しかし、そんな工場地帯の中には、実は工場に見せかけた秘密研究所になっている施設も含まれていることを多くの人は知らない。美しい夜景でカモフラージュし、さも観光場所のようにすることで、人々の注目を集め人々に監視をしてもらうのが目的だった。万が一侵入者が現れても常に観光客がいる状態を作っておけば目撃情報も集めやすくなるし、予防対策にもなるだろう。地上に建てられているのは夜景の綺麗なビール工場でありながら、その地下には細菌の研究所が作られている場所もある。見事なカモフラージュだ。しかし、そんな単純な理由でもなかった。

 細菌の研究所自体は人類を未知の細菌やウィルスから守るために、免疫の耐性などを研究することが目的として作られた。そのため人目を気にしなければならなかったのだ。したがって地上に作るより地下に作って人々の目から隠蔽した方が良かったのだ。ビール工場は酵母の研究なども併設できるので白衣も目立たないし、必要な物資を運び込むことも工場経由なら問題ない、細菌研究を隠蔽するにはうってつけだったのだ。

 細菌研究の派生で得られた結果として年齢を重ねることによる脳の認知機能に対する細菌の影響というものを発見した研究員がいた。果たしてどういうことなのだろうか。

 細菌が脳内に入り込むことで、一時的な記憶喪失状態になったり、一時的に運動機能の著しい低下を招いたりすることが判明したのだった。だが完全に立証されているわけではなかった。そこで、研究員は禁止されている行為をどうしても実施してみたくなってしまった。それは人体実験だ。七十歳以上の人に対し細菌が体内に入り脳に回った場合に、本当に記憶喪失になったり運動能力の低下につながるのかどうかを確認したくなってしまったのだ。悪魔の囁きが聞こえたのかもしれない。とにかく他の研究員にバレないように培養した細菌を研究所から持ち出した。

 そしてあろうことか、研究員は地上のビール工場のビールの中に混入させ市場に出させてしまったのだ。この細菌は酵母を好む性質を持っており、酵母と結合することで異常な速度で繁殖させることができると考えられていた。あくまでも理論では七十歳以上の年寄りにしか影響をお及ぼすことはないと推測されていたので、その後しばらくした後のニュースで老人の事故のニュースをチェックしまくった。そして、事故を起こした老人を追跡し購入していたビールを確認していたのだった。その結果は恐ろしいものとなった。

 老人による悲惨な交通事故のうち八十パーセントは細菌の影響の可能性が高いと研究員は判断した。しかし、発表はできない。あくまでも自分の仮説を立証して喜ぶだけだった。この研究員は、どこかで歯車が狂い、善悪の区別がつかなくなっていたようだ。やはり悪魔の囁きに耳を貸してしまったのだろうか。

 しばらくすると、研究員は自分が細菌をビールに混ぜたことすら完全に忘れてしまっていた。細菌が流出したこと自体がニュースになることもなかった。そして数ヶ月後、この研究員は知識と経験を買われて定年を過ぎていても長く働いていたのだが、すでに七十歳を超え流石に体力の衰えを感じ、家族からの後押しもあり、辞表を書くと同時に運転免許の返納も実施した。こうして細菌混入のビールや脳に影響する細菌発見に関して世の中に出ることは無くなってしまい、忘れ去られた。もちろんその間も老人による事故は増加しその大半はビール愛好家だったということは誰にも知られていない。

 この研究員は周りも認めるほどのビール愛好家だった。今日もまた大好きなビールを飲んでいることだろう。そして細菌が混入したビールは今もなお製造が続けられているようだ。



🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集  ← 記念日からの創作SS


いつも読んでいただきありがとうございます。
コメントも気軽に入れていただけるとうれしいです。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉


#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日 #掌編小説 #超短編小説


いいなと思ったら応援しよう!

松浦 照葉 (てりは) よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。

この記事が参加している募集