見出し画像

【SS】島々にかけられた呪い #2000字のホラー

 長崎県にある九十九島をご存知だろうか?

 牡蠣や真珠の養殖などでも有名で、世界の中で美しい湾としても登録されている場所である。九十九島にはいろいろな伝説がある。蛇、斬首、斧、龍、島が動いたなどに関連した伝説が伝えられ続けていて不思議な現象も起こっているらしい。

 最近、島々に少しずつ異変が起きているということに気がついた青年がいた。青年によると、島と認識されていない島が動いているという。島の数は満潮時に水面の上に出ていて且つ陸上の植物が生えているものを島と見なして数えられている。言い換えれば、岩だけの島は島として認識されず管理もされない。怪現象はこの認識されない岩の島で起きていた。

 惨殺された落武者たちの亡霊か、行き場を失った龍が地底で暴れているのか、はたまた、怨念のため成仏できない霊が岩を動かしているのか調査すべく、男女7人がSNSで知り合い調査チームとして集まり、岩島に近い7つの島にそれぞれ単独キャンプで岩島の定点観察を5日間実施する計画を立てた。岩島の移動は夜に起こるらしいので、チームメンバーは昼間に仮眠し夜の観察に徹することにした。互いの連絡はライトの点滅かLINEである。リーダーはタカシ29歳男のフリーター、メンバーは、リョウタ27歳男のスーパー店員、サチ28歳女ダイバー、ミチ27歳女水泳コーチ、サトシ26歳男宅配員、ススム28歳男釣具屋店員、ハヤタ27歳男登山家という陣容だ。全員バックパッカー経験者なので装備は問題ない。予備を含め7日分の食糧と釣り道具、木の実の図鑑を持って準備した。ボートは釣具屋店員のススムが調達しメンバーをそれぞれの島で下船させた。予定の島に全員が入った後リーダーのタカシはLINEを送った。

「みんな、十分に気をつけて調査にあたるように。カメラを固定して岩島の写真を撮ってくれ。異変に気がついた時はLINEグループヘメッセージを入れるかライトを短く点滅して知らせる事。不思議現象の原因を解明しよう」

 こうして一日目の夜を迎えた。1日目は昼に仮眠を取れなかったので、全員を睡魔が襲ったが必死に堪え観察に集中した。丸い月が綺麗な夜だ。午前零時を回った頃、サトシがライトを点滅させている。タカシはすかさずLINEで確認した。

タカシ「サトシ、どうした。何があった」
サトシ「なんでもない。だいじょうぶ」
タカシ「そうか、じゃあライトを消してくれ」

 しばらくしてライトは消えた。こうして1日目の夜は明けた。全員が朝の挨拶がLINEで交わされ各々仮眠をとり、2日目の満月の夜になった。午前零時を過ぎると今度はミチがライトを点滅させてきた。

タカシ「ミチ、どうした。何があった」
ミチ 「なんでもない。だいじょうぶ」
タカシ「そうか、じゃあライトを消してくれ」

 翌日、タカシは嫌な予感に襲われていた。このまま残りの期間を過ごすか様子を見にいくか迷ったが、サトシ、ミチがいる島に確認に向かうことを決断しススムに連絡した。もし無事で仮眠していては起こすことになるので、太陽が沈む前の夕方頃に向かうことにしてススムに迎えにきてもらった。どうやらススムの島では何事も起きていないようだ。

 二人は最初にサトシがいるはずの島に行った。まだ太陽の光が眩しい。二人は上陸しテントを探した。そして見つけたのは食糧が入ったままのリュックが置かれたテントと靴だった。テントの傍には固まりになった血痕が残されていた。二人はお互いの唾を飲み込む音を感じ見つめあった。声を出してサトシを呼んだが返事はないし気配もない。小さな島なので隠れる場所もない。観察していた岩島の方を見ると、あったはずの岩島が忽然と姿を消していた。観察用のカメラも消えていた。

 二人は急いでボートに戻り、ミチがいるはずの島に向かった。なぜか胸騒ぎが止まらない。島に上陸しミチを探す。テントはすぐに見つかり、サトシと同様に食糧がほとんど減っていないリュックと靴はあった。そしてテントの傍にはやはり血痕があり、岩島とカメラを確認するとやはり消滅していた。日は沈み暗闇が迫る時間に近づいてきた。二人は身の危険を感じ急いでボートに戻り海に出た。タカシは慌ててLINEグループで、みんなに問いかける。ススムは後ろでボートを操っている。

タカシ「みなん無事か? 一人ずつ返事してくれ」
リョウタ「なんでもない。だいじょうぶ」
サチ  「なんでもない。だいじょうぶ」
ミチ  「なんでもない。だいじょうぶ」
サトシ 「なんでもない。だいじょうぶ」
ハヤタ 「なんでもない。だいじょうぶ」
ススム 「なんでもない。だいじょうぶ」

 タカシはLINEの返事を見た後、恐る恐る後ろを振り返る。ボートを操っているはずのススムの姿は既に消えていた。月夜だというのに暗闇がタカシを包み込むように襲ってくる。スマホの電源が切れ、漆黒の闇の中へとタカシとボートは消え去った。


2000文字

下記企画への投稿です

#2000字のホラー #ショートショート #創作 #小説

いいなと思ったら応援しよう!

松浦 照葉 (てりは) よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。

この記事が参加している募集